2026年01月15日

坂本陽、山の上の看護師

「山は病院」山岳看護師を紹介
https://www.youtube.com/watch?v=k2w6egCBl6A

救命の最前線で活躍する「フライトナース」(※1)の1日https://www.youtube.com/watch?v=8qAnt43iQds

[槍ヶ岳山荘]看護師小屋番へ、山岳医療についてインタビュー!
2024/09/13
https://www.youtube.com/watch?v=hHcg-JzZico
 今回は槍ヶ岳山荘に勤務する坂本陽(さかもと みなみ)さんに、山岳医療についてインタビューしました!
 陽さんは山荘勤務3年目の従業員さんです。
 元々看護師として現場で働かれていましたが、今は山岳医療、災害医療をメインに活動されています。
 従業員だから長く山に居続けられ、長期間にわたり山の医療を支えている方の話はすごく刺激をうけました!
[槍ヶ岳山荘HP]
https://www.yarigatake.co.jp/yarigatake/

山やへき地の何もない環境で、どうアセスメントし、環境を味方にして知恵を働かせるか。
坂本陽先生のご講義では、山岳医療で実際に行っている事例をもとに、「整っていない環境でも医療に活かせる発想転換」を知り、救急医療とのつながりを学ぶセミナーとなりました。
日時:2024年6月19日
セミナー:「現場に活かせる山岳医療〜事例から学ぶ発想転換!〜」
講師:槍ヶ岳観光株式会社 槍ヶ岳山荘看護師 坂本陽(さかもと みなみ)先生

 前半の講義では、ウィルダネス状況下における山での傷病事故の対応や、登山中におけるトラブル予防についてのお話がありました。

 山岳という現場から、最寄りの医療機関までは約10時間、救急要請をしても3〜4時間以上はかかってしまうため、「これはやばい!」と早期に判断し対応する必要があります。

 ここで重要なことは、救助者の安全確保が第一であるということです。
 助けたい気持ちはあるけれど、安全確保が困難な状況では出動はしない、慎重な判断が求められます。
「これはやばい?」と初期評価を行い、ABCDEアプローチ(※2)を活用して一次評価を行いますが、山岳ならではのアプローチがあります。

 聴診器や血圧計は使用せず、視診・触診のみで判断してショック徴候が出ていないかを確認し、一般の救助者でも理解しやすいAVPUという意識レベルの評価ツール(※3)を使用します。
 また、正確な体温が測定できないため、傷病者の周りの環境(天気・季節・風速)に着目し、低体温・高山病症状には特に注意しなければなりません。

山岳医療の発想転換
 後半は、山小屋内で行われる山岳医療についての内容でした。

 耳の中に虫が入った事例では、業務用ライトに紙コップをガムテープで巻き付け、山小屋お手製ライトを作成し虫をおびき出したり、麻酔薬を使用し虫を鎮静したりと、最悪の結果にならずに対応できた内容でした。

 もう一つは、風速30m級の天候における低体温疑いの事例でした。
 小屋の一室を利用し、布団・洋服・湯たんぽを使用して保温し、心電図モニターを装着し、経過観察をしながら対応しました。

 どちらの事例も山小屋にあるもの、マンパワーを駆使することで対応できた事例でした。

まとめ
 山岳という環境下でも急性期医療は活かされていること、急性期ケアから学べる知識や技術は、例え病院という現場でなくとも誰かのために活かされるものです。
 皆さんからいただいた感想からも、普段は知る機会の少ない山岳医療に興味があったことが伝わってきました。

 坂本先生のご講義は、急性期医療の大切さ、医療職者の可能性を示してくれたものとなりました。

参加者からのご質問
 当日いただいた質問に、坂本先生よりご回答いただきました!
Q. AEDなど電子医療機器が寒さで使用できないトラブルはありますか?
A. 小屋の中でもシーズン中は−10℃以下になることもありますが、メーカーさんから使用できると言われております。実際にそこまで気温が低い時には使用したことがありませんので使用できない可能性もありますが、実際には外での現場に関しては、搬送を優先するので外での事案にAEDを持っていくことはありません。

