2020年05月25日

サヨク島田雅彦

島田雅彦『優しいサヨクの復活』(PHP新書、2015年10月)

 戦後の政治的経緯を振り返ると、いまこそサヨクの価値を見直すときが来たと思う。
 確かにサヨクは主流派にはならないかもしれないが、おかしいと思うことに声を上げてこそ存在価値がある。
 40年ぶりに市民が戦争反対や憲法擁護を叫ぶようになったことには、大きな意味がある。
……(第1章より抜粋)

「戦争法案」ともいわれた平和安全法制をめぐって大きな反対運動が巻き起こった日本。
 なかでも学生たちを中心としたデモ活動は、日本社会に強いインパクトを与えた。
 彼らの素朴な感性が、国家を変えていく力になる、とかつて『優しいサヨクのための嬉遊曲』でデビューした作家は語る。

 暴走する日本政治、ないがしろにされる憲法……そんな時代だからこそ、一見周回遅れにも思えるサヨクが真の価値を発揮する。
 戦後日本において右と左の対立軸はどこにあり、それがどうねじれてしまったのか。
 日本国憲法を守り抜かねばならないほんとうの理由は何か。

 さらには厄介な隣国・中国との付き合い方から転換期を迎える資本主義の未来までを、評論家にも、政治家にも語りえない豊かな想像力を駆使して本書は描き出していく。
 本来ありうべき「もう一つの談話」までも収録した、現代を代表する作家による渾身の一作。

第1章: 戦後70年とサヨクの価値
第2章: 憲法に背くメリットなど何もない
第3章: アメリカは信用できる相手か?
第4章: 隣人との付き合い方
第5章: 資本主義の彼方へ
第6章: 若者はいつだって困難な時代を生きる


PHP研究所
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=4-569-82729-2

島田雅彦『絶望キャラメル』(河出書房新社、2018年6月)

 今から35年前、島田雅彦は、デビュー作で「サヨク」を標榜し物議を醸したものだった。
 バブル景気の絶頂へとひた走っていた80年代前半、「左翼」を「サヨク」と言い換えてみせることには、複雑な批判意識が宿っていた。
 思えばあの頃は、日本の戦後において最も非政治的でいられた時代だった。
 だからカタカナ表記で「サヨク」を名乗ることには意味があったのだ。

 最近の島田は、小説でも言動でも、痛烈な体制批判を繰り返している。
 数年前には久しぶりに「サヨク」という語がタイトルに含まれる新書も刊行した(『優しいサヨクの復活』PHP新書、2015年10月)。
 だが今や彼の「サヨク」は、昔の余裕のあるそれとは違って真に迫っており、かつて空前の好景気の途上に颯爽(さっそう)と文壇に登場した寵児(ちょうじ)が、本気で現状を憂いていることがうかがえる。

 本書もまた、そんな「サヨク」的精神によって書かれた小説と言っていい。
 しかし今回、島田は自らの批判意識を極上のエンターテインメントとして提示している。
 これはきわめて痛快かつ軽快な物語である。

「絶望」が支配する地方都市に奇妙な新米坊主(ぼうず)がやってくる。
 彼はお先真っ暗な町を何とかしようと、若い才能を見つけて育てる「原石発掘プロジェクト」をいきなり立ち上げる。
 全国レベルの美少女、プロ野球選手になれる肩を持った少年、微生物に情熱を注ぐ少女、目立った才能はないが頭の回転が速く気の利く少年、この4人の高校生が、ごく短い時間の間に、いかなる変化と成長を遂げていくかが、スピーディーな筆致で描かれていく。

 そう、これは「町おこし小説」であり「アイドル育成小説」であり「高校野球小説」であり「リケジョ(理系女子)小説」なのだ。
 そしてもちろん「青春小説」でもある。
 それぞれのエピソードも実に面白く、まるで数冊分の小説がひとつになっているかのようだ。
 小刻みで鮮やかな場面転換も効果的で、一気読み必至の仕上がりである。

 だが読み終えたとき、作者の狙いに読者は気づく。
 題名は『絶望キャラメル』。
 絶望は苦い。キャラメルは甘い。
 絶望の内にキャラメル、すなわち微(かす)かな希望を探し当てること。
 この意味で本書は一種のファンタジーだが、それは真摯で鋭敏な現状認識に根ざしたファンタジーなのだ。


日本経済新聞、2018年8月4日 6:00
島田雅彦『絶望キャラメル』
現状憂いかすかな希望探る

(<評者>佐々木 敦、批評家)
https://r.nikkei.com/article/DGXKZO33773140T00C18A8MY6000

島田雅彦『人類最年長』(文藝春秋、2019年4月)

 1861(万延2)年、横浜で生まれた宮川麟太郎。
 その成長の遅さゆえ、実年齢の半分ほどの年にしか見えない彼は、従軍記者として滞在した中国で九死に一生を得たのち、彼(か)の地の長老によって精霊を宿され、不死の身となり……。

 幕末から平成の先へ、159歳の男の人生を通じて日本の軌跡を描いた、島田雅彦さんのクロニクル小説『人類最年長』。

「平均寿命が延びたといっても、今の長寿は青春期ではなく晩年が長いわけで。永遠に生きることのゾッとするような退屈、自分だけが生き残り、他の人は身罷(みまか)る、その恐ろしいほどの孤独や憂鬱を書くことによって経験しておけば、老いに対する不安が薄れるのではないかな、と(笑)。
 不老不死は人類の見果てぬ夢で、昨今、物理的にはその実現へと近づきつつあるものの、メンタル面が見過ごされていることも、気になっていました」と話す島田さん。

