2019年10月23日

3.11振り返り

2011.3.19(土)
[大地震発生から1週間が過ぎて]
1.名称。
 地震の名称ですが、メディアは「東北・関東大地震」としたようです。個人的には、「3.11日本大地震」「M9.0日本大地震」のようは名称の方がよいように思います。
2.原子炉の事故。
 福島原子力発電所が地震によってどういう被害を受けたのか、きちんとまとめた報道はなされていないように思います。
・ その場所の震度はいくつだったのか? その震度の揺れによって、原子力発電所の施設は、どういう被害を受け、どういう対応ができたのか?
・ 地震直後の津波は、原子力発電所のどこまで侵入したのか? またその侵入によって原子力発電所の施設・設備がどういう被害を受けたのか?
・ まとめて、地震と津波によって、原子力発電所の1号機、2号機、3号機、4号機、5号機、6号機その他の施設・設備はどういう状況に置かれたのか? そして全体としての被害の評価は?
 以上がきちんと報道されていないように思います。
3.現状
 現状を把握するためのデータにはどういうものがあるのか? モニタリング機能は、電源がないなかで、どこまで生きているのか?
4.終息
 どういう出口戦略をもっていま行動しているのか?
 たとえば、東北電力からの電力線の引き込みがうまくいったとして、その後は、どういう対応になるのか? 期間はどのくらい?
 最悪の事態があった場合、どういう処置が行われるのか? 住民のEvacuation はどの範囲になるのか、どのくらいの期間になるのか?
 以上、最善と最悪のふたつの場合だけあげましたが、その中間に多くの段階があるでしょう。あまり複雑にする必要はないでしょうが、3,4,5通りに分けて、きちんとした出口戦略の見通しが説明されるべきでしょう。

2011.3.25(金)
[こういうときには雑誌メディアを]
 被害の実態も事故の実態も簡単にはつかめない。報道が局所的になるのは仕方がないとはいえ、全体として物事を捉える視点が背後になければなりません。
 その全体に迫るためには、活字メディアの方がふさわしい。家事のあいまに、2冊の週刊誌を買ってきて読みました。『週刊東洋経済』(2011年3月26日号)と『週刊文春』(2011年3月31日号)です。
『週刊文春』は、特集が「御用メディアが絶対に報じない東京電力の「大罪」」。
 東電の基本的な問題点は、多くの人に見えていると思います。原子力は、巨大利権です。電力会社、原子炉製造会社、政府と関係官庁(とくに経済産業省)、御用学者にマスメデア。利権を分けあっているところは、仲良くします(癒着)。
 福島の原子力発電所が、今回の地震・津波以前にも、トラブル続きだったことが明らかにされています。140頁。
 1998年12月、第1原発高温焼却炉の建家にある低レベル放射性廃棄物ドラム缶炎上。 
 1999年1月、第2原発の廃棄物処理建家から出火。
 2002年8月以降、原子炉に関するデータの改竄。
 2010年6月17日、第1原発の2号機、電源喪失、水位低下発生。(15分間停電)。(24頁)

 24頁では、共産党議員(京都大学原子工学科出身の吉井英勝代議士)の質問が紹介されています。
 非常用ディーゼル発電器が3系統準備されているから安全だという政府・東電に対して、4系列の非常用ディーゼル発電機が備えられていたスウェーデンの原発が事故で2系統が止まるとその影響で残りの2系統も止まった事例をあげ、そうした場合どうするのか?質問したそうです。 
 個人的には、今回の事故で非常用ディーゼル発電機が3系列失われ、非常用電源が失われたということにびっくりしました。何と言っても原子力です。人間が手をつけるべきだったかどうかが問題になるぐらいやっかいなものです。3重、4重に対策がとられているものだとばかり思っていました。想定していなかった津波でディーゼル発電機3系列が同時に失われて、それで終わり、という事態はほんとうにびっくりです。すくなくともディーゼル発電機3系列が動かなくなったときに備えて、別種の非常用電源があるのだとばかり思っていました。

