2019年10月07日

日本の10代とグレタ・トゥンベリの違い

「よくも!」

国連本部で各国代表をそうにらみつけたグレタ・トゥンベリさん。
彼女への中傷や揶揄について東大名誉教授の上野千鶴子さんが語る。
AERA 2019年10月14日号に掲載された記事を紹介する。

*  *  *

「若者たちはあなたたちの裏切り行為に気づき始めている。全ての未来世代の目があなたたちに注がれている。もし私たちを失望させるなら、決して許さない。逃げおおせはさせない」

 9月23日。
 米ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットで、三つ編みをさげた少女は各国代表を前に怒った。
 目は潤んでいた。

 グレタ・トゥンベリさん。
 環境活動家。
 16歳。
 温暖化対策を促す運動を昨夏スウェーデンで始め、いまや地球環境の危機を訴える世界的な象徴になった。
 ノーベル平和賞の候補に推薦され、そのインスタグラムを730万人がフォローする。

「苦しんでいる人たちがいる。死に瀕している人たちがいる。生態系全体が破壊されている。大規模な絶滅が始まろうとしているのに、話すのは、お金のことばかり。永遠の経済成長というおとぎ話ばかり。よくも(How dare you)!」

「How dare you」を4回繰り返したスピーチは、日本のメディアでも大きく報道された。

 そもそもなぜ、トゥンベリさんは脚光を浴びたのか。

「気候のための学校ストライキ」

 昨年2018年8月、そう書いたプラカードを掲げ、トゥンベリさんはたった1人、ストックホルムの議会前に座り込んだ。
 3週間、学校を休んで、総選挙を前に温室効果ガスの削減を求めた。

 その後も毎週金曜日、学校を休んで抗議を続けた。
 この運動が「#FridaysForFuture(未来のための金曜日)」「#ClimateStrike(気候ストライキ)」のハッシュタグでSNSを通じて拡散。
 オーストラリアで、ドイツで、スイスで、カナダで、若者らが金曜日に授業のストライキを始めた。
 今年3月15日のストライキは130カ国以上、2000ヶ所以上に広がった。

 そして9月20〜27日、国連気候行動サミットの前後に、「グローバル気候ストライキ」として185カ国760万人以上が声をあげた。
 トゥンベリさんはその象徴として、会議で冒頭の演説をした。

 だが、トゥンベリさんには、批判、中傷、揶揄も繰り返されている。

「明るく素晴らしい未来を夢見る、とても幸せな少女のようだ。見られて、よかったよ!」

 ツイッターでトゥンベリさんを皮肉るコメントをしたトランプ米大統領。
 米国が寒波に見舞われた1月にはこんなツイートもしている。

「もっと寒くなるそうだ。外に数分といられないぞ。地球温暖化はどうなってる?」

 天気と気候の混同。
 欧米では「地球温暖化はでっち上げだ」などと、科学を否定する集団が一定の勢力を持つ。
 米国は、温暖化対策の国際ルール・パリ協定からの離脱を表明している。

 日本でもこんな発言が相次ぐ。

「16歳の考えに世界が振り回されたらダメだ」
 (橋下徹・元大阪市長)

「洗脳された子供」
 (作家の百田尚樹氏)

「お嬢ちゃまがやってることが間違ってる」
 (作家の竹田恒泰氏)

 ネット上で「小娘」「お姉ちゃん」と見下した表現や「彼氏紹介してやれ」といった侮辱がなされ、多くの「いいね」を集める。
 そんな日本の状況について、東京大学名誉教授の上野千鶴子さんはこう話す。

「女性、子どもの声を『無力化』『無効化』する対抗メッセージはいつでも登場します。それをやればやるほど、そういうことをやる人の権力性と品性のなさが暴露されるだけです」

 上野さんは4月の東大入学式の祝辞で、痛烈な性差別批判をした。
 祝辞では「しょせん女の子だから」と足を引っ張ることは「意欲の冷却効果」と説明し、ノーベル平和賞を受けたマララ・ユスフザイさんの父が「娘の翼を折らないようにしてきた」との発言を紹介した。

「同じメッセージを権威のある男性が言えば、聞かれるでしょうか? 繰り返されてきたメッセージに『またか』の反応があるだけでしょう。グレタさんのスピーチは、世界の要人が集まっても、いつまでたっても、何の進展もない現状に対するまともな怒りをぶつけたものです」

 上野さんはこうも指摘する。

「環境問題は『未来世代との連帯』と言われてきました、が、その『未来世代』は死者と同じく見えない、声のない人びとでした。その『未来世代』が当事者として人格を伴って登場したことに、世界は衝撃を受けたのでしょう」


※ AERA 2019年10月14日号より抜粋

[写真]
ニューヨークの国連本部であった気候行動サミットで、「How dare you!(よくも!)」と繰り返し、各国政府代表をにらみつけたグレタ・トゥンベリさん。16歳の言葉とその表情が、世界を揺らしている/9月23日

AERA dot.、2019.10.7 17:00
日本から「品性ない」発言も…
16歳の環境活動家めぐる中傷の声

(ライター・溝呂木佐季)

 トゥンベリさんをめぐっては、「大人に操られている」と勘ぐる発言もやまない。

「この運動の裏に誰がいるのかを知っている。治安当局から報告があった」と発言したベルギーに4人いる環境大臣の1人は、辞任。
 すぐに治安当局も否定している。

 これに対し、上野さんは「16歳といえば前近代では元服している年齢。判断力のあるりっぱな大人です」と話す。

「『大人が利用した』といえば、彼女を招いた国連が彼女を『利用した』のです。国連は核兵器禁止条約の協議の場に被爆者のサーロー節子さんを招くなど、当事者を上手に利用しています。国連外交の戦略の勝利というべきでしょう。文句を言うなら国連へ」

