2019年10月22日

即位礼正殿の儀とキリスト教各教派

 2019年10月22日に天皇代替わりに伴う「即位礼正殿の儀」が行われるのを前に、日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会は21日、東京・西早稲田の日本キリスト教会館で、公費を投じて行われる天皇代替わりの諸儀式に抗議する記者会見を開催した。

 会見には、カトリック教会の岡田武夫名誉大司教(前東京大司教)、NCCの金性済(キム・ソンジェ)総幹事、日本福音同盟(JEA)の上中栄社会委員長(日本ホーリネス教団旗の台キリスト教会牧師)が出席。
 それぞれの教会や団体ですでに発表している声明などを読み上げ、宗教色のある諸儀式が国事行為などの公的行事として行われることは、政教分離の原則に反する憲法違反だと訴えた。

 カトリック教会は昨年2018年2月、日本の全司教で構成される日本カトリック司教協議会が、「天皇の退位と即位に際しての政教分離に関する要望書」を発表(*1)。
 NCCは今月10月9日に、「天皇代替わりに関する日本キリスト教協議会(NCC)2019年宣言」を、JEAは今年2019年8月に、社会委員会が「天皇代替わりに際しての日本福音同盟(JEA)社会委員会声明」を発表している。
 いずれも、天皇代替わりに伴う諸儀式、特に来月11月に行なわれる「大嘗祭(だいじょうさい)」は宗教的要素が色濃く、これに公費を用いることは政教分離の原則に明確に反すると訴えている。
 またいずれも、日本がかつて天皇を中心とした国家神道の下で戦争を推し進めた歴史にも触れ、そうした歴史への反省もつづっている。

 岡田氏は会見で、「一般の神道を排斥することはないが、国家神道の伝統を引く大嘗祭を国家が行うことは、(信教の自由と政教分離の原則を定めた)憲法20条に違反する」と指摘。
 金氏は、「明治憲法でも信教の自由を認めていたが、それは国家の安寧秩序を妨げない範囲でという条件付きだった。この条件により、戦時下の信教の自由は換骨奪胎され、(プロテスタント教会では)国家神道が『国民儀礼』という形で強制されていった」と主張。
 皇室行事の公的化は国家神道の復活の兆しだとし、危機感をあらわにした。
 上中氏は、キリスト教界も一枚岩ではなく、さまざまな立場の人がいると述べる一方、「天皇が好きか嫌いかとか、政治的な立場の問題ではなく、天皇代替わりに関する宗教的行事に政府が関与していることを問題視している」と述べ、何を問題として訴えているのかを説明した。

 3人はそれぞれの立場を表明した後、記者団からの質問に応じた。

「『神道は習俗だから政教分離の例外』『米国の大統領も就任時には聖書に手を置いて宣誓する』といった批判の声もある。キリスト教徒以外の日本人にとって、政教分離を守る重要性とは何か」

 この質問に金氏はまず、天皇代替わりに関する諸儀式は習俗ではなく、立派な宗教行事であることを見抜く必要があると指摘。
 日本には、周囲の「空気」に合わせて動かねばならないという同調圧力の強い社会風土があり、公的化した宗教行事を拒めば社会的な制裁を受けかねないと危惧した。
 その上で、「政教分離の原則は、人が人として認められ、多様性を認め合って生きていくための非常に大切な原理」と、その重要性を語った。

 上中氏は米国の大統領が就任時、聖書に手を置いて宣誓することについて、「聖書に手を置くこと自体が悪いのではなく、権力者が宗教的権威を行使することに対しての政教分離」と説明。
「国が宗教に口出ししてはいけないが、キリスト教や仏教、神道などの宗教が政治に関わることは何ら悪いことではない。しかし、公権力がそれらの(宗教的な)力を使って国民に働き掛けようとするとき、それを阻止するのが政教分離の原則」と述べた。
 また「神道は習俗」という考えに対しては、「神道側よりもむしろ政府側がそのように主張してきたと思う。それなのに、それを日本の文化のように捉える方がおかしいと思う」と語った。

 この他、記者会見を主催したNCC靖国神社問題委員会の星出卓也委員長(日本長老教会西武柳沢キリスト教会牧師)は、「信教の自由のみならず、思想・良心の自由は多数決になじまないもの」と指摘。
 多くが多数決で決められる社会にあって、こうした自由を守っていく必要性を示した。

