2020年05月29日

フランケンシュタインの誘惑「ビタミン×戦争×森鴎外」

森鴎外の過ち「兵食論争」

 NHKBS「フランケンシュタインの衝撃」という番組で、明治時代の陸軍と海軍の「兵食」に関する主張の違いを取り上げていた。

 海軍は高木兼寛、陸軍は作家としても高名な森鴎外との間に繰り広げられた主張の違いとその結果はあまりにも傲慢、そして無惨なものであった。

 日清、日露の戦争勝利は近代日本の政治および社会体制が成功への道を歩んだ成果として政府は宣伝し、国民もそう思わされ、太平洋戦争の大敗北を経験しながら日清・日露を未だに「成功体験」として信じている者達が現在の与党政権内にも数多く生息しているが、その実この二つの戦争でも兵士の命は上に立つ者の傲慢な愚かさによって無駄に失われていたのだ。

 日頃戦争のことなど考えていない者にとって、戦争は戦場での銃弾飛び交う戦いのイメージしか持てないものだが、戦争映画もその場面をことさら強調して描く。

 現実は日常生活があってその上に戦闘がある。食べ、排泄し、眠る。まず食べなければ戦場で戦うエネルギーが保てない。その兵食にあって、陸軍も海軍も米を食事の中心に置いた。まず米の飯、米さえあれば副食は漬物ぐらいでも力は出る。しかしこれでビタミンB1不足の脚気が蔓延する。脚気と言うと足がだるくなってきて歩くこともできなくなるぐらいの知識しかなかったが、放置しておくと死に至る病なのである。

 太平洋戦争では米軍によって太平洋の空も海も押さえられ、補給もままならず、餓死及び病死が戦闘死をはるかに上回ったというが、日清・日露の戦争でも脚気で死ぬ兵士が続出していた。

 海軍では早くから米食偏重の弊害に気づき、米食中心とパンや麦を混ぜた御飯を食べるグループに分け、長期航海で調査したところ、歴然とした結果になった。

 これ以降、海軍は米食偏重の食事をやめている。

 ところが陸軍は軍医総監である森鴎外を中心に米食に固執し、日清戦争でも日露戦争でも兵士に無念の死を与え続けた。

鴎外の後ろには東京帝国大学医学部の存在があった。鴎外自身神童として13才だかの年令で東大医学部に入学し、陸軍に軍医として務めるようになってからドイツに留学し、当時細菌学の最高峰、コレラ菌や結核菌の発見者コッホに師事している。

 主食が米ではないヨーロッパに脚気患者はいない。ビタミンの存在はまだ確認されていない時代にコッホに教えを仰いでも細菌学的な示唆しか返って来ない。

 医学ではなく、農学や栄養学の方面からのアプローチで脚気の原因はビタミンB1の不足にあることに到達したのが鈴木梅太郎であるが、医学部は同じ東大でも農学部出身者の鈴木の言うことに耳を傾けない。

 この鴎外の最大の過ちについて、鴎外研究者たちは触れてはいるが、鴎外を断罪するような立場ではなく、さらりと流しているように思える。家に鴎外関係の本がかなりあったので、幾冊か読んだが、書く人たちが医学方面の専門家ではないということもあって、事の重大さへの言及が弱い。

 この番組を見て私は改めて思った。軍医総監森鴎外の過ちと罪を。

 鈴木梅太郎が世界に先駆けてビタミンB1の抽出に成功したのは明治末で、鴎外が亡くなったのは大正半ばであるが、鴎外が自分の過ちというか認識不足を認めた気配はない。

 原発推進は東大閥で築かれていた。水俣病も、血液製剤によるエイズ被害も権威ある学者と言われる人たちは中々現実を認めない。自分達の間違いや力不足を認めることは自分を否定されたかのように受け止めるのか。事実の前に謙虚でないのは学問を仕事とする人間の在り方ではないと思うが、そういうことは学校という所で教えられていないのか、忘れてしまったのか。


木洩れ日通信、2017年07月03日
鴎外の罪、傲慢の過ち
https://blog.goo.ne.jp/str1912/e/c3e2468a320538cea2d3778ecdf9c8cb

 このお方の昨日のブログもどうぞ:
 第二次安倍政権が発足したのは2012年。2011年の東日本大震災」の翌年である。
 2011年、首相だった菅直人は惨事を前に逃亡しようとした東電の幹部を引き戻しに東電に怒鳴り込んでいった。
 今思うとこれがトップの在り方ではなかったか。
 安倍晋三は「コロナ禍」に苦しむ国民を尻目に自身の延命にいそしむのみ。
 テレビマスコミは黒川への甘い処分にさすがに擁護する者なし。安倍の腰ぎんちゃくとして知られる田崎史郎までが何を思ったのか「官邸と安倍の責任」と言っていた。
 黒川を「余人をもって代えがたい」としたのは安倍晋三本人である。
 加計・森友・桜を見る会の公権・公金の私物化の罪をモミ消してくれるのは黒川以外にいない。
 今回の黒川の実にお粗末な失脚劇はどうやら反安倍の検察の仕掛けらしい。
 賭けマージャンに買春、こんな者が検察のトップに就いたら誰も検察を信用しないでしょう。
 検察組織にとってもこれは重大な危機である。
 検察あげて「安倍追放」に舵を切ったとみるべきだろう。
 今回は国民も安倍を擁護しない。実に惨憺たる安倍政権の8年間である。
 こんな政権を8年も許した責任は自民党・公明党・維新の各政党と官僚群、財界、そしてマスコミ、選挙制度の不備があるとはいえ自公に大量の議席を与えてしまった国民にある。

