2019年10月06日

日米貿易協定の阻止

 安倍首相とトランプ米大統領が2019年9月25日午後(現地時間)、米国のニューヨークで開かれた首脳会談で、日米FTA協定についての共同声明に署名した。
 合意文書の署名はできなかった。
 合意文書の署名は10月上旬に先送りされる予定だ。
 安倍内閣は10月4日招集の臨時国会に日米FTA協定案を提出予定。
 臨時国会での承認を得る方針だ。

 安倍首相は
「両国の消費者あるいは生産者、勤労者全ての国民に利益をもたらす、両国にとってウィンウィンの合意となった」
と話したが、「ウィンウィン」という言葉の意味を知らないようだ。

 牛肉などの米国産農産物への関税はTPP水準に引き下げられる。
 しかし、日本が米国に輸出する自動車などの関税撤廃は見送られた。
 そもそも、安倍内閣はTPP交渉への参加を米国に認めてもらうために、法外な譲歩を示した。
 TPP参加で日本が唯一得ることができるメリットが自動車輸出の関税撤廃だった。
 現在、普通自動車には2.5%、売れ筋のSUV等の大型車には25%の関税がかけられている。
 この関税を撤廃させることがなければ、日本は海外生産者に日本市場を開放するだけになる。
 米国にとって自動車産業が重要なのと同様に、日本にとっては農林水産業が重要だ。

 日本の主権者の利益を考える対外交渉をするなら、仮に農産物輸入の関税を引き下げるなら、自動車輸出の関税を引き下げることを要求するのが当然のことだ。
 米国が自動車関税を「聖域」として温存するなら、日本は農産品重要5品目の関税を「聖域」として守って当然だ。

 ところが、TPP交渉に参加することを認めてもらう際に、普通自動車については14年間、SUVについては29年間、関税率を一切引き下げないことを日本政府が受け入れた。

 TPP交渉が売国交渉であることは、この点を見れば一目瞭然だ。
「ハゲタカのハゲタカによるハゲタカのための条約」がTPPの正体だった。
 安倍内閣はハゲタカの利益を極大化するためにTPP交渉への参加を強行した。
 2012年12月の総選挙の際に、
「ウソつかない!TPP断固反対!ブレない!日本を耕す自民党!!」
と大書きしたポスターを貼りめぐらせて選挙を戦った安倍自民党が主権者との約束を踏みにじって国益放棄の売国TPPに突き進んでいった。

 それでも、このときの決定は、
・ 普通自動車は25年目に、
・ SUV等は30年目に、
関税を撤廃することとされた。
 また、TPP協議で、自動車部品については、8割以上の品目で即時に関税が撤廃されることになった。
 売国協定ではあるが、遠い将来には日本から米国への自動車輸出に対する関税が撤廃されることが確定した。
 その後、米国はTPPから離脱した。

 安倍首相は、米国を含むTPPの最終合意を完全に確定するために早期批准が必要だと訴えて、2016年末に国会でのTPP批准を強行した。

 米国でトランプ政権が発足すれば、米国がTPPから離脱する可能性が限りなく高かった。
「安倍首相はTPP最終合意の見直しは行わない。米国が離脱したら、米国をTPPに回帰させる」
と国会で繰り返し明言した。

 実際に、米国はTPPから離脱した。 
 すると、安倍内閣は米国のTPPへの回帰を求めず、TPP最終合意の改変に突き進んだ。

 何もかもがこのありさまなのだ。
 そのTPP改変を強引に推し進めたのが安倍内閣である。
 牛肉のセーフガード発動の基準は、米国を含む数量で定められていたから、米国が離脱した以上、米国相当分を圧縮する必要があった。
 各国が自国の損失を回避するために細目の変更を行ったなかで、日本だけが細目の見直しを行わずにTPP改変を強行した。

 今回の日米FTAでは、自動車関税の撤廃が消えた。
 安倍内閣は制裁関税発動の可能性が言葉の細工で限定されように見せかけられることをもってウィンウィンと強弁しているのかも知れないが、実態は
“Winner-takes-all”
でしかない。

 その制裁関税についてすら、米国のライトハイザー通商代表は9月25日、「現時点では大統領も232条で日本に何かすることはまったく意図していない」と説明し、将来にわたり発動しないとは確約していないのだ。

 日米FTAは1858年の日米修好通商条約以来の不平等条約である。


植草一秀の『知られざる真実』2019年9月27日 (金)
米国にすべてを奪われた日米FTA協定合意案
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2019/09/post-cb244d.html