 トゥンベリさんはアスペルガー症候群、強迫性障害、場面緘黙(かんもく)症の診断を受けているとも公表している。
 これが、彼女をあげつらう人を勢いづかせる。

「精神的に病んでいる」

 米国のコメンテーターはテレビで何度も言い放った(後にテレビ局が謝罪)。
 高須克弥医師は「対人恐怖症と妄想が同居している」とツイートした。

 トゥンベリさんは、必要だと思うときしか話さない、という。
 嘘をつくのは上手でない。
 白か黒か。
 だから、生存を脅かす気候変動に対して何もしない大人たちに納得できず、うつ状態になった。
 人付き合いがあまり得意ではなかったから、既存の団体に入るのではなく、1人でストライキを始めた。

「『何もしない』ことが、どんな行動よりメッセージをよく伝えることがある。ささやきが叫び声より、響きわたるように」

「アスペルガー症候群は病気ではありません。才能です」

 フェイスブックにそう書く。

 それでも、トゥンベリさんのメッセージを受け止めず、論点をずらす人たち。
 上野さんは指摘する。

「誰もがちょっとずつ違います。アスペルガーの子たちは、診断名が登場する前には『ちょっと変わったユニークな子ども』にすぎませんでした。アスペルガーですが、それが何か? 誰が言おうと正論は正論でしょう」

 トゥンベリさんもツイッターで反論している。

「私を嫌う人たちは相変わらず元気です。私の見た目、服、態度、そして人と違うところを、攻撃してくる。あらゆる嘘や陰謀論を考え出す」

「なぜ大人は若者や子どもたちが科学を押し進めるのをバカにしたり、脅したりすることに時間を費やすのか、正直、理解できません」

「私たちに脅かされていると感じているのでしょう」

「でもこんな人たちに構って時間を無駄にしてはいけません」

 トゥンベリさんの気候危機への訴えは続く。
 サミットにはヨットで大西洋を横断して出席した。
 その後、50万人が集まったカナダ・モントリオールのデモに参加。
 今後はゆっくり南下し、チリ・サンティアゴを目指すという。
 毎週金曜日には各地のストライキに参加しながら。

 学校ストライキもデモ行進も、日本では欧米と比べると盛り上がりに欠ける。
 女性差別に声を上げたウィメンズ・マーチ(2017年)もそうだった。
 日本では、間違っていることに声を上げる、行動をすることで変化が生まれる、という考え方が根付かないのか。
 上野さんからはこんな答えが返ってきた。

「行動以前に日本の若者には政治やジェンダーや歴史についてきちんとした教育が与えられていません、つまり無知。アクションのもとは知です。子どもたちをこれほど無知蒙昧(もうまい)なままにしておく教育のもとで、次代を担う人材が出てくるでしょうか。お寒いかぎりです」


※ AERA 2019年10月14日号より抜粋

[写真]
今年4月、東大の入学式で「社会にはあからさまな性差別が横行している。東京大も残念ながら、例外ではない」などと祝辞を述べた上野千鶴子さん。トゥンベリさんへの批判や揶揄は「女性、子どもの声を『無力化』『無効化』する対抗メッセージだ」と指摘する

AERA dot.、2019.10.7 17:00
16歳の活動家の“正論”への中傷に上野千鶴子が「文句を言うなら国連へ」
(ライター・溝呂木佐季)
https://dot.asahi.com/aera/2019100700072.html

国連気候行動サミットでの怒りの演説が話題となっている16歳の環境活動家・グレタ・トゥンベリ氏。
前々日の9月21日、ユース気候サミットに登壇した彼女のファッションを、ファッションデザイナーのドン小西氏がチェックした。

*  *  *
 いやいや、言うこと言うこと正論すぎだろう。
 大人の事情でがんじがらめのあたしたちは、ぐうの音も出ないよな。
 ま、彼女の主張こそおとぎ話だって言う人もいるけどさ、気候変動のような大きな問題は、セクシーやクールより、彼女のようなピュアを武器に取り組まなくちゃいけないね。

 で、その格好を見てみると、世界中どこへ行っても見かける典型的な10代ファッション。
 ついさっきまでファストファッションの店に吊るされてたような服で、素材も作りも見事によくない。
 ただ、黄色だのピンクだのブルーだのチェックだの、若者らしい色や柄がちゃんとあるのが特徴だよ。

 かたや犬の散歩のついでに、日本の10代ファッションを観察してみると、多いのが白いシャツの前の裾だけベージュのパンツにインして、手にはタピオカ、耳には白いイヤホンみたいな。
 妙に落ち着いて洗練されてるけど、カラフルさもなければ、若さもない。
 そんな若者がチマッとまとまった国から、グレタさんが生まれる気はしないよな。
 ま、ファッションの話だけなら、いいですけどね。


※ 週刊朝日  2019年10月11日号

[写真-1]
ドン小西

[写真-2]
グレタ・トゥンベリ(環境活動家)/2003年、オペラ歌手の母と俳優の父の間に、スウェーデンで生まれる。8歳の時に地球温暖化を知り摂食障害に。2018年には、気候変動問題に抗議、国会議事堂前で座り込みを行い、その活動が世界の2万人以上の学生に波及=怒りの演説を行った前々日の9月21日、ユース気候サミットで国連事務総長(左)らと

AERA dot.、2019.10.3 11:30
日本の10代とグレタ・トゥンベリの違いは?
ドン小西が指摘

https://dot.asahi.com/aera/2019100700071.html

posted by fom_club at 18:20| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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