 一方、国が天皇代替わりの諸行事に関与することへの懸念は、昭和から平成に変わった30年前もあったが、こうした動きは以前に比べると温度差があるという。

 岡田氏は冒頭、「昭和から平成に移るときには、カトリック教会でも熱心に議論しました。今回は熱意があまり感じられないのが残念」とコメント。
 NCC靖国神社問題委も4月から署名活動を行っているが、10月中旬までに集まったのは約4千筆で、30年前に比べると多くはないという。

 これについて金氏は、30年前と現在では経済的、社会的な状況が大きく異なるとし、「今は多くの人が非常に社会的に不安の中にある。社会的風潮と無関係ではないと考えている」とコメント。
 岡田氏もこの意見に同調し、「今は余裕がない。自分の生存や明日のことに不安を持っている人が多く、重大な問題に取り組むのが難しいのでは」と語った。
 また星出氏は、「戦後74年がたち、戦争を痛いほど経験した人たちが亡くなっている。過去の記憶の継承がうまくなされなかった日本の問題もあるのでは」と話した。

 NCC靖国神社問題委は、大嘗祭を前にした来月11月11日には、午後6時半からお茶の水クリスチャン・センター(東京都千代田区)で、憲法学が専門の横田耕一・九州大学名誉教授を招き、「天皇代替わりにみる天皇教の残存」をテーマにした集会(参加費500円)を開催する。
 また、翌12日には集めた署名を内閣府に提出する計画だ。


[写真]
右から、カトリック教会の岡田武夫名誉大司教、日本キリスト教協議会(NCC)の金性済(キム・ソンジェ)総幹事、日本福音同盟(JEA)の上中栄社会委員長=21日、日本キリスト教会館(東京都新宿区)で

Christian Today、2019年10月21日23時19分
天皇の即位儀式への国の関与は違憲
カトリック、NCC、JEAの代表者が記者会見

https://www.christiantoday.co.jp/articles/27313/20191021/catholic-ncc-jea-press-conference.htm

(*1)天皇の退位と即位に際しての政教分離に関する要望書
内閣総理大臣
安倍 晋三 様
 2019年4月30日に今上天皇が退位され、翌5月1日に新天皇が即位されます。
 前回の天皇逝去と即位に際しては、皇室の私的宗教行事である大嘗祭を「宗教色はあるが公的性格をもつ皇室行事である」として、それに国費を支出し、三権の長が出席しました。また国事行為である即位の礼にも宗教的伝統を導入しました。これらは日本国憲法の政教分離原則にそぐわないと考えます。
 そして昨日の報道によると、今回の大嘗祭においても前回を踏襲する方針が示されました。私たちはそれを大変遺憾に思います。 
 日本国憲法の政教分離(憲法第20条)の原則は、日本がかつて天皇を中心とした国家神道のもとで戦争を行い、アジアの人々をはじめ世界の多くの人々の人権と平和を侵害した歴史への反省から生まれたものです。この不幸な歴史を決して忘れず、同じ轍を踏まないようにする責任を日本政府は負っています。
 そのために、私たちは次のとおり要望いたします。
 「天皇の退位と即位に関する一連の行事にあたって、日本国憲法が定める政教分離原則を厳守し、国事行為と皇室の私的宗教行事である皇室祭祀の区別を明確にすること」

CBCJL18-17
2018 年2月22日
日本カトリック司教協議会


(*2)
https://www.facebook.com/nccinjapan/photos/a.2196841633885563/2560211330881923/?type=3&theater

 今日10月22日は、天皇の即位を公に宣明する「即位礼正殿の儀(そくいれいせいでんのぎ)」などが行われます。
 ローマ教皇庁(バチカン)からはフランチェスコ・モンテリージ枢機卿(85)が派遣されるなど、195ヶ国から国家元首や祝賀使節が参列します。

 一方、キリスト教各教派からは、こうした宗教儀式を伴うことを国事行為として行うのは憲法20条(信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない)や89条(公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない)に違反するとして抗議の声明を発表しています。


[写真-1]
フランチェスコ・モンテリージ枢機卿

[写真-2]
1990年11月12日に行われた即位礼正殿の儀

Christian Press、2019年10月22日
10月22日は即位礼正殿の儀の行われる日
雜賀信行(さいか・のぶゆき)カトリック八王子教会員
https://www.christianpress.jp/october-22-enthronement-ceremony/

posted by fom_club at 15:48| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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