2019年11月19日

連合発足30年

 労働組合の総元締である連合が発足して2019年11月21日で30周年を迎える。
 この間、非自民政権の樹立を後押しするなど、存在感を示した局面もあったが、近年は目立った成果を出せずにいる。
 組織内で「労働環境の改善を加速するには、政権と手を組むのが現実的だ」との声を聞くことがある。
 労組イコール左翼の図式で語られることが多いが、自民党の支持団体になる日はそう遠くないのではなかろうか。

 連合の正式名称は、日本労働組合総連合会である。
 その名前の通り、旧社会党系の日本労働組合総評議会(総評)と、旧民社党系の全日本労働総同盟(同盟)が連合して生まれた。
 組織率が低下する中で、発言力を維持するには大同団結した方が得策との思惑で一致したからだ。
 連合を接着剤にする形で、旧社会党系と旧民社党系を含む非自民勢力は1993年と2009年の2回、政権交代を実現した。

 だが、官公労中心の旧総評と民間労組の旧同盟との溝は埋まらなかった。
 親方日の丸的な体質の旧総評系の労組は、目先の待遇改善より自民党政権の批判に軸足を置く。
 他方、民間労組からなる旧同盟系の労組はイデオロギー闘争よりも、日々の暮らしを重視しており、安倍政権が力を入れる賃上げと親和性がある。

 両者の溝があらわになった出来事が2017年にあった。
 安倍晋三首相が打ち出した働き方改革の目玉だった「脱時間給」の扱い。
 連合がいったんは容認したのに、最終的にはその方針を撤回したのだ。
 容認を主導した旧同盟系の逢見直人事務局長(当時)は「政権と連携」派の代表格で、その2年前には安倍首相と密会したのが明るみに出たことがあった。
 脱時間給を「残業代ゼロ」と批判してきた旧総評系が猛反発し、次期会長とみられてきた逢見氏は会長代行にとどめられた。

 だが、労組単位での自民党支持の動きは徐々に進んでいる。
 騒動に先立つ2016年には化学メーカーでつくる全国化学労働組合総連合(化学総連)が連合を脱退。
 化学総連は否定したが、当時、幹部が自民党の茂木敏充政調会長(当時)と接触したと取り沙汰された。
 与野党対決型だった2018年の新潟県知事選では、連合としては野党統一候補を推したものの、反原発色が濃いことを嫌った電力総連は自民党候補を事実上支援した。

 自民党も労組との距離を縮めようと積極的に動いている。
 旧民主党出身の国会議員の引き抜きというと、知名度のある細野豪志氏や長島昭久氏のことが話題になることが多いが、それよりもはるかに重要な引き抜きが今年3月にあった。
 衆院新潟2区の鷲尾英一郎氏だ。
 細野氏や長島氏はもともと保守志向で、連合とは距離があった。
 他方、鷲尾氏は選挙区に東京電力柏崎刈羽原子力発電所があり、電力総連と二人三脚で選挙を戦ってきた。
 知事選での自民党候補支援にも当然かんでいた。

 これをきっかけに、電力総連に支えられている各地の野党議員が雪崩を打って自民党入りするのではないか。
 鷲尾氏はそのオルグ役を務めているのではないか。
 与野党は動向を注視している。
 9月には東北電力のお膝元の宮城県選出の桜井充参院議員が国民民主党を離党した。
 自民党入りも選択肢という趣旨の発言もしている。

 旧同盟系労組に支えられた国会議員らでつくる民社協会という集まりがある。
 旧民社党のOB会的な役割も担っていて、関係者に会うと往事の思い出話になることが多い。
 旧社会党とつくった1980年の連合政権構想、自民党と一緒に成立させた1992年の国連平和維持活動(PKO)協力法。
 そのとき、必ず出る愚痴がある。

「社公民のときも、自公民のときも公明党と一緒だった。なんで公明党が与党で、我々はずっと野党なのだろう」

 今年7月の参院選で自民党は議席を減らし、いわゆる改憲勢力は国民投票の発議に必要な3分の2を4議席、下回った。
 自民党は憲法改正に向けた個別の引き抜き工作と並行して、旧同盟系労組に支えられる国民民主党のまるごと取り込みも視野に入れている。
 影響力が低下しているとはいえ、700万人もの人がいる組織はそうそうない。

「安倍総理もオーケーしたんだ」

 先日、永田町で話題になった発言があった。
 しゃべったのは2017年に国会議員を退いた亀井静香氏。
 何をオーケーしたのかといえば、国民民主党との連立だ。
 発言の真偽を問われた玉木雄一郎代表は「政治は一寸先は闇であり光だ」とはぐらかした。
 安倍晋三首相と最終合意していたのかどうかはともかく、自民党との接触はあったのだろう。

 国民民主党は結局、次期衆院選を戦うには野党でいた方がよいと判断し、衆参両院で立憲民主党と統一会派を組む方を選んだ。
 ならば、連合も一体化の方向で進むのか。
 どうも答えはノーのようだ。
 永田町の情報通に聞くと、自民党と国民民主党が連立するソフトランディング型の政権入りを志向してきた旧同盟系労組はあてが外れ、じかに自民党と連携する方策を模索し始めているという。

 鉄鋼、造船重機、非鉄、建設などの産業別労組「基幹労連」が2016年に実施した組合員アンケートで支持政党を尋ねたら、自民党(23%)が当時の民進党(18%)を上回っていた。
 航空連合が2017年の衆院選の際、組合員にどの党に投票したのかを聞いたら、自民党が50%を超えた。
 第2の化学総連を出したくないならば、連合の神津里季生会長は安倍政権との距離を縮める方向に動かざるを得まい。
 だが、そうすれば今度は旧総評系は黙っていないだろう。
 右からぼろぼろと崩れていくのか、左から大分裂するのか。
 連合がいまのまま40年、50年と続いていく姿は想像できない。

 連合30周年に先立ち記者会見した神津会長はこれからの連合についてこう語った。

「右も左も広げて、幅広の道を真っすぐ行く。真ん中でいることが大切だ」

[写真-1]
「幅広の道を真っすぐ行く」と語る連合の神津里季生会長

[写真-2]
脱時間給の扱いを巡っては、組織内の足並みの乱れを露呈した

[写真-3]
大内啓伍民社党委員長(左)と田辺誠社会党委員長(右)の間に立つ山岸章連合会長(1992年当時)

日本経済新聞 Nikkei Views、2019/11/18 5:00
連合発足30年の岐路
労働組合が自民党を支持する日

(大石格、編集委員)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52151050U9A111C1I00000/

posted by fom_club at 19:26| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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