2020年07月26日

東京・お台場は「肥溜め」

 スポーツ選手の中には、今日2020年7月24日が東京2020オリンピック大会(東京五輪)に出場する最後のチャンスだったという人もいる。
 もう1年待つには年を取り過ぎていて体力がもたなかったり、経済的に苦し過ぎたりするからだ。

 その1人が35歳の外村哲也氏だ。
 今週、うだるように暑い日に、東京北郊の工場を改造した施設を訪ねると、彼は大きなトランポリンの上で高く飛んだり体を回転させたりして、まだ熱心に練習していた。

 外村氏は北京五輪(2008年)で4位となり、惜しくも銅メダルを逃した。
 その後はけがとの闘いが続き、ロンドン五輪(2012年)とリオ五輪(2016年)は出場がかなわなかった。
 東京五輪は有終の美を飾り、トランポリン選手生活に終止符を打つのに格好の、地元開催の大会になるはずだった。
 だが、もう1年先となると無理だ。

「2008年にもし北京五輪が1年延期されていたら、大丈夫、もう1年練習して成長しよう、と思っただろう」と彼は話す。
「でも今35歳だ。1年はとても長く感じる。そのため、引退が唯一の選択肢だと決心した」

 ただ、外村氏がトランポリンから下りることを決めたのには別の理由もある。
 東京2021五輪は開かれないのではないかと考えているのだ。

「本当にどうなるかわからない。開催の確率がどれくらいなのか、誰もわからない。来年になって中止となったら、1年を無駄にしてしまう。それも今、引退する理由だ」

 日本では、COVID-19(新型コロナウイルスの感染症)が1月に到来して以降、五輪への熱気は急激に冷めている。
 日本政府はほとんどの外国人の入国を禁止し、外国から新型ウイルスが持ち込まれるのを防いできた。
 多くの国民も、スポーツ選手や観客を迎えるために入国禁止を解くことにはためらいがちだ。

 外国選手団を受け入れる予定の自治体にテレビの取材が入り、住民の思いを聞いている。
 ブラジル選手団のホストタウンとなる、東京の北部にある自治体の住民らは、熱意を見せることさえ明らかに苦労していた。
 共同通信の世論調査では、COVID-19が来年も広がっていても五輪を「開催すべきだ」と答えた人は23%にとどまった。

 世界保健機関(WHO)の最新データからは、観戦を楽しむ状況も考えにくい。
 世界全体で1500万人以上の感染が確認されており、その人数は4〜5日ごとに100万人近く増えている。

 アメリカ、ブラジル、インド、南アフリカなど世界各地で、感染を抑える努力が失敗しており、感染者は急増している。
 もちろん、1年先までは長い時間があるように思える。
 しかし、多くの保健専門家らは、来年夏までにパンデミック(世界的流行)が収束するのは難しいと考えるようになっている。

 神戸大学病院の岩田健太郎教授は、東京五輪の開催はワクチン開発にかかっていると話す。

「もしワクチンが手に入るようになれば、状況は一変するだろう」と彼は言う。
「臨床試験のフェーズ1と2で有望な結果が出ている。私は希望を失ってはいない。しかし一般論として、ワクチンはウイルスを根絶せず、出現率をほぼ半減させるだけだ。そのため、COVID-19の根絶は無理だろう。むしろ(ワクチンができても)2021年も続くとみられる」

 岩田教授が特に懸念しているのが、世界で最もオリンピックに投資しているアメリカの状況だ。

「アメリカはこの先何カ月もCOVIDに苦しむ」と彼は言う。
「アメリカの選手たちは日本に来られるのか? アメリカ人抜きでオリンピックを開けるのか? おそらく無理だ。優先すべきは選手と日本の人たちの安全だ。アメリカのテレビ局には嫌な質問だろうが、オリンピックはスポーツの競技会なのか、それともテレビのショーなのか?」

 簡単な解決策と思える手がある。
 東京五輪を2022年までもう1年延期するのだ。
 パンデミックが消えている確率はずっと高まる。
 だが、日本政府はその可能性を排除している。
 国際オリンピック委員会(IOC)で最も長く委員を務めているディック・パウンド氏も、2021年に開くか中止かだと、カナダ・モントリオールの自宅から取材に答えた。

「いま明らかなのは2021年が最後のチャンスということだ」と彼は言う。
「2022年や2023年に延期できるものではない。これ以上、中ぶらりんの状態を日本に強いるのはフェアではない。選手を安全に迎えられるよう、五輪開催に向けてすべての努力を尽くす。だが、日本と世界の保健当局が、十分な安全は保てないとの結論に至ったら、おそらく、『仕方ない、パンデミックは新たな戦争だ』と言うしかないだろう」。

 これまでオリンピックが中止されたのは、第2次世界大戦が原因となった時だけだ。
 その大会は、そう、1940年の東京五輪だ。


 では、最後にもう1つ、案を示したい。
 五輪を大幅に簡素化するというもので、外国選手団は来日前に隔離を実施し、外国からの観客はなしにするのはどうだろう?