→ 2011.3.26
 ウェブで検索をかけていて、ウォールストリートジャーナルに「過去にもトラブル続きだった福島第1原発」(2011年3月22日)があることを見出しました。
 原子力の専門家による記事ではなく、ジャーナリストによるものですが、ソースの明示と分析があります。ソースは、「原子力安全基盤機構に提出された事故報告書」です。分析結果は、「データが入手可能な2005年〜2009年の5年間」で福島第一原発の事故率が大規模原発のなかでは一番高かったとしています。
「福島の3号機はプルサーマル」(2011/3/22)には、プルサーマルが日本語(和製英語)であること、3号機ではそのプルサーマル燃料すなわちMOXが使われていること(全体の548個のうち32個)も記されています。
 この記事を読んではじめて、テレビで見る福島原発の模型や模式図で不思議に感じていた点が解明されました。
 燃料プールの様子が腑に落ちませんでした。実は妻にもこの点を質問され、水の中から水のなかへ空気中に出すことなく移せるからいいんじゃないと答えましたが、自分自身で納得はできていませんでした。ウォールストリートジャーナルの記者に敬意を表してそのまま引用します。

「4号機で起きたことは、定期検査時の停止中に原子炉内のすべての燃料をプールに移送する「全炉心取り出し」という、日本で広く行われている慣行の危険性を露呈した。」

[災害緊急事態]
 福島の原発に関しては、緊急事態が宣言されています。しかし、今回の地震・津波に関しては、「災害緊急事態」宣言(布告)がなされていません。「計画停電」という名の「無計画停電」が終了するまで、東電は国の直接の支配下に置くのがよいと思いますが、そうした措置はなされていません。今回の震災で「災害緊急事態」を宣言しないで、いつするのでしょうか?
 22日午前の参議院予算委員会で、このことを質問した議員がいますが、「内閣府の小滝晃参事官はこうした措置の実施要件を同法が「国会閉会中」と定めていると指摘し」たとあります。
 災害対策基本法105条は次のようにあります。
「第105条 非常災害が発生し、かつ、当該災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合において、当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、閣議にかけて、関係地域の全部又は一部について災害緊急事態の布告を発することができる」

 そして、第106条に次のようにあります。
 「(国会の承認及び布告の廃止)
第106条 内閣総理大臣は、前条の規定により災害緊急事態の布告を発したときは、これを発した日から20日以内に国会に付議して、その布告を発したことについて承認を求めなければならない。ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合は、その後最初に召集される国会において、すみやかに、その承認を求めなければならない」
 閣議で決し、国会の承認を求めなければならない、とありますが、「国会閉会中」なんてことは定めていません。とても不思議です。
 このあたりのことがわかる方がいらしたら是非お教えください。

2011.3.28(月)
 日本の原子力政策史の第1人者は、九大の吉岡斉氏だと思われます。今回の事故に関する吉岡氏の見解を知ろうと思い、ネットで検索をかけてみました。地元(福岡)のテレビでは話をされているようです(直接関係はしませんが、副学長となられているようです)。しかし、放送媒体でも活字媒体でも直接的なものを見つけることはできませんでした。
 MLでヘルプを求めると、田中氏が、東京新聞2011年3月18日夕刊の記事「「福島原発震災」をどう見るか」を送ってくれました。
「東京電力や経済産業省原子力安全・保安院でさえ、真相を把握していないだろう。原発事故の真相をつかむには、わずかのモニター装置からの情報では不十分なのである。」とあります。そうだと思われます。データの隠蔽と言うよりも、彼ら自身把握できていないと見るべきでしょう(隠蔽体質がないとも、今回隠蔽がないというわけではありません。下に見るように事故データの改竄さえも行っています)。

→河野氏が朝日新聞3月25日付「オピニオン」を送ってくれました。「原発賠償 国は負担するな」と題します。結論部分だけ引用します。
「原発は、事故や災害が起きれば多数基が一度にダウンし、運転再開までに時間がかかるので、電力供給不安定を招きやすい。その可能性は前々から指摘されてきたのに、原発を作り続けてきた責任は重大だ。・・・天災によるやむをえない面はあるが、本質的にエネルギー政策の誤りであり、電力会社の誤りでもある」
 ウェブの資料としては、「東京電力原子炉損傷隠し事件」2002.9.20 があります。今回の事故の前提条件として意味のある情報を含んでいます。
 ほかにもいくつかあります。