木洩れ日通信、2020年05月28日
8年ものでたらめ政権の責めを今払うとき
https://blog.goo.ne.jp/str1912/e/b4be1f587f332506e559376b028f31c1

 このお方のブログを今日、2020年5月29日金曜日になぜとりあげるのか、と申しますと、昨晩NHK BS プレミアムで「フランケンシュタインの誘惑、科学史 闇の事件簿」という番組で2017年6月29日(木)22:00〜23:00放送の「ビタミン×戦争×森鴎外」の再放送があったらしいのです:

 BSプレミアムでやってたのを見ました。
「フランケンシュタインの誘惑」という魅力的なタイトルなので、ドラマかと思ったら「科学史 闇の事件簿」という副題もついていて、「科学史の闇に埋もれた事件に光を当て、科学の正体に迫るドキュメンタリー」だそうです。

 既に終了した番組なのか、今は過去の放送のセレクションを放送中だそうで、今夜は「ビタミン×戦争×森鴎外」というのをやってました。
 ビタミン:脚気はビタミンB1の欠乏症、戦争:日露戦争では陸軍の脚気患者が多かった、森鴎外:脚気は感染症と主張、という話。

 脚気と軍隊と食生活とビタミンというのは、私は吉村昭先生の「白い航路」という小説を読みましたので、割と知ってました。
 軍人に脚気が多いことを調べた海軍の軍医高木兼寛が、綿密な疫学調査の結果ある種の栄養不足ではないかという仮説を立て、白米中心からパン食に変えた海軍での実験で、脚気の発生をほぼなくすことに成功。

 一方森鴎外というか陸軍軍医の森林太郎は、脚気が感染症という論文を発表、高木の栄養不足論を政治力や各種圧力で沈黙させ、結果日露戦争で膨大な患者を発生させることにもなったのですが、この人は死ぬまでその説を変えませんでした。

 この辺は高木の留学先=イギリス、森の留学先=ドイツ、高木=海軍、森=陸軍、というような対立が絡み合ったこともあります。

 実際東京では脚気が多く地方ではそれほどでもないということがあったので、東京の風土病のように言われたり、集団生活をする軍人に患者が多いことから感染症の説もとられました。
 が、白米のみ食べる食生活が影響してたわけで、簡単に言うと地方は貧しくて白米だけ食べられる人が少なく、軍人は貧しい地方の若者が「銀シャリが食べられる」と軍隊に入るケースが多かったため。

 実際、当時の軍人は給料貰えばとにかく白いコメのご飯を食べたいという傾向で、おかずはタクワン少々とかそういう感じ。
 エンゲル係数ならぬ白米係数がばか高い状況だったのでしょう。
 高木の海軍での実験でも脚気の発生はあったものの、パン食が嫌でこっそり白米のおにぎりだけ食べてた軍人がいたためという話もあります。

 今回の番組では、その高木の説を発展させた鈴木梅太郎が、その功績によって実はノーベル賞の候補にもなっていたという記録が発見されたとことも伝えてました。
 もし受賞していたら、湯川秀樹よりも20年も早かったとか。
 ただしこの人も、医学者じゃなく農学者だったため、発表当時は国内での扱いは冷たかったんですね。
 なんか科学的じゃないなぁ。

 今ではビタミンの不足によっていろいろな病気になることがわかっていて、ビタミンB1の不足で脚気、ビタミンCの不足で壊血病、ビタミンDの不足でくる病、ビタミンAの不足で夜盲症、など。今は普通の食生活で栄養は足りるのでしょうが、私もご飯は大好きなので当時軍人だったら脚気になってたかも。

 こういう話を聞いて、「じゃ毎日麦飯にすればおかずいらないんだ。やった! 明日から献立が楽だ。」と喜んだ奥さんがいたとかいないとか。

 今日この番組を見てて凄く面白いと思ったのですが、今回のは2017年に放送された回の再放送。
 で、調べてみたら前回も見てました(ヤッホーくん注)。
 私が忘れっぽくなったのは、何が足らないのだろう…。


今日のひとネタ、2020年05月28日 22時43分35秒
フランケンシュタインの誘惑 ビタミン×戦争×森鴎外
https://blog.goo.ne.jp/bongengan/e/1993d55f297c67a98687b506116642f8

(ヤッホーくん注)

 NHKBSプレミアム「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」今夜の放送は「ビタミン×戦争×森鴎外」でした。
 明治時代日本人を悩ませていた「脚気」とビタミンについての話ですが、私なんぞは吉村昭先生の「白い航跡」を読みましたので高木兼寛先生の功績はよく存じ上げております。

 それに対して森鴎外は「脚気=感染症」という説を曲げず、実際日清・日露戦争での陸軍では戦闘における死者よりも脚気による死者の方がはるかに多かったとか。
 そもそもみんな白米は好きなので、「白米は栄養的に問題ない! 白米さえ食べておけば大丈夫!」と言われたら安心したのでしょうね。
 あとは陸軍VS海軍の意地の張り合いの問題も大きいですが。

 ということで、あらためて森鴎外が嫌いになりました。
 ドイツ行ってワッチコンして「舞姫」とか書いていい気になってんじゃないよっての。
 今さら言ってもなんですが。


今日のひとネタ、2017年06月29日 23時10分23秒
やっぱり森鴎外嫌い!
https://blog.goo.ne.jp/bongengan/e/da438d4b308dea446cb114a1e193f7b8

posted by fom_club at 09:11| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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