 IOCのディック・パウンド氏によれば、あり得ない考えだという。

「北米の表現で言えば、魚を釣るか餌を細かく切るか(どちらかはっきりさせる)だ」と彼は話す。
「日本には決断が求められるだろう。五輪の開催に踏み切るのか、それともリスクが大きすぎるのか? 後者の場合、おそらく日本が中止を提案し、IOCは受け入れることになるだろう」

 開会式まで1年となった23日夜、東京・国立競技場で、開始までの時を刻む時計をリセットする式典が開かれた。
 安倍晋三首相は東京五輪の開催を強く主張しているが、COVID-19はまず間違いなく、その言葉を聞いてはいないだろう。

※ 英語記事 Question mark over 2021 Tokyo Olympics


[写真-1]
東京五輪が再び、1年後に迫った。選手村にはフェンスが張られている

[写真-2]
外村哲也氏は引退が唯一の選択肢だと考えている

[写真-3]
外村哲也氏(右)は引退後、トランポリンの指導者として活動している

[写真-4]
ワクチンが開発されなければ東京五輪の開催は確実にはならないと関係者は心配している。写真は選手村付近

[写真-5]
東京五輪開幕までの時間を示す時計はリセットされた

BBC News Japan、2020年7月24日
東京五輪、2021年開催に疑問符
安全を確保できるか

(ルーパート・ウィングフィールド=ヘイズ、BBCニュース東京特派員)
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-53522738

「トイレみたいなにおいがする」――。
 東京五輪の水泳オープンウオータースイミングのテスト大会に参加した選手から衝撃的な発言が飛び出したのは昨夏のことだった。
 競技会場のお台場海浜公園は、海水から基準値超えの大腸菌が検出され“肥溜め”とまで揶揄されたが、あれから1年。
 コロナ禍がなければ、2020年7月24日は東京五輪の開会式のはずだった。
 水質は改善したのだろうか。

 今、SNSで注目を集めているのが、都の下水道局がアピールする「水面制御装置」だ。
 下水道局の公式ツイッターは16日、同装置について、〈下水道から河川などへ放流されるゴミの流出を抑制するために開発した特許技術です〉とのコメントと共に、装置が作動する動画をアップしている。
 30秒間の動画の再生回数は実に70万回超に上る。

 同ツイートには、〈これでオリンピックのうんこプールが奇麗になるってこと?〉〈川とかも奇麗になるかな〉といった水質改善に関するコメントが投稿されている。
 都議会関係者も「お台場の水質浄化が可能なのか」と沸き立った。

 ところが、下水道局によると、装置は新技術ではなく2002年から都内の下水道に設置済みで、ゴミの除去はできるが、水質改善には効果がないという。

 現状、「クサい」と声が上がった昨夏から、お台場の水質はほとんど改善していない。
 予定通り、五輪開催を迎えていたら、選手らは“肥溜め”の中を泳がされることになっていたわけだから、1年の延期は不幸中の幸いとも言えよう。

海にコロナウイルスが残留する危険も

 果たして、来年の大会本番までに水質改善できるのか。
 都は昨年9月から、オリンピック・パラリンピック準備局や下水道局など複数局で連携し、“肥溜め”浄化対策を進めている。
 においの原因である海底のヘドロの巻き上げ防止のため、伊豆諸島の神津島の砂をまいたり、下水の放流口周囲にネットを張って海へゴミが流入するのを防ぐ措置を取ってきた。

 東京港の水質問題を調査し続け、昨夏、お台場の水質について問題提起した港区議会議員の榎本茂氏はこうみる。

「根本的な水質改善は難しい状況です。砂の散布については、海中の有害物質の分解には一定の効果があるでしょう。しかし、実験用の水槽でテストしたところ、いくら砂をまいても海底に沈殿するヘドロは巻き上がってしまう。下水放流口のネットも、放出される水量が多すぎて『壁』の役割を果たせていません」

 怖いのは、目下、拡大中の新型コロナウイルスが、感染者の糞尿に残留し、下水道を通じて海に放出されている恐れがあることだ。
 下水道局は〈WHOは「感染者の糞便から新型コロナウイルスに感染するリスクは低い」と公表しており、下水からの感染リスクは低いものと考えられます〉と公式HPで主張しているが、不安は払拭し切れていない。

「下水道局は『リスクは低い』とは言いますが、『感染しない』とは言い切れないわけです。そんな状態で選手に泳いでもらえるでしょうか。この際、大会の開催・中止にかかわらず、今回の問題をきっかけに東京港の水質改善に正面から取り組むべきです。50年くらいかかる可能性もありますが、現状の『間に合わせ』の対策では将来に禍根を残すことになるでしょう」
(榎本茂氏)

 “肥溜め”じゃなくなる日は来るのか。


[写真-1]
選手は命がけだ(2019年東京五輪水泳オープンウォータースイミングのテスト大会

[写真-2]
下水放流口から汚水が…

日刊ゲンダイ、2020/07/25 06:00
東京五輪OWS会場お台場は“肥溜め”……
1年延期でも浄化不能

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/276400

posted by fom_club at 08:09| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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