2019年10月23日

片山杜秀「“束ねられる”ファシズム化」

この国は再びファシズムに侵されている――。
現実を鋭く分析した思想史研究者、佐藤優氏、片山杜秀による対談集『現代に生きるファシズム』(小学館新書、2019年4月)が話題だ。
第1次世界大戦後のイタリアで生まれたファシズムはヒトラーのナチズムとも、中国や北朝鮮の全体主義とも、ロシアのそれとも違う。
権力によって民衆が「束ねられている」状態を指すという。
7年に迫ろうとする安倍1強政治の下、この国はどう変わっていったのか。
片山杜秀氏に直撃インタビュー。

◇ ◇ ◇
― ファシズムはどの程度まで進んでいますか。

 数字で示すのは難しいですが、かなりファシズム的状況にあると言っていいと思います。
 独裁政党こそありませんが、野党は与党に似たり寄ったり。
 保守主義的で、資本主義の延長線上に立って「この国をもう一度豊かにします」と幻想をうたっている点では、共産党以外の野党は与党と変わらない。


― 国民に選択肢がないと?

 自動的に大政翼賛会化しています。
「55年体制」のような与野党のイデオロギーの差異がない。
 思想や政策に十分な相違がないとすれば、有権者は同じことをやるなら経験を積んでいる政党の方が安全と考える。
 だから、安倍首相が面目を失うことがあっても、「悪夢のような民主党政権」とリフレインすると、一定数の国民がリセットされてしまう。
 現政権の方がマシだと考えて、失敗が棒引きになる。
 左派が警戒する憲法改正などしなくても、戦後民主主義の常識とは異なるフェーズに入っていることを深刻に認識する必要があります。


■ 没落する中間層が“希望の星”にすがりつく

― ファシズムは全体主義と混同されやすいですが、「特定の政治や経済の体制を呼びならわす言葉ではないと考えるべき」「体制論ではなく情況論の用語」と指摘されています。

 個を原則的に認めないのが全体主義で、個のスペースが幾分なりとも保障されているかのような幻想を与えるのがファシズムと言えばわかりやすいでしょうか。
 みなさんを自由にするため、夢を取り戻すため。いっとき不自由になっても我慢して下さい。
 これがファシズムのやり方です。
 しばしば不自由のままで終わるのですが。
 同質化までは至らず、「束ねる・束ねられる」ことをたくさん感じているときがファシズム的状況と言えるでしょう。
 ファシズムは社会主義か自由主義かで割り切れない。
 変幻自在に形を変える。
 精神論や右翼的な旗印が有効であれば、それをトコトンやる。
 国民の団結を保つために社会主義的施策が有用であれば臆面もなくやる。
 理屈は抜き、束ねられれば手段を問わないのがファシズムです。


― 右派に支えられる安倍政権が教育無償化などの福祉政策に走るわけですね。一方、国民が「束ねられてもいい」と考えるのはどういう背景が?

 資本主義の危機の時代に没落する中間層の“希望の星”としてファシズムが現れるからです。
 典型例はワイマール共和国時代のナチス支持者、トランプ米大統領に熱狂するラストベルトの白人労働者。
 もっと豊かになるはずだったのにどうもおかしい、社会のせいでうまくいかない、と感じている階層です。
 日本も似たような状況です。
 就職先は終身雇用で、何歳で結婚して子供を何人つくって、何歳までにマイホームを持って……といった従来の生活モデルが崩れた。
 そうすると、自由を少しばかり差し出しても、みんなで束ねられることで助け合い、危機的状況を乗り切ろうという発想になる。
 自由を取り戻すステップとして、束ねられることが必要だという思考に入っていきます。


■ 3.11でフェーズが変わった

― ターニングポイントはいつですか。

 3.11 でしょう。

 冷戦構造崩壊後、そういうフェーズに入っていく流れはありましたが、3.11が決定的だと思います。
 この経験でフェーズが変わってしまった。
 日本が災害大国だという認識は共有されていましたが、政府は対応可能な防災計画を立て得ると説明し、国民の不安を打ち消してきた。
 ところが、東日本大震災では日本列島全体が揺れ動き、原発事故はいまだに収束しない。
 その後も各地で地震が頻発している。
 南海トラフ地震のリスクもある。
 いつ巨大災害に襲われても不思議ではない状況をウソとは言えない。
 地震予知は不可能だとオフィシャルに認めている状況下で、われわれは明日をも知れぬ身で生きている。
 2011年以降、日本人は刹那主義と虚無主義に陥ってしまいました。
 真面目に考えても対応できない災害と隣り合わせで暮らしているわけですから。


