2019年10月13日

ホームレスの命は「尊い人命」に数えられていないの?

 全国各地に甚大な被害をもたらした台風第19号。
 東京都内でも各地に避難所や自主避難施設が開設され、多くの人が避難した。
 そんななか、台東区では「ホームレス」と呼ばれる路上で生活する人びとが、避難所での受け入れを拒否される事例があった。

 10月12日午後、強まる雨を受けて、路上生活者支援などを行う団体「あじいる」は、上野駅周辺の野宿者らにタオルと非常食、避難所の地図を配った。
 同団体の中村光男さんはこう話す。

「かなり雨も強まってきて、テレビやラジオでは不要不急の外出を控えるよう頻繁に呼び掛けている。路上で過ごしている人の様子が心配でした」

 中村さんらは台東区立忍岡小学校で職員が避難所開設準備を進めていることを確認し、路上生活者のもとを回ったという。
 しかし、非常食や地図を配り終えようかというところで、「住民票がないから避難を断られた」という路上生活者の男性に出会った。

 災害対策本部に問い合わせたところ、
「路上生活者は避難所を利用できないことを対策本部で決定している」
との返答だったという。
 中村さんらは、再度、路上生活者のもとを回って事情を説明し、謝罪した。

「なかには、私たちから地図をもらって避難所へ行ったけれど、断られたという人もいました。ぐしょぬれになりながら避難所へ行って断られ、また戻ってきた人たちもいます。私たちや行政に嫌みを言うこともなく、諦めているような様子でした」

 台東区では12日、自宅での避難が不安な区民のための避難所を4ヶ所、外国人旅行者などを念頭に置いた帰宅困難者向けの緊急滞在施設を2ヶ所に開設した。

 避難所では氏名・住所などの避難者カードへの記入を求め、「住民票がない」と答えた路上生活者の受け入れを拒否したという。

「避難所に詰めている職員から災害対策本部に対応の問い合わせがあり、災害対策本部の事務局として、区民が対象ということでお断りを決めました」
(台東区広報担当)

 台東区は、
「差別ではなく住所不定者という観点が抜けていた。対策の不備」
と強調するが、避難所を訪れた路上生活者の受け入れを拒否する際に、旅行者向けの緊急滞在施設を案内することもなかった。
 さらに、風雨が強まり、警戒レベルが「避難準備・高齢者等避難開始」に引き上げられても区は対応を変えなかった。

 あじいるの中村さんはこう憤る。

「避難所の窓口で慣行として断られたというのならまだわかる。ただ、災害対策本部の事務局として対応を検討し、拒否を決めたとなると行政が命を軽んじているとも言え、あり方としては深刻です」

 災害法制などに詳しい弁護士の津久井進さんによると、人道的な観点から問題があることはもちろん、台東区の対応は法が定めた原則からも大きく逸脱しているという。

「災害救助法では、事務取扱要領で現在地救助の原則を定めています。住民ではなくても、その人がいる現在地の自治体が対応するのが大原則。また、人命最優先を定めた災害対策基本法にも違反する。あり得ない対応です」

 ほかの区はどの様に対応したのだろうか。
 例えば渋谷区は、
「原則として区民の方が避難する場として開設している」
としながらも、
「人命にかかわる事態で、拒否することはない」
という。
 今回の台風でも、避難者名簿へ住所の記入がない人がいたが、区民と同じように受け入れた。

 平成30年1月の調査によると、東京都内の路上生活者は1242人。
 首都直下地震が起きれば、さらに多くの路上生活者が避難所を訪れることも考えられる。

 津久井弁護士はこう懸念する。

「災害対策が進んでいると自負していた東京都でさえ、基本原則が理解されていない現場があることが露呈した。法律の趣旨原則に通じていない自治体が次なる大災害に対処できるのか、極めて強い不安を覚えます。同時に、法律が複雑なうえ、災害救助法は昭和22年に制定された古い法律です。国も、さらなる法整備を進める必要があるでしょう」

※ AERAオンライン限定記事


AERA dot.、2019/10/13 13:40
[台風19号]
「人命」より「住民票」?
ホームレス避難所拒否で見えた自治体の大きな課題

(文/編集部・川口 穣)
https://dot.asahi.com/aera/2019101300012.html

台東区のホームレスの人の避難所受け入れ拒否問題を考える

 台風19号が日本列島を通過しました。
 各地で河川の氾濫をはじめ、甚大な被害をもたらしています。
 被災された方に心からのお見舞いを申し上げるとともに、各地での早期の復興を願うばかりです。