Q. 搬送まで時間がかかるとき行い続けなければならないことはありますか?
A. ABCDEアプローチに沿った観察・介入は継続的に行っています。必要であれば、モニターを使用しながらバイタルサインの定時測定も行っていきます。

Q. その場で点滴や酸素投与などもされますか?
A. 必要があれば、医師からの指示のもとで行うことは可能です。ただ、医療資器材が限られておりますので、その処置をすることによって明らかに回復傾向がみられると予測できるような場合にしか行いません。したがって、私は今年で3年目ですが、シーズン中に実際に行ったことは一度もありません。

Q. 夜に体調が急変した場合はどう対応されていますか?
A. 私個人の判断で対応ができない場合には、夏山診療所の関連医療機関と連携をとっておりますので、必要時にはそこの医療機関の救急部の医師の指示を仰いで可能なことを行っていきます。ただ、最悪CPA(※4)になったとしても、資器材とマンパワー的にBLS(※5)の範疇でしか行えないので治療介入の限界はあります。


JACA、2024年7月10日
現場に活かせる山岳医療〜事例から学ぶ発想転換!〜
https://jaca2021.or.jp/news/wilderness/

(※1)「フライトナース」
 フライトナースは、ドクターヘリに乗り、救急現場に医師とともに駆けつける看護師です。
 限られた情報から患者さんの病態を予測し、現場で医師と初期治療を施し、適切な医療機関へ搬送するのが仕事です。現場で医師の診療の補助だけではなく、患者さんやご家族の精神的ケアや、円滑な搬送ができるように現場にいる消防・救急隊員やパイロット、整備士に協力を依頼することもフライトナースの役割になります。

(※2)ABCDEアプローチ
 外傷患者の生理学的徴候から迅速かつ正確に患者の生命危機を把握するための診療アプローチであり、A(Airway 気道)→B(Breathing 呼吸)→C(Circulation 循環)→D(Dysfunction of CNS 中枢神経)→E(Exposure &environmental control 体温)と酸素の流れに沿って評価されます。

(※3)AVPU
 AVPUは、A(Alert 覚醒)、V(Verbal 言語)、P(Pain 痛み)、U(Unresponsive 無反応)の頭文字をとったものです。

(※4)CPA
 心肺機能停止(Cardiopulmonary arrest、CPA)は心臓の機能が止まってしまった状態で、心停止とも呼んでいます。現在の日本の状況では、病院の外でこの心肺機能停止が起こると、歩いて病院を退院して社会復帰される患者さんは数%前後でしかありません。

(※5)BLS
 BLSとは、Basic Life Support の略称で、心肺停止または呼吸停止に対する「一次救命処置」のことです。心臓または呼吸が停止して倒れている人に対して、近くにいる人(バイスタンダー)が救急隊や医師に引き継ぐまで現場で行う応急手当を「一次救命処置」といいます。「一次救命処置」は、医療従事者に限らず誰でも行えるものです。
「一次救命処置」の内容としては主に、気道確保や胸骨圧迫、人工呼吸、AEDの使用などです。
 BLSに対して、医師や救急救命士が実施する処置は、「二次救命処置」ALS(Advanced Life Support)と呼ばれます。

病院を離れ、山の上の看護師に
 はじめまして、坂本 陽です。
 私は現在、槍ヶ岳山荘で小屋番をしています。
 看護師として小屋が開いているフルシーズンの間、山小屋に駐在し、山を訪れる方々が安全に登山できるように見守っています。

「なぜ街中の病院ではなく山で働いているの?」とよく聞かれます。
 なぜ山で働くのか。
 それは、山を訪れる方々が安全に登山できるように見守りつつ、”世界一のフライトナース”になることが、私の目標だからです。

