2019年10月01日

首相の発言をファクトチェック(事実確認)

 2019年7月21日投開票が有力視される参院選まで1ヶ月。安倍晋三首相の政治姿勢も、有権者にとって重要な判断材料だ。第2次安倍政権以降、6年半にわたる首相の発言をファクトチェック(事実確認)する。 

「自衛隊に対する、自治体の非協力な対応がある。例えば自衛官の募集。6割以上の自治体から所要の協力が得られていない」

 今年2019年1月の衆院本会議。首相は、自衛隊は災害派遣で自治体を助けているのに冷たい扱いを受けているとして、「終止符を打つためにも、自衛隊の存在を憲法に位置づけることが必要」と訴えた。
 だが、首相の言葉は正確とは言い難い。
 防衛省によると、2017年度、全国1741市区町村のうち、自衛官適齢者の名簿を作って自衛隊に提出した自治体は36%。一方で、適齢者名簿や住民基本台帳の閲覧・書き写しを自衛隊に認めた自治体も計54%あった。完全拒否したのは1%に満たない。
 ほかにも首相は、自衛隊を明記する必要性を訴えようと、あらゆる理由を総動員してきたが、額面通り受け取れないことが多い。
 有名なのは、自衛官の子どもが「お父さん、憲法違反なの」と涙ながらに尋ねたというエピソード。首相は2017年10月の民放番組で「(自衛官から)直接聞いた」と説明したが、野党は国会で「実話なのか」と追及。首相は2019年2月の衆院予算委員会で「防衛省担当の首相秘書官を通じて伺った」と言い直した。
 首相は「(実話と証明する)資料を出せというのなら出させていただく」とたんかも切ったが、結局、資料は出てこなかった。
 そもそも首相は、2020年の新憲法施行を目指すとして期限を切る一方、憲法のどこを見直すかという肝心な点で主張を変えてきた。
 2012年末に第二次安倍政権が発足した当初は、衆参両院で3分の2以上の賛成が必要とする改憲要件を緩和する96条改憲を目標に。ルールを変えるやり方に「裏口入学」と批判が高まり、棚上げした。
 自民党も、現行憲法は世界的に見ても改正しにくいと訴えたが、海外の憲法に詳しい憲法学者は、議会の承認が必要な各国憲法のおよそ4分の3は「3分の2」が改憲要件と指摘する。
 首相はその後、自衛隊明記のほか、教育充実のための改憲も強く主張。改憲で日本維新の会の協力を得るためとみられている。
 2年前の施政方針演説で首相は、江戸時代に土佐藩が、江戸から持ち帰ったハマグリを食べずに放流した結果「今も大きな恵みをもたらしている」として、子孫のための憲法論議を訴えた。演説当時、高知県のハマグリ漁獲量はピーク時の4%弱にすぎず、「大きな恵み」は誇張と言える。
 在任中に自らの手で改憲を成し遂げる意欲が先走り、内容は二の次。
 首相の改憲論からは哲学が見えてこない。


ファクトチェック 安倍 憲法.jpg

東京新聞・朝刊、2019年6月21日
<ファクトチェック 安倍政治の6年半>
(1)憲法 要件緩和、教育充実… 変わる改憲項目
(清水俊介)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019062102000162.html

 安倍政権が6年半、経済政策で最も重視してきたのは、「成果」の見せ方だ。さまざまな解釈や表現を駆使し、いかに経済成長を実現したかを国民に印象付けることに腐心してきた。

「しっかりと経済を成長させている」

 安倍晋三首相は2019年6月19日の党首討論で、立憲民主党の枝野幸男代表に向けこう強調した。民主党政権時代の国内総生産(GDP)の実質成長率が安倍政権を上回っていたと訴えた枝野氏に対し、「一点だけ申し上げる」と強く反論した。
 枝野氏は物価変動の影響を除いた実質成長率を「経済の総合成績」と主張した一方、安倍首相は変動分を含んだ名目成長率を前提にした。どの指標を扱うか。解釈一つで、アベノミクスの代表的な「成果」とされるGDPでさえも評価が大きく変わる。両者の主張がかみ合わなかったのは、「物差し」の違いが大きい。
 政権が「名目GDP 600兆円」を目標に掲げたのは2015年。首相は同年2015年11月、「2020年ごろに十分達成できる」と宣言した。2015年度の実額は当初、500兆円程度にとどまり、専門家から「不可能」との意見が相次いだ。しかし、その後に数値は急伸。2018年度には550兆円まで伸ばした。
 伸長のからくりは、GDPの計算方法の変更だった。
 目標を掲げた後の2016年12月に計算法を変え、2015年度は基準変更前と比べGDPを30兆円以上伸ばした。「後出しじゃんけん」との批判も招いたが、一連の事象を首相が率先して説明する姿はみられない。
 首相がアベノミクスの成果を誇る際、紹介した数字の裏側にある実情を丁寧に説明しない場面が多くみられる。賃金の伸びは春闘の実績を使い、基幹統計として重要性が高い「毎月勤労統計」の結果には触れず。勤労統計の2018年実績が、政府の不正や算出方法の変更により、かさ上げされていることも背景にある。
 頻繁に取り上げる雇用の改善でも説明不足の構図は同じだ。今国会でも「有効求人倍率は史上初めて全都道府県で一倍を超えた」と繰り返す首相。この数字は事実だが、団塊世代の一斉退職や生産年齢人口の減少という特殊要因には触れず、増えた雇用は高齢者ら短時間労働者が多いという中身は語らない。
 看板に掲げた金融政策「異次元緩和」でも、その理由と結果を十分に説明したとは言い難い。当時、首相はデフレの原因は金融緩和の不足にあるとして、任命した日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁による「2年で物価上昇率2%」に強くこだわった。
 それが6年かけても達成できず、地方銀行の経営悪化など副作用が相次ぐと発言は一変。今月の国会では「2%は一応目的だが、本当の目的は雇用」と転じた。