2011.3.31(木)
[計画停電をやめさせよう」
 ウェブではもう有名人だと思われますが、現役の国会議員でただひとり、原子力工学の専門家(京大の工学部原子核工学科出身)がいます。共産党の吉井英勝議員です。「日本共産党 吉井英勝オフィシャルホームページ」というサイトがあるので読んでみました。
 「福島原発事故や「計画停電」、ガソリン・灯油の需給状況などに関して」「基礎的な資料を公表させるべきだ」と求めたとあります。政府はすぐに基礎データを提供する、あるいは提供させるべきです。具体的には、
「1) 原発の破損状況や情報収集衛星の撮像データ、
 2) 原子力安全委員会による放射性物質拡散状況の試算データ、
 3) 東京電力の発電設備出力など計画停電の是非を検証する根拠データ」などです。
 大学が昨日開いた説明会では、夏場には(計画されていない)広域停電がありうるという前提で話を進めていましたが、大きな違和感を感じました。(危機が続く間は)そういうことにならないように、民間の協力を得つつ、政府がきちんと管理すべきだと思います。
 今東電が行っている「計画停電」は、総理の了承があるので、違法行為ではないでしょうが、不法行為に近いと私には感じられます。基礎データを公開して、どういう工夫がありえるかを討議すべきです。そして、仮に、どうしても「計画停電」が必要だとなった場合でも、特定の地域に負担を押しつけるのではなく、(政府機関や医療機関等はずすべきところははずして、あるいは十分なバックアップを準備して)きちんと計画的に遂行すべきです。直前まで実施するのかしないのかわからないというのは最悪の選択です。
 東電の担当者(たぶんチームでしょう)が何を考えているのかまったく不思議です。官邸がこういうでたらめを放置しているのも不思議でなりません。
 ウェブで検索をかけてみると、河野太郎氏の公式サイトに「自民党有志と環境エネルギー政策研究所(ISEP)の勉強会」の結論として、「無計画停電は必要ない」と断言されています。
 非常事態です。党議拘束をはずし、協力すべきだと思います。  
 マスメディアが「環境エネルギー政策研究所」の出したレポートを取り上げないのがほんとうに不思議です。
 河野氏の見解を引用しておきましょう。
「経産省と東京電力は、需給調整契約の内容や発動状況などの情報を意図的に隠蔽しているが、もはや電力需給に関しては、東電に任せておける状況ではなく、政府が対処すべき問題である」
 契約内容が公表されていない以上、推測しかできませんが、契約内容に不都合な点があると考えざるを得ません。
 現役の国会議員がはっきりと指摘しているのに、大手のメディアが取り上げないのは責任問題だとさえ言えるでしょう。

2011.4.5(火)
 昨日届いた『科学史研究』(2011年春号)ですが、タイムリーな記事が載っています。吉岡斉「原子力政策の事例分析」pp.47-49です。 
 シンポジウム「科学技術政策は変わるか―政権交代記の科学技術史―」のひとつとして掲載されているので、短いのですが、日本の原子力政策史の第一人者の手になるまとめです。非常に的確な指摘がなされていると思います。

「今までの日本の原子力政策は「国家安全保障のための原子力」の公理のもとで進められてきた。・・・日本は核武装を控えるが、核武装のための技術的・産業的な潜在力を保持するために、あらゆる種類の機微核技術 SNT (Sensitive Nuclear Technology) ―核兵器開発への転用効果の高い一連の技術、ウラン濃縮、核燃料再処理、高速増殖炉などを代表格とする―を開発・保有し、それを日本の安全保障政策の不可欠の部分とすることである」p.47

 これが日本の原子力政策の根本的前提です。この前提のもと、「利権を有するステークホルダー―所轄省庁、電力業界、政治家、地方自治体有力者の四者を主な構成員とする。これにメーカー、原子力関係研究者を加えた六者としてもよい―の間でのインサイダー利害調整のもとづく合意にしたがって、原子力政策が決定されてきた」p.47

核の四面体構造」と呼ぶそうです。

 ウェブに次の資料があります。
 原子力安全基盤調査研究「日本人の安全観」(2002(平成14)年度〜平成16年度)報告書
 Research Survey Report of Nuclear Energy Safety "Japanese Safety Views" (2001-2003), Funded by the Japan Nuclear Energy Safety Organization,
 東洋大学、2005年3月、第3章が「「原子力の安全観」に関する社会心理学的分析―原子力安全神話の形成と崩壊―」です。科学技術史的には甘いところが散見されますが、それ自体非常に興味深い論点を提示してくれています。執筆者は、関谷直也氏(東京大学情報学環)です。
 個人的には、「日本人の核アレルギー」というのは神話ではないかと思っていましたが、その点がほぼ裏付けられました。

吉本秀之(東京外国語大学教授、科学思想史)
原子力と検閲、2011-2015
http://hyoshimoto.html.xdomain.jp/Nuclear.html

posted by fom_club at 08:48| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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