 この目標を達成すべく、「世界のさまざまな所に赴き、苦しんでいる人びとに手を差し伸べられる人になる」ことをモットーに、日々活動しています。
「あらゆる場所・状況において、どんな人に対しても、どんな状態であったとしても、生命の危機に瀕している人に対して、最前線で最善の看護を提供できる人材となる」というのが、私の目指すことです。

 病院内のように設備が整っていない環境でも、医療活動ができるよう、山での医療・救急活動を自身の強みとしていきたいと考えています。
 大自然から学ぶは多く、少しずつではありますが、あらゆる場所や状況に対応できるようになるためのスキルが身についてきています。

山での経験が「人の生命を救いたい」思いの原点
 山は私自身が「人の生命を助けたい、救命救急を強みとしたい」、そう思えた原点でもあります。
 大学4年生の時、当時は、いま働いている山小屋に夏の短期アルバイトとして勤務していました。
 その勤務中に登山者が高山病で亡くなってしまうという事態を目の当たりにしました。
 この時のことは今でもよく覚えており、「何か変だな?」という違和感を抱えてはいたものの、当時の自分には知識や経験が不十分で、何もすることが出来ず最悪の事態となってしまいました。

 この経験を機に、「人の生命を助けたい」という思いと、「山を訪れる方々に、山を楽しみ、そして、元気に家まで帰って欲しい」という思いがより一層強まりました。
 この思いは自分の中にずっとあり、看護師として成長した後に再び山に戻って自分にできることで貢献していきたいと考えるようになりました。
 そして、7年後の2022年、タイミングは思ったより早まりましたが、再び山に戻ってきました。

 今年は、山小屋の小屋番としてフルシーズン山小屋に勤めています。
 夏の繁忙期では山小屋横にある診療所も開設しており、登山客に対しての対応をしてくださり助かっています。
 ですが、シーズン全体でみると診療所が開設しているのはわずかな期間に限られています。
 診療所が閉所している時も多くのお客様に山小屋を利用していただいているので、一定の割合で高山病や低体温や怪我で対応を必要とする方がいます。
「元気に家まで帰って欲しい」―− この思いを実現すべく、引き続き山小屋での仕事に勤しんでいきます。

マウンテンスポーツの安全対策に取り組む
 また、昨今ではトレイルランニングをはじめ、山をメインとしたアウトドアフィールドで行われる競技が盛り上がっています。
「山を楽しむ方達が、元気に家に帰る」―− そのサポートすることができるよう、マウンテンスポーツにも関わり、看護師として成長していければと思っています。

 近年では豪雨や台風、地震などの自然災害の頻度も増加傾向にあります。
 どんなことが起きた際にでも出動して助けるべく人を助けることができるように、自身の目標とするビジョンに向けて今後も邁進していきます。


[写真‐1]
今年の槍ヶ岳山荘。小屋明けして隙間時間で穂先へ。今年の安全登山を祈願
[写真‐2]
富士山山頂にて救護活動。救急資機材を持ってどこにでも駆けつける
[写真‐3]
今年は悪天候が続いているので、快晴の日のシャッターチャンスを狙って槍ヶ岳と撮影
[写真‐4]
上田瑠偉(うえだ るい、1993年生まれ、2014年ハセツネCUPで優勝、2019年スカイランニングの世界最高峰レース「MIGU RUN SKYRUNNER WORLD SERIES 2019」でアジア人初の年間世界王者)選手の富士山でのチャレンジのサポートの様子。マウンテンスポーツの選手のサポートも積極的に行う
[写真‐5]
「球磨川リバイバル トレイル」という100マイルのレースで救護活動の統括を務める。多くのスタッフのサポートに感謝している
[写真‐6]
坂本 陽(さかもと・みなみ)

note、2022年9月22日 15:02
Trail Story Works/ RITSUKO ICHINOSE
山の上の看護師・坂本 陽
〜”世界一のフライトナース”を目指して〜

https://note.com/trail_story/n/nf13b479bb5a9

posted by fom_club at 05:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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