2020年05月23日

映画と演劇、音楽の3業界団体が共同で「We Need Culture」立ち上げ

 新型コロナウイルス禍で窮地の映画と演劇、音楽の3業界団体が2020年5月22日、政府に文化・芸術への支援を求める統一要望書を提出した。

 要望を出したのは、「SAVE the CINEMA」、「演劇緊急支援プロジェクト」、「Save Our Space」の3団体で、共同で「We Need Culture」というプロジェクトを立ち上げた。
 要望書では、自粛要請解除後の公演や上映の売り上げ減少に対する補塡(ほてん)などを目的とした官民共同の「文化芸術復興基金」の創設のほか、目下の文化芸術活動を存続させるための固定費支援や雇用調整助成金の早期支給などを求めた。

 俳優で日本劇作家協会会長の渡辺えりさんは、演劇をさくらんぼに例え、
「実をとって食べるまでに本当に時間がかかる。その根っこが枯れて腐ってしまうんじゃないかという状況」と訴えた。

 映画監督の諏訪敦彦(のぶひろ)さんは、
「海外のフリーランスの友人はすでに支援を受けている。日本のスピード感の遅さは問題」と指摘した。

 音楽業界を代表してあいさつしたライブハウス経営者のスガナミユウさんは、著名ミュージシャンにはライブハウスやクラブの出身者が多いと指摘した上で、
「ライブハウス、劇団、ミニシアターはボトムアップの場所。一回つぶれてしまうと立ち上がるのはとても大変」と訴えた。

 日本劇団協議会の福島明夫専務理事は、
「多くの演劇人が未来に希望を持てるのかという状況に追い込まれている」と報告し、「演劇の火を消さないために一緒に努力していただきたい」と求めた。

 同日夜には俳優の小泉今日子さんが渡辺さんらとともにネット配信番組に出演し、
「私も十代の頃に歌手としてデビュー、それから女優として映画にも出て、今は制作者としても演劇に関わっている。今回、三つの文化が手をつないで活動をしていることに、ある種の力強さを感じています」と語った。
 同じ番組には俳優の、のんさんも「演劇がなくなってしまうのはとても恐ろしいこと。演劇は明日に向かう力になります」とのメッセージを寄せた。

 要望書提出前にあった同日の定例会見で萩生田光一文部科学相は、
「文化芸術活動は公演等の開催のために準備期間が必要で、すぐには従来同様の公演収入が見込めないなど業界固有の課題があると承知している。文化芸術の灯を消してはならないという思いを与党の皆さんとも共有しながら、必要な支援策を至急検討している」と述べた。


[写真-1]
5月22日夜、ネット配信番組で新型コロナウイルス下の文化芸術について語る小泉今日子さん(中央)ら=ユーチューブから

[写真-2]
記者会見で語る(左から)西川信廣さん、渡辺えりさん、スガナミユウさん、加藤梅造さん、諏訪敦彦さん=東京・永田町、衆院第1議員会館

[写真-3]
要請後の会見で支援を訴える渡辺えりさん=22日、東京都千代田区の衆議院第1会館

朝日新聞、2020年5月22日 20時54分
映画と演劇と音楽、手を組み「支援を」
のんさんも談話

(定塚遼、丸山ひかり、神宮桃子)
https://digital.asahi.com/articles/ASN5Q6SDZN5QUCVL00S.html

We Need Culture −文化芸術復興基金をつくろう−
要 望 書

文化庁長官 宮田 亮平 様
文部科学大臣 萩生田光一 様
経済産業大臣 梶山 弘志 様
厚生労働大臣 加藤 勝信 様
2020年5月22日
SAVE the CINEMA プロジェクト
演劇緊急支援プロジェクト
SaveOurSpace

 日本は、世界でも稀な多種多様の「文化」を創造し、それを享受できる国です。
 その大きな部分を、経済体としては小さな団体、個人が支えています。

 ミニシアターでは世界各国の多様な、そして独自性のあるテーマを持った映画を観ることができます。
 演劇は全国津々浦々の鑑賞団体や学校にスタンダードな演劇を届けるようなものから、世界的に評価されるような先鋭的な表現まで多彩に構成され、豊かなシーンを作り出しています。
 ライブハウス/クラブも、日本の音楽を、世界的なムーブメントに押し上げる原動力となると同時に、人的交流を生み、文化を育てています。

 そして、そういった文化の拠点となるミニシアター、劇場、ライブハウス/クラブが、全国の人口規模の比較的小さな町にも存在し、それは私たち文化に携わる人たちの誇りとなると同時に、市民の文化の享受機会を担保しています。