― 危機感の点で言うと、安倍政権は一時は中国包囲網に躍起になり、核・ミサイル開発に猛進する北朝鮮を“国難”と呼び、足元では韓国と対立を深めています。

 内政で国民に対する訴えかけが弱くなると、外に向かうのは歴史が物語っています。
 富の再分配といった社会主義的政策で国民のガス抜きをするには、経済成長が必須。
 それができない場合は非常時の持続が有効に働く。
 北朝鮮がミサイルを発射するたびに「Jアラート」を作動させれば、5年や10年は簡単にもってしまう。


― 刹那主義、虚無主義、対外的緊張が重なればますます思考停止です。

 リアルに考えれば、この国は経済成長しないかもしれない、貧富の格差が拡大するかもしれない、社会保障はますます削られていきそうだ……。
 安倍政権が夢物語を喧伝しても、不安は払拭されない。
 さらに、「AI社会」になれば人間は不要とされかねない。
 しかし、こうした問題が国民的議論に結びつかないのは、安倍政権がだましているからというよりも、国民が厳しい現実から目をそむけているからです。
 国民の気分も問題なのです。
 なぜかというと、現実を直視しても解決のしようがないから。
 こうして刹那主義や虚無主義が増幅され、便乗したファシズムのオポチュニスト(ご都合主義者)的な部分がかぶさってくる。
 世論ウケのいい政策を次々に打ち上げ、中途半端なまま別のテーマに移っていく。


― 本来は、いい加減な政治に対する国民の怒りが爆発する局面です。

 声を上げ続ける人は少数派。
「実現不可能なことでも言ってくれるだけでうれしい」というレベルまで国民の思想が劣化していると思います。
 お上はうまく統制するため、下から文句が噴き出ないようおべんちゃらを言う。
 それを期待する国民感情がある。
 上下の平仄が合っている怖さがある。
「おかしい」と訴える人の声は、「平仄が合っているんだからしょうがない」と考える人のニヒリズムにかき消される。
 原発事故への対応、反応もそうです。
 嫌な話を聞いても解決できないし、東京五輪の話題で盛り上がった方がいいという雰囲気でしょう。
 元号が変わった、新しい時代を迎えた、お札も変わる、それぞれの花を大きく咲かせることができる……。
 そんなことで内閣支持率が上がる。
 政府の考えと国民の求めが無限にかみ合っている。終末的ですね。


■ サンダース目線の民主社会主義的発想が必要

― 流れを変える手だてはないのでしょうか。

 仮に安倍政権が倒れても、世の中がガラリと変わることはないと思います。
「決められない政治」を否定した結果、政治主導の名の下に内閣人事局が設置されて官僚は生殺与奪権を握られ、官邸は霞が関の情報を吸い上げて権力を肥大化させ、戦前・戦中にはなかった強力なファシズム体制を敷いた。
「決められる政治」の究極の形態を実現したのです。
 唯一可能性があるとしたら、来年の米大統領選に再挑戦するバーニー・サンダース上院議員のような民主社会主義的な発想を広げることでしょう。
 人権を擁護し、ファシズム的なキレイごととは一線を画す社会を目指すのです。
 最大多数の国民がなるべく束ねられずに、しかし助け合って生きていく。
 人間社会の当たり前の理想を思想的にハッキリ表明する政党が大きな形をなさないとまずいでしょう。
 難しいですが。


― 民主社会主義的なプランを掲げる政治勢力が必要だと。

 高度成長が再現できれば、新たな政策実行にいくらでも予算が付き、昔ながらのパイの奪い合い政治でも結果オーライでうまくいく。
 しかし、もはやそこには戻れないでしょう。
 戻れるかのような甘言に何となくごまかされているうちに、残された貯金すら減らしているのが今の日本ではないですか。
 この現実認識を持てるか持てないかです。
 本当の現実を思い知れば、民主社会主義的な目線で考えるしかないのではないですか。
 最大多数の国民の人権と暮らしが守られ、人間を見捨てない国を目指すサンダース目線の政治が必要でしょう。


※ 片山杜秀(かたやま・もりひで)
1963年、宮城県生まれ。慶大大学院法学研究科博士課程単位取得退学。慶大法学部教授、教養研究センター副所長。音楽評論家としても活躍。著書「未完のファシズム」で司馬遼太郎賞受賞。元外務省主任分析官の佐藤優氏との対談シリーズ「平成史」「現代に生きるファシズム」の刊行を記念し、2019年6月24日午後7時から、東京・紀伊國屋ホールでトークショー開催。

[写真-1]
慶應義塾大学教授の片山杜秀氏

[写真-2]
2016年の所信表明演説ではスタンディングオベーション

[写