「4兆ドル規模」の日本のデジタル市場は、関税ゼロでアメリカがごっそり持っていく

 日米の通商交渉については、茂木敏充現外相が延々と閣僚級協議を続け、なんとか先週の日米首脳会談で署名にこぎつけたわけです。
 トランプ政権の通商政策については、実は日本経済への影響という点では米中の交渉が妥結してくれないと困るのですが、それはともかく、日米の間でとりあえず合意に達したということは評価できると思います。

 その内容ですが、多くの報道では「日本車にかかる関税が継続協議となった」こと、そして農産品に関して「TPP並みの開放となったこと」を取り上げて問題視する考え方が多いようです。
 ですが、よく考えるとこの2つに関しては日本側として、大きな問題ではないと考えられます。

 まず、日本車については、例えばホンダの場合はほぼ100%が北米での現地生産になっていますし、トヨタの場合も以前は日本の田原工場や、トヨタ自動車九州でのみ作っていた「レクサス」ブランドのモデルも、「RX」(加オンタリオ州)や「ES」(米ケンタッキー州)といった主力車種が現地生産に移行しているからです。
 80年代や、90年代とは異なり、完成車輸出というのは極めて限定的であり、したがって仮にこの問題が継続協議となっても日本経済への影響は限定的なものです。

 ただ、実際の有権者には80年代や90年代の感覚を残している人が多いのも事実で、政治的な効果としてはこの点での綱引きがあったのは事実でしょう。
 日本だけでなく、アメリカの、それこそトランプ政権の支持者の持っている時間感覚も、それこそ80年代の日米貿易摩擦の記憶を引きずっているわけで、どちらも過去の幻影を材料に交渉していたようなものとも言えます。

 次に農産品に関しては、オバマ政権とのTPP合意交渉の際に、これは国内的にはいったん決断もしたし、対策も用意していたわけで、今回の決定もその範囲内なのですから、こちらも交渉での譲歩とは言えないと思います。
 むしろ、当初想定したアメリカが入る形でのTPPの発足よりは、日程が大きくズレたことで、日本としては農業の抜本改革のタイミングを逸してしまったということはあると思います。
 ですが、交渉による譲歩ではないと考えられます。

 では、安倍総理の言うように、今回の結果は「日米ウィンウィン」なのかと言うと、実は2つ大きな懸念があります。

 1つは自動車部品の問題が継続協議になったという点です。
 日本からアメリカへの完成車の輸出は、現地生産化の進展により仮に関税が残っても影響は限定的と言ってよいのですが、部品の場合はそう単純ではありません。
 ハイブリッドやEV関連の部品など高度化した電装部品、自動変速機など高付加価値の部品で、日本からアメリカへの輸出となっている部分はまだ日本経済の重要な柱となっています。

 今回の交渉では、この自動車部品への厳しい課税を避けられたというのは評価できますが、今後に含みを残す形で継続協議となったのは残念ですし、引き続き要警戒と言わざるを得ません。

 もう1つは、今回の協議についてトランプ大統領が語った「日本のデジタル市場を4兆ドル規模で解放させた」というセリフです。

 この問題ですが、とりあえず現在そうなっているように、米国サーバーから日本の消費者がアプリやソフト、コンテンツをダウンロードする際に「消費税はかけるが関税はかけない」と言う扱いを今後も保証したということです。

 安倍首相としては「消費者へのメリット」という部分に入るのかもしれません。
 ですが、トランプ大統領の言う「4兆ドル(約430兆円)」という数字はあまりに巨大です。

 アメリカとしては、今後も進むコンピューター・テクノロジーの進歩により、日本におけるソフトウェアの市場はどんどん拡大する、その規模が、もちろん単年度ではなく何年にもわたってのトータルで430兆円になるとして、それをごっそり持っていこう、しかも関税ゼロで儲けようというのです。

 これは大きな問題です。
 現在でも、日本人による日本語を使ったコミュニケーションが、米国の企業が運営するSNSのサーバーを通っているわけですし、コンピューターもスマホもタブレットも、日本が開発したOSなど影も形もありません。
 ソフトウェアに関しては、かつて技術立国を自称し、情報立国を目指していた国の面影はどこにもないのです。

 そのような「全敗」状態が今後も続く、その際に動くカネには関税はかけられない、そのトータルの市場規模は430兆円にもなる。
 そうであっても、関税ゼロなら消費者にメリットがあるのだから、それも「ウィンウィン」というのが全体のストーリー......であるのなら、これは恐ろしいまでの経済敗北主義ではないかと思うのです。