 台風などの接近が予報されると、ホームレスの人への支援や生活困窮者への支援をおこなっている多くの団体や個人は、物資を提供したり、必要な情報を伝えたりなど、なんとか被害を受けずに乗り切れるようにと尽力します。

 実際に、今回の台風19号の接近にあたっても、多くの団体や個人が、支援している人に訪問したり、SNS等で情報をひろめたり、路上や公園、駅や河川敷で寝泊まりしている人に声をかけて、避難や対策を呼びかけていました。

 災害においては、その人がどこに住んでいるか、お金があるのかないのか、などに関わらず、命を守るという観点から支援がなされるべきなのではないかと思います。

 そんななか、台東区などのエリアでホームレスの人を支援している一般社団法人「あじいる」が、「ホームレスの人が台東区の避難所で受け入れを拒否された」とブログやSNSで報告しました。
(東京の台東区は上野や浅草があるエリアでホームレスの人や生活困窮者が比較的多く住む地域です)

一般社団法人 あじいる(フードバンク+隅田川医療相談会)@agile_2019 [拡散希望]
 台東区長が本部長の台東区災害対策本部に問い合わせると、「今後避難準備・避難勧告が出る可能性があるが、ホームレス(住所不定者)については、避難所は利用できないことを対策本部で決定済み」と言われました。
 事実上、台東区の災害対策は、ホームレスを排除しています。#台風19号
17:15 - 2019年10月12日
 現場の区の職員の方々は、住所の無い人は利用させないようにという命令を受けていました。
 そこで、その場で台東区長が本部長となる台東区災害対策本部に問い合わせをしました。
 台東区で野宿をしている人々は避難所を利用できないという規則が本当にあるのか尋ねたところ、「台東区として、ホームレスの避難所利用は断るという決定がなされている」と、明確な返答でした。
(出典:災害時における台東区の野宿者への対応)

 都内でホームレスの支援をしている人などの報告によれば、他の区ではホームレスの人(住所不定の人)でも避難所で受け入れ拒否などにはあわなかったところもあると言います。

 この件について、台東区の対応がどのようなものだったのかを確認するべく、本日(10月13日)、台東区危機災害対策課に連絡し、下記の回答をもらいました(この内容で記事に記載することを台東区危機災害対策課に確認済みです)。

―― 事実関係を教えてください


 今回の台風19号に関しての自主避難所において、来た人には受付で避難者カードを書いてもらっていたが、その避難者カードには住所を記載する欄があった。
 住所が書けない人がいて(住所がない人)、現地の職員が対応がわからず(住所がない人にどう対応するのかのマニュアルなし)、災害本部に確認の連絡があり、災害本部として「住所がない人は受けられない」と回答したところ、現地職員がその回答をその人に伝え、その回答を聞いて、その人は帰ってしまった。


――「住所がない人を受けられない」という回答により避難所に入ることができなかった人は何人いましたか?

 現在、把握できているのはお二人。二人でご一緒に避難所にいらっしゃいました。

―― 災害などにおいては、その区の住人のみならず他区に住んでいる「帰宅困難者」などの人も避難所に避難してくる可能性があると思うが、台東区の住民以外は受け入れられないのか

「帰宅困難者」には、専用の場所を用意していてそちらにご案内するという対応をとっていたが、住所がない方、ホームレスの人については想定がなかった。

―― 台東区はホームレスの人やネットカフェなどで生活する人など、住まいを持たない人が多く住む地域だと思うが、そういう状況の人が避難してくることを想定していなかったのか

 さまざまなご批判やご指摘をすでにたくさんいただいているが、住所不定の人の避難所への避難という視点がなかった。

―― 今後は台東区としてどのような対応をしていくのか

 今後は他自治体の事例を参考に、住所不定の人が適切に避難所を利用できるように検討していきたい。

****

 台東区からは以上のような回答をもらいました。
 今後は対応を改善するとのことではありますが、「想定していなかった」という理由で結果的に「排除」していた、というのは衝撃的でもあります。

 上記の台東区からの回答を受け、上述した「あじいる」の今川篤子代表にも話を聴きました。
 今川さんは医師でもあり、台東区や山谷地域周辺でホームレスの人や生活困窮者への医療支援などの活動をしている人です。

 実際に昨日(12日)に、台東区の避難所におもむき避難所でホームレスの人への受け入れ拒否について職員とやりとりをした一人であり、今朝(13日)も上野近辺などのホームレスの人たちに話を聞きに行っていました。

