2011年07月29日

富士見大学

 『富士見町の富士見高原病院が富士病棟2階に開設した「旧富士見高原療養所資料館」に、山岳エッセイストで登山家の山口耀久さん(82)=東京都調布市=から、50数年前に入院したときに詩人の尾崎喜八と出会った思い出をつづったエッセー「狐の森」の生原稿と、喜八の住む「分水荘」の写真などが寄贈された。資料館では、終戦後の昭和20年代、高原療養所に入院した青年たちが喜八と交流したことを示す資料として展示した。

 山口さんはエッセー「北八ツ彷徨」「八ケ岳挽歌」などの著者で、八ケ岳登山の先駆者。阿弥陀岳などのロッククライミングルートを開拓したロッククライマーとしても知られる。

 療養所には50年3月から翌年11月まで入院。1年8カ月の間に、他の患者有志らとともに分水荘を何度も訪ね、喜八と交流した。喜八は青年グループを「穂屋野会」と名付けていた。有志の中には、製薬会社研究員で後に新潟薬科大学長を務めた朝比奈菊雄さん、東大薬学部研究員で後に東京薬科大学長となる小林義郎さんらがいた。

 山口さんのエッセーによると、療養所の近くにある、冬は氷田となる沢を越すと、赤松の森があり、キツネが出るため、「狐の森」と呼んでいた。喜八の住む分水荘はもう一つ先の森の中にあり、富士見駅の近くを回る道があったが、山口さんは森を抜ける近道を往復した。

 狐の森は、現在の西友富士見店から栂沢団地付近を指すとみられる。

 寄贈された分水荘の写真は、山口さんの仕事場である東京都杉並区の家に保管されていた。分水荘の縁側で実子夫人から茶の接待を受ける山口さんを喜八自身がシャッターを押した。蔦木宿の本陣を移設した分水荘のほぼ全景が写っている。

 分水荘を訪ねた青年たちは、15畳ほどの居間で、喜八の話に耳を傾けた。詩論から文学、音楽、天文学、生物学など多彩な内容で、青年たちは「富士見大学」と呼んでいた。句会が定期的に開かれ、現在も東京都内で続けられている。

 資料館の館長で、エッセイストでもある荒川じんぺいさん(61)=同町信濃境=は、「喜八との交流を通して、入院患者たちが独自の文化を熟成させ、戦後日本の発展に貢献した。青年たちのその後の業績を踏まえながらさらに研究調査し、資料館を充実させていきたい」としている

(2008年1月21日6:00更新『長野日報』尾崎喜八の思い出「狐の森」生原稿や分水荘の写真 山口耀久さんが寄贈)
http://www.nagano-np.co.jp/modules/news/article.php?storyid=9580

 冨士見町は長野県諏訪郡にあって、入笠山に登るときの入り口にあります。尾崎喜八の常設展示コーナーは、富士見町の「高原のミュージアム」に収められています。諏訪郡富士見町富士見3597-1(コミュニティ・プラザ内、Tel 0266-62-7900)
http://www.alles.or.jp/~fujimi/kougen.html

 サナトリウムであった療養所は、現在「長野県厚生農業協同組合連合会富士見高原病院(諏訪郡富士見町落合11100番地)です。資料館は次のサイトから:
http://www.lcv.ne.jp/~kougen/institution/museum00.html
 
 山口耀久が分水荘を訪れると、尾崎喜八は「部屋のすみに置かれた小さなオルガンに」向かうのです。このオルガンは尾崎喜八の妻、実子が「少女時代に高村光太郎から贈られたものだそうで、ペダルを踏むとすこしキーキーいう」のですが、尾崎喜八はかまわずにきれいなテノールでフランス語で歌うのです(山口耀久「富士見高原の思い出」、平凡社ライブラリー『北八ツ彷徨』所収)。
 ヤッホー君が追ってきた尾崎喜八、高村光太郎、そして山口耀久が交叉する瞬間です。

 そんな戦後の青春がいっぱい詰まった分水荘は、先月2011年6月21日6:01更新の長野日報によりますと:
富士見町は20日、渡辺別荘跡地公園整備検討委員会(清水吉平委員長)を町役場で開き、町が今年1月、国から2億500万円で取得した平地林「旧渡辺別荘跡地」の整備計画素案をまとめた。外周に長さ約750mのジョギングロードを設け、内部は地形、植生を考慮し5つのゾーンに分けて整備する。7月2日に開く住民懇談会で意見を聞き、パブリックコメントを募集。8月中に整備計画を決定する。7月4日から8月10日まで、公園の名称を公募することも決めた。

 同跡地は、岡谷市出身の政治家で宮内大臣を務めた渡邊千秋が1907(明治40)年に建てた別荘「分水荘」があった山林。町内最初の別荘で敷地面積は5万895m2。戦後は詩人の尾崎喜八が住み、文学活動を行なったことから、歴史的、文化的にも価値のある場所だ

http://www.nagano-np.co.jp/modules/news/article.php?storyid=21783

posted by fom_club at 22:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック