2015年05月21日

太宰治、酔ってひと節

 太宰治と煌めく星座。
 そうなんです、昨日のヤッホー君の日記で登場した野原一夫。
 こんなことがあったようで:

 橋を渡りバラックのマーケットの奥へと、二人(太宰治と太田静子 1913-1982 の弟、通)は入っていった。小料理屋のカウンターの高い椅子に並んで腰かけてからも、太宰は相変わらず通にばかり話しかけていた。そこへ、ベレー帽の細身の青年が入ってきた。編集者の野原一夫氏だった。

 1947(昭和22)年の5月、です。太田静子、妊娠4ヶ月に入っていたころ。
 まず太田静子は通と東京駅に近いレストランでランチと取ります。そのとき通は:

 新憲法になって、私生児(注)がなくなるということを教えた。
「子供は、私の籍に入れたいの。父親の欄が空白でもいい。私一人の子でいいの」
「それなら、太宰さんのお墨付きをもらっておけばいいと思う」


 そして4時過ぎに三鷹の鰻屋に入り、ビール一本を飲むと店を出て、太宰の馴染みの店、小料理屋「すみれ」に入り、野原氏と合流した、とこういうわけでして。
 ほかにも編集者が一人、二人と入ってきたのですがつれだって「すみれ」を出て、もうひとつの馴染みの店「千草」の奥座敷にあがりこみます。
 盛り上がってきたころ野原氏は太宰からその晩、最後まで付き合ってくれと頼まれ引き留められ、太宰と太田静子と3人で画家の桜井浜枝さんのアトリエで夜を明かします。

 その前に、「千草」の奥座敷では:

 母が奥座敷に入ると、酒宴はいよいよ盛り上がっていた。太宰が、灰田勝彦(1911-1982)の『煌めく星座』(1940、敗戦後の1945年リバイバルヒット)を低い声で歌い出した。

  男純情の愛の星の色
  冴えて夜空にただ一つ あふれる思い
  …
  思い込んだら命がけ 男のこころ
  …

 母は、今にも泣きそうな気持で聞いていた。

 いつのまにか眼鏡をかけた若い女の人が野原さんの横に座っていた。彼女は高価なウイスキーを持ってやってきたらしかった。グラスにウイスキーを注いでまわったり、食卓の上をさっさと拭いたりして、それはてきぱきと綺麗好きらしい人に思われた。よもやその人が、太宰の愛人になったばかりの山崎富栄さん
(1919-1948)だとは想像だにしなかった。

 その年の11月12日、女の赤ちゃんが生まれた。通が三鷹の仕事部屋へでかけて、太宰のお墨付きを貰ってきた。「治子」と太宰が自分の一字を取って名前を考えてくれたことが、母は何より嬉しかった。「日本一、よい男」という一行が、日記に踊っていた。気恥ずかしくなるような言葉である。
「お金のことで困るようなことがあったら、いつでもいって下さい」
 お墨付きを通に渡す時に太宰がそういったことを、たまたまそこに居合わせた野原さんが覚えていた。通はその言葉も、母に伝えたのに違いなかった。
…太田治子『明るい方へ、父・太宰治と母・太田静子』(朝日新聞出版、2009年9月)220-233頁

 では、ここで一曲:

戦後70年記念/リンゴの唄/青い山脈:
https://www.youtube.com/watch?v=l9JjmrU5yTU

 失礼、この歌はヤッホー君が5月15〜16日、湯河原に湯浴みに行ったときに歌ったもので、これが『煌めく星座』!

青春グラウンド/燦めく星座(灰田勝彦):
https://www.youtube.com/watch?v=Qk994gdBDRw


(注)日弁連会長による声明文:

これまで、国連の自由権規約委員会、女性差別撤廃委員会、子どもの権利委員会及び社会権規約委員会は、日本政府に対して、本件規定についての懸念を表明し、本件規定を廃止することを繰り返し求めてきた。婚外子と婚内子の平等化を図り差別を撤廃することは国際的潮流であり、相続分につき制限を設けていたドイツ、フランスにおいても既に相続における平等が実現しており、東アジア諸国においても婚外子の相続分についての差別はない。

自由権規約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約及び社会権規約を批准している日本政府は、これらの条約に沿うよう国内法を整備する義務がある。国は、速やかに、本件規定を改正(削除)し、婚外子と婚内子の相続分についての平等化を実現すべきである。なお、「嫡出でない子」ないし「非嫡出子」という用語は差別的であるとして、子どもの権利委員会から用語の廃止についても勧告されている(第2回日本政府の報告に対する2004年2月26日付け子どもの権利委員会の最終見解)。改正に当たっては、差別的な用語をも改めるべきである。

ところで、日本政府は、自由権規約委員会及び女性差別撤廃委員会から、上記婚外子差別のほか、選択的夫婦別姓を認めていないこと、女性のみに6か月の再婚禁止期間を定めていること、婚姻適齢について男女の差を設けていることについて、繰り返し懸念を表明され、民法改正のために早急な対策を講じるよう要請されてきている。しかし、これらに関する民法規定もいまだ改正されていない。

当連合会は、国に対し、婚外子の差別的な法定相続分を定める本件規定の改正と併せて、夫婦同姓しか認めない民法第750条、再婚禁止期間を定める民法第733条、婚姻年齢に男女の差を設ける民法第731条など家族法における差別的規定を、速やかに改正することを強く求める。
…2013年(平成25年)9月4日、日本弁護士連合会、会長 山岸憲司


posted by fom_club at 09:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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