Newsweek、2019年10月03日(木)16時20分
日米貿易協定を「ウィンウィン」と呼ぶ日本の敗北主義
冷泉彰彦(れいぜい あきひこ)
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2019/10/post-1117.php

 メディアは良く知っている。
 今度の国会で安倍首相が最優先するのが日米貿易協定の国会承認であることを。
 だからどの新聞もそのことを書いている。
 ならば野党は日米貿易協定の阻止を最優先すべきだ。
 日米貿易協定阻止の一点突破で、打倒安倍政権を目指すべきだ。
 そしてその大義と正当性は十分にある。

 なにしろこの協定は、TPPに加盟した日本にとって、締結する必要性のまったくない協定だ。
 それどころかTPPを損ない、TPP加盟国を裏切り、そして何よりもトランプをTPPからますます遠ざけるものになるからだ。
 まさしく、日米貿易協定は、TPPをボイコットしたトランプを利するために、トランプに押し切られて結ばされた協定なのである。

 同じ不平等条約でも、日本の共産化を防いだ日米安保条約のほうがまだ意味があった。
 しかし今度の日米貿易協定は、ただひたすらにトランプの再選に協加担するだけの協定だ。
 それがウソだと言うなら、茂木大臣を徹底的に追及し、その密約ぶりを白日の下にさらせばいい。
 
 交渉過程と合意の実態を知れば知るほど、とんでもない協定であることがわかるだろう。
 もちろん、WTOで合意された戦後の自由貿易原則に違反する。
 そして、協定の交渉過程と内容の密約ぶりは、あの昭和の日米安保条約と全く同じだ。

 しかもである。
 日米安保条約は、吉田茂首相が署名した。
 その密約ぶりを認め、こんな条約を署名する責任は自分ひとりで取れば十分だ、あの時はそれしかなかった、後世の政治家によって改定されることを願う、そうつぶやいて、あえて誰も従えずに、ひとり署名したのだ。

 ところがである。
 きょう10月5日の毎日新聞を見て驚いた。
 一段の小さな記事であるが、こう書かれている。

 日米両政府は新たな日米貿易協定の署名式を、日本時間の8日にも米ワシントンで開く方針を固めたと。
 なんと、国会にその最終協定案を正式に提出しないうちに、署名してしまおうというのだ。
 とんでもない国民無視の外交だ。


 しかもである。
 安倍首相がトランプと署名し、吉田茂のようにその責任を一人負うのならまだわかる。
 あるいは、安倍首相の責任をかぶって茂木外相が署名するのならまだわかる。
 なにしろ密約のすべてを一番よく知っている事実上の日米貿易協定の責任者であるからだ。

 ところがである。
 署名は杉山晋輔駐米大使が、ライトハイザー米通商代表と行う予定だという。
 令和の日米安保条約といってもいいほどの歴史的不平等条約を、外務官僚ごときに署名させてお茶を濁そうとしているのだ。
 あまりにも姑息だ。
 政治家の責任回避だ。
 野党は絶対にこの署名式を許してはならない。


 少なくとも署名を許す前に国会審議を尽くさなければいけない。

 予算委員会で議論した後でなければ署名を許してはいけないのだ。
 そして予算委員会で審議すれば、それを承認してはいけないことが次々と明らかになる。
 承認などとんでもないということになる。
 トランプと約束してしまった安倍首相は、野党が反対すれば、解散・総選挙に打って出て、国民に信を問わざるをえなくなる。
 野党はそこまで安倍首相を追い込まなければいけないのだ。
 その時こそ安倍政権が倒れる時だ。
 それ以外に安倍政権を倒せる策は今の野党にはない。

 打倒安倍政権が選挙の争点になれば、どんなにバラバラな野党でも、安倍か、反安倍か、で結束できる。
 安倍か、反安倍か、で選挙が行われるなら、どんなに選挙に関心がない国民でも、政策に疎い国民でも、選択できる。
 そして、こんな野党でも安倍よりはいいという審判が下される可能性は十分にある。
 おりから米国はトランプの再選が不透明になって来た。

 トランプと安倍の二人がいなくなった時こそ、日米安保の見直しの可能性が出て来る時だ。
 その時こそ日本が「昭和」、「平成」から決別し、あたらしい時代に突入できる時だ。
 野党は日米貿易協定の阻止を、令和の安保闘争に発展させよ。
 ここまでヒントを与えているのに、それに呼応しないようでは、野党に出番は永久に来ない。


天木直人のブログ、2019-10-05
野党は日米貿易協定の阻止を令和の安保闘争にする気概を示せ
http://kenpo9.com/archives/6293

posted by fom_club at 16:27| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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