 この3つが支えているものは、それだけに留まりません。
 ミニシアターがなければ、才能があっても世に出ることができなかった監督や俳優、スタッフがどれほどいたかもわからず、ライブハウス/クラブも同様です。
 ライブハウス/クラブ自身が音響機材や照明設備を持ち充実した音楽シーンを作っているのは、実は世界でも独特のスタイルで、音楽の多様性を担保してくれています。
 演劇は、たくさんの実力ある俳優や脚本家などを輩出すると同時に、小中学校の現場にも授業というかたちで多く参加をしています。
 それは、情操教育の一端を担うと同時に、「コミュニケーション」を子どもに知ってもらう手段として教育現場から求められています。
 また、障がいのある方やマイノリティの方たちについて作品のなかで積極的に取り上げたり、表現の場を共に持ったりすることで、相互理解を深め、共生的な社会をつくってきました。

 このように、私たちが、いろいろなかたちで支え、育ててきたものは少なくありません。
 この環境が、また新しい才能を生み、日本の文化が世界的に注目され、尊敬される土壌を作ってきました。
 ミニシアターや、演劇の場所である劇場、そしてライブハウス/クラブはただそれを行う場所というに留まらない、本来的な意味でのインフラ、この国に住む人たちにとって欠かすことのできない社会基盤のひとつであると同時に、単なるハードに留まらない文化芸術の担い手なのです。

 しかし、このたびの新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、状況は一変しました。
 私たちは政府の自粛要請に応え、そして最後まで慎重に対応していく体制を採っています。
 それは、私たちが「いのち」というものを中心において行ってきた文化の担い手だからです。
 経済的に足掻きながらも、そこに集まる人たちを守るため、私たちは血を流し続けています。
 再開後も慎重な態度で運営していかなくてはなりません。
 それは、もともと大きな規模ではない私たちには経済的に不可能と言える状態を生みます。
 このことは、長く培ってきた文化の土壌を根絶やしにすると同時に、市民の享受機会を否応なく奪います。
 そして丁寧に培ってきた「場」が失われます。
 これは私たち文化の担い手にとってのみの損失ではなく、文化を愛し、豊かな文化を育ててきた人たちの思いが、歴史ごと消失することを意味します。

 日本文化の世界的評価の高さに対して、国による文化支援は決して手厚いとは言えません。
 予算額にしても、国家予算に占める割合は、先進国のなかではたいへん少ない状況です。
 これは文化庁自らが報告書というかたちでまとめています。
 この脆弱な体制のなかで、私たちは自分たちの哲学に則って文化の火を守って参りました。
 しかし、国はこの局面となってなお、文化の支援に積極的ではありません。
 これでは文化行政の役割を充分に果たしているとは言えないのではないでしょうか。

 この未曾有な局面のなか、「アフターコロナ」「ウィズコロナ」という言葉が跋扈しています。
 経済の回復はもちろん必要ですが、同時に、私たちの国が文化との新しい関係を模索し、文化を尊重する国として世界に尊敬される国となることが必要なのではないでしょうか。
 その鍵を握っているのは、私たち文化に携わる人たちの自助努力と、国からの文化への理解と 支援なのです。
 文化の担い手である私たちと国が手を携えれば、人の心を守り抜き、文化の土壌をさらに豊かなものにしていくことができると考え、私たちはこの要望書を提出いたします。

 具体的な要望は以下の通りです。

1.文化庁及び文部科学省に対して

 前提として、劇団だけではなく、ミニシアターやライブハウス/クラブなどの文化的価値を認め、文化芸術団体として、文化庁管轄での支援を求めます。
 これらの団体は自粛要請が解除された後も、直ちに自粛要請前の状態に戻れるわけではなく、感染症対策として相応の客席減を求められており、安全・安心を最優先する結果、長期間にわたって経済面でも影響を受けることになります。
 その期間における活動の存続を維持するため、文化芸術団体が公演や上映、ライブなどを行うことに伴う売上減少・経費増大に対して補填することなどを目的とした「文化芸術復興基金」を創設してください。

2.経済産業省に対して

 現状の持続化給付金は、文化芸術活動を存続させるためには極めて不十分であり、また活動の実際と乖離したところがあります。
 給付の継続(再度の給付)、運用の柔軟化を求めます。
 あわせて、固定費にかかる支出に対する給付型の支援も求めます。
 要望書本文に書いたような理由から、場所を守ることはただハード面を守ることではなく文化そのものを守ることだという、文化独自の状況を理解した支援内容を希望します。

3.厚生労働省に対して

 雇用調整助成金は、申請してから支給までに時間がかかっており、また支給が認められる件数、割合も極めて少ないという問題があります。
 また文化芸術団体の場合、フリーランスの方たちがさまざまなかたちで働いていますが、その方たちが雇用調整助成金や国民健康保険加入者に適用されている傷病手当金、「賃金の支払の確保等に関する法律」(賃確法)などの対象とされていません。
 雇用調整助成金が早期に支給されるよう運用の是正と、各種制度においてフリーランスも対象とするよう制度の是正、柔軟化を求めます。


https://weneedculture.org/assets/pdf/request.pdf

posted by fom_club at 08:15| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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