―― 今朝(13日)も上野近辺を回ってホームレスの人たちに様子を聞いていたとききました。


 今朝、お話しした人のなかで、ある人(ホームレスの人)は、台東区が用意した観光客(日本人含む)の人が避難できる避難所に行ったところ「ここは観光客用だからダメだ」と断られた、と話していました。
 私が実際に行った避難所だけでなく、区内の同様な場所で同じようなことが起こっていたのかも知れません。


―― 台東区は僕には「住所不定の人の避難を想定していなかった」と話していました。

 実際に避難所で現地の職員だけではなく、災害対策本部(本部長は区長)にも確認してもらって話をしましたが、そこでは、「ホームレスの人は受け入れられない、ということを台東区として決定している」と言っていました。
「想定していない」ではなく、台東区としてホームレスの方を受け入れないことを「台東区として決定している」でした。
 なので、大きく食い違います。
「ホームレスの方を受け入れない」は明確な差別なのではないでしょうか。
 それに、「命を守る行動を」と言っている時に、ホームレスの人はダメ、というのはおかしいのではないでしょうか。


―― 高齢の方や病気や障がいを持つ人など、災害の際には、被害を受けやすい、もしくは避難しにくいなど、配慮が必要だ、とも言われます。住まいがない、お金がない、少ない、などもむしろ最も避難や支援を必要とする状況だと思うのですが

 その通りです。
 住まいがない、所持金が少ないなどもそうですし、そうした人のなかには高齢の人や病気や障がいをもつ人もいます。
 ふだんは元気でも体調を崩す人もいますし、不安を感じる人もいます。
 そういう状況の人が困って避難をしてきたのに、結果的に追い返してしまったというのは、行政としてあるまじきことだと思います。

―― 台東区の対応の背景にはどのようなものがあると思いますか

 台東区はホームレスの人や生活困窮者などが都内の他の地域に比べたら多い地域だと思います。
 そして、行政が見る「ホームレスの人」への目は冷たい。
「ホームレスの方は受け入れない」というのは差別だと思います。
「差別」して「排除」しています。
 この姿勢が変わらないといけないと思います。


****

 SNS上では、「ホームレスの人を受け入れないのはひどい」「人権侵害だ」という意見だけでなく、悲しいことに、「ホームレスの人を避難所に入れたくない」などの意見も見られます。
 後者の意見がマジョリティだとは思いませんが、こういった意見がでること自体が、社会のなかにある「差別」を如実にあらわしていると言えます。

 日本は自然災害が多い地域だと言われます。
 住まいがない、お金がない、少ないなどの状況で被害にあうと、甚大なダメージを受けてしまう可能性があります。
 被害を受けないように、ダメージを少なくするために避難や支援をおこなうことは一人ひとりのいのちを支えるという観点からとても重要なことです。

 台東区は今後について「住所不定の人が適切に避難所を利用できるように検討していきたい」としていますが、今回のような「受け入れ拒否」のようなことが起こる前に、どうして何も対応できなかったのか、しなかったのか、その責任は重いでしょう。

 そして、今回は、実際に避難所におもむいた野宿の方がいて、その人たちを日常的に支援したり関わっていたりする人がいたので、明らかになりました。

 明らかになっていないだけで、こういった災害からの避難という文脈で、ほかの自治体で同様のことが起こっていない、とは言えません。

「住民じゃないと利用できない」などは言語道断ですし、どんな状況でも「いのち」に優劣はつけられません。
 避難にきた人を追い返して、その人が避難できずに被害をうけたらどうするのでしょうか。
 困難な状況にある人を支援しない公的機関などあっていいものなのでしょうか。

 各自治体での取り組みもそうですが、ホームレスの人への差別や排除の問題について、多くの人に関心をもってもらいたいと切に思います。


Yahoo!Japan News、2019/10/13(日) 15:30
台東区のホームレスの人の避難所受け入れ拒否問題を考える
大西連(認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長)
https://news.yahoo.co.jp/byline/ohnishiren/20191013-00146689/

災害時における台東区の野宿者への対応
台風19号対策において、台東区がホームレスの人々の自主避難所への受け入れを断ると決定した件について


 私たち一般社団法人「あじいる」は、本日にも東京上空を通過し甚大な被害が懸念されている台風19号に際し、野宿の仲間たちの身の安全確保を呼びかけるため、上野駅周辺に出かけました。
 