 文明開化とともに日本に入った新聞や自由民権運動、日露戦争、関東大震災、そして敗戦から戦後復興へ。
 それぞれの時代を生き抜いてきた主人公の回想は日本の近現代の軌跡をつぶさに伝えるが、
「年代記を書く際、その時代を体験として語れる人がいないと、事実をぶっきらぼうに羅列する歴史記述になってしまいますが、体験者の話には喜怒哀楽が加味されるので、リアリティが出てきます。
 近現代を自伝というかたちで語ることは、チャレンジしがいがあることでした」と、島田さんはいう。

 平均寿命が40代前半だった明治時代、長寿を不審に思われぬよう名前を変えるだけでなく、記者、講談師、瀬戸物売り、蓄音機販売、骨董屋兼質屋、洋食屋と、宮川麟太郎は職業も変えてゆく。

「主人公がその時代に何者として生きたか。職業はその証拠にもなります。おもしろいのは文明開化後、自由民権運動とセットで入ったジャーナリズムの流れで始まった政治演説が、講談や落語と同じカテゴリーで扱われていたこと。
 新聞がフェイクニュースを流したり、弾圧を受けて緘口令(かんこうれい)を敷くなど、上に忖度することは、当時も今も変わっていません」

 諸事に首を突っ込みながら生きてきた主人公を通じて日本の近現代を振り返る作品を書きながら、島田さんは、東京の変化の速さにも気づいたという。

「欧米の都市とは比べるべくもなく、片時も同じ状況ではない東京の移り変わりの激しさはスクラップ&ビルドそのものだと、改めて認識しました」
 
※『家庭画報』2019年8月号掲載


家庭画報、2019/07/31
島田雅彦さん『人類最年長』
人類最年長の男が見た、日本の変遷とその軌跡

(取材・構成・文/塚田恭子)
https://www.kateigaho.com/migaku/53508/

作家の島田雅彦さんがインターネット上でツイッターなどで行なっている、新型コロナウイルス禍と安倍政権の対応、日本共産党の緊急提案についての発信が話題を呼んでいます。
島田さんに聞きました。

合理的で必要な共産党の提案
安倍政権は見栄を捨て対処を

カメより遅い安倍政権の対応


 新型コロナウイルス禍への対応はカメよりも遅い。
 PCR検査数は韓国やドイツと比較しても、圧倒的に少ないし、より簡便な抗体検査もキットが外国から提供されても、なかなか検査体制を整備しようとしませんでした。

 韓国ではPCR検査を街頭などで大規模にやり、重症者と軽症者を分けて対応しています。
 台湾は早くから感染者追跡など対策により、封じ込めに成果を出しています。
 日本は検体数の分母が小さいので、政府発表よりはるかに多い隠れ感染者がいることが疑われています。
 そもそもデータが信用できない以上、国民の不安が解消されるはずはありません。

 安倍政権は共産党を目の敵にしているが・・・・

 日本共産党が2020年4月16日に、感染爆発、医療崩壊崩壊を止める緊急提案を出しましたが、それを見て、合理的で必要な提案だと思いました。
 安倍政権は共産党を目の敵にしているけれど、共産党が党派を超えて正しい提案をしているのだから、見栄をすてて対処せよという話なのです。

 共産党は「自粛と一体での補償」は、単なる経済政策ではなく感染防止策だと、安倍首相の「緊急宣言」の前から、国会質問でもいっていたわけです。
 今のコロナ禍とのたたかいは、ある意味「挙国一致」でやる必要がありますから、政府は最初からその意見に従うべきでした。

官邸の密室で決まる政策

 対応の遅れの原因は、緊急対策より先に、自分たちの利権を考えるからではないか。
 政権が打ち出す「政策」のほとんどが官邸の密室内で決まっている感じがします。
 側近の秘書官があれこれ考え、状況をよく理解していない首相が理解できる対策をやっているだけなので、マスク配布とか星野源(歌手)への便乗ビデオなどの迷走となるのです。

 新型コロナ禍で、今後ますます閉店、倒産、失業などが増えます。
 消費者でもある彼らの購買力が落ちれば、さらに消費の低迷につながります。

 感染症のために接触を避ければ、経済活動はおのずと停滞し、恐慌になります。
 企業の内部留保を吐き出させるのは今しかないし、不要不急の戦闘機やミサイルの購入をキャンセルしてでも、財源を確保し、恐慌対策も合わせて講じないと、確実に飢える人がでます。

 まずは、コロナ禍による損失の補償など税金の出動が必要です。

おかしなことに異義を 
さらなる危機を防ぐために


 学生にも、アルバイトの減収への補償や、休校中の学費や大学や国が返還、免除するなどの対策を講じないと、退学を余儀なくされる学生が続出するでしょう。
 さらに一歩進んで、ベーッシックインカム、高等教育無償化へ進まないと、社会が崩壊します。

 医療現場でも、安倍政権によって病床を減らす「地域医療構想」が続けられています。
 人の命よりも経済優先で、病床減らしも福島第一原発の津波対策を怠ったことと同根の、セーフティネット(安全網)を犠牲にする愚策です。
 医療崩壊や原発事故を招く伏線が自民党によって張られていたのです。
 予防対策は、結果的にはカタストロフ(破局)を避ける意味で、効率的なのです。

 危機のときに文句を言うな、という意見を聞きますが、おかしいことにたいして、異議申立てをしなければ、指をくわえて危機が深刻化するのを見ているだけになります。
 国会での野党の存在意義は主にそこにあります。
 ネットで不平、不満を発信するのも政権への圧力として有効です。

 共産党を排除してさらなる危機の見舞われます。
 納税者の不満を吸い上げる形で、政権の不備を引き続き追及してほしいと思います。


しんぶん赤旗、2020年4月26日付け朝刊
コロナ対応をめぐる発信が話題
作家 島田雅彦さん


posted by fom_club at 06:47| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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