ファクトチェック 安倍 経済.jpg

東京新聞・朝刊、2019年6月22日
<ファクトチェック 安倍政治の6年半>
(2)経済 GDP・勤労統計・求人倍率… 「成果」実情触れず
(渥美龍太)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201906/CK2019062202000154.html

 公平公正であるべき行政がねじ曲げられ、安倍晋三首相に近い人に特別な便宜が図られたのではないか−−。第二次安倍政権発足後の六年半を振り返り、見過ごせない特徴は、「忖度(そんたく)」という言葉に象徴される政と官のゆがんだ関係だ。

「私や妻が認可あるいは国有地払い下げに、事務所も含めて一切かかわっていないことは明確にさせていただきたい」

 2017年2月の衆院予算委員会で首相は、学校法人「森友学園」に国有地が大幅に値引きされて売却された問題について、自身や妻昭恵氏の関与を強く否定した。
 この問題では、学園が開校予定だった小学校の名誉校長に昭恵氏が就いていたことなどを官僚が忖度したという疑念がくすぶる。
 学園理事長だった籠池泰典被告が2015年11月、国有地賃貸で優遇を受けられないか昭恵氏に相談し、昭恵氏付き政府職員だった谷査恵子氏が財務省理財局に照会していたことが、同省が公開した文書などで判明。首相は「(理財局は)ゼロ回答。忖度してないのは明らかだ」と国会答弁したが、昭恵氏の存在が国有地を巡る交渉に影響した可能性は低くない。
 籠池被告は当初、国有地を8年間借りた後に買い取ることを目指した。財務省近畿財務局との交渉は難航したが、昭恵氏が学園の幼稚園を視察し、籠池被告と一緒に写った写真が示されると、売却を前提とした交渉が進んだ。2016年6月、地中のごみ撤去費として約8億円を値引きして国有地が売却された。
 籠池被告は「神風が吹いた」と表現したが、「安倍一強」と言われる長期政権下で、官僚が権力者に近いと思われる人を優遇した疑いは消えない。公文書改ざんに関わった職員が命まで絶っている。
 また、首相が「腹心の友」と呼ぶ加計(かけ)孝太郎氏が理事長を務める加計学園の獣医学部新設を巡っても、「加計ありき」で国家戦略特区の選定が進んだ疑いが解消されていない。業者による供応などを禁じた大臣規範があるにもかかわらず、首相と加計氏はゴルフや会食を繰り返してきた。2015年6月に愛媛県と同県今治市が国家戦略特区での獣医学部新設を国に提案した後も続けている。首相が学園の獣医学部新設の意向をいつ知ったのかが焦点となった。
 首相は2017年7月の衆院予算委で「(加計学園による特区への)申請を知ったのは1月20日の特区諮問会議」と答弁。しかし、首相は同年2017年6月の参院予算委などで「(国家戦略特区の前の)構造改革特区で申請されたことは承知していた」と答えていた。矛盾だと追及された首相は「整理が不十分で混乱していた」と陳謝し、答弁を修正した。
 その後も、首相と麻生太郎副総理の地元を結ぶ道路整備を巡り、当時の国土交通副大臣が「忖度した」と発言して事実上更迭されるなど、政権の体質を疑わせる問題が続く。
 だが、その場しのぎにも映る首相の説明から危機意識は感じられない。


ファクトチェック 安倍 モリカケ.jpg

東京新聞・朝刊、2019年6月23日
<ファクトチェック 安倍政治の6年半>
(3)森友・加計問題 ゆがむ「政」と「官」 忖度の疑念 消えないまま
(望月衣塑子)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201906/CK2019062302000155.html


posted by fom_club at 06:29| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。