 不要不急の外出は控えるようにとテレビやラジオが連呼する、都市を襲う未曽有の台風を迎え、外で過ごさなければならない仲間のことを、私たちはみな心配していました。

 台東区のホームページを見てみますと、台東区の災害対策本部のサイトには、
−−−−−–
自主避難所の開設について:
 雨風が強まってからの外出は大変危険です。不要な外出は避け、原則として自宅で避難し、窓から離れた場所で過ごすなど、身を守る行動をとってください。
 自宅での避難が不安な方のために、以下のとおり自主避難所を開設します。
 自主避難所へ避難する方は、食料などの身の回りの物を持参してください。
 なお、水と毛布は区で準備します。

自主避難場所
(1) 台東一丁目区民館 台東1丁目25番5号
(2) 馬道区民館 浅草4丁目48番1号
(3) 谷中小学校 谷中2丁目9番16号
(4) 忍岡小学校 池之端2丁目1番22号

避難を希望される方は、風雨が強くなる前に避難してください。
−−−−−–
とあります。

 仲間たちを回る前に、忍岡小学校に様子を見に行きました。
 台東区の職員の方が4人、待機されていました。
 上野駅から一番近い避難所であることを確認し、上野駅周辺と文化会館周辺に向かいました。

 乾パンやタオルと一緒に、忍岡小学校の場所を示す地図のチラシを配り、避難を呼びかけました。

 みなさんのところを回り、あと数人というときに、一人の男性が「その小学校に、行ったけど、自分は●●に住民票があるから断られた」と消沈して教えてくださいました。

 告知には、住民票についての情報など書かれていませんでした。
「身の安全の確保を求めて避難所に行ったのに断られるとは!」…信じられない思いでしたが、その方は仕方なさそうに「ダメだって…」とあきらめたような微笑を浮かべていらっしゃいました

 私たちは、確かめるために、もう一度、忍岡小学校に戻りました。
 現場の区の職員の方々は、住所の無い人は利用させないようにという命令を受けていました。
 そこで、その場で台東区長が本部長となる台東区災害対策本部に問い合わせをしました。
 台東区で野宿をしている人びとは避難所を利用できないという規則が本当にあるのか尋ねたところ、「台東区として、ホームレスの避難所利用は断るという決定がなされている」と、明確な返答でした。

 すぐに、チラシを配ったエリアに戻り、事情を説明して皆さんに謝りました。
 中には、「あのあと、すぐに小学校に行ってみたけど、断られた」とおっしゃった方もいました。
 ずぶぬれに濡れて、私たちの謝罪に「いいよ。ありがとう」と片手をあげて答えていたその姿が脳裏に焼き付いています。

 その後、再度台東区災害対策本部に問い合わせたところ、今後避難準備・避難勧告が出る可能性があるが、ホームレス(住所不定者)については、避難所は利用できないことを対策本部で決定していると言われました。
 事実上、台東区の災害対策は、ホームレスを排除していることになります。

 これだけ危険だ、人命を第一に、と叫ばれている大災害を前にして、ホームレスのみんなの命は「尊い人命」に数えられていないのですか?

 ホームレスで、住民票はないけれど、私たちと同じ場所に住む、上野の住人なのではないでしょうか?

 私たちは、台東区の信じられない決定に怒りを抑えかねていたけれど、片道30分以上も歩いて自主避難所の小学校に行って、断られてまた駅に帰ってこられた仲間は、私たちや行政に非難や嫌味をいうことはありませんでした。
 こんなひどいお天気、ぐしょぬれになって気持ち悪く、今夜どんな危険に合うかも分からない不安の中で、住民の安全を守るという避難所で受け入れてもらえなかった、その思いを、胸の内にぐっと仕舞いこんで、またいつものように静かに座っています。

 災害の時にこそ助け合い、ひとりの命も失われないようにしなければならず、しかも、生命はみな平等なはずです。
 台東区のこの対応は、命を差別しようとするものと思われてもしかたありません。

 私たちが体験した、この出来事を、多くの人と共有したいと思い、ご報告いたしました。

 今晩、仲間の命が無事であることを祈りつつ…

一般社団法人あじいる代表
今川篤子

https://sumidairyo.wordpress.com/2019/10/12/災害時における台東区の野宿者への対応/

 台東区は「住所不定」を理由に受け入れを断ったというが、災害救助法の原則は被災者の現在地での自治体が救助を行うというもの。
 台東区の行為は法の原則に反する。
 人権侵害。

1:37 - 2019年10月13日

posted by fom_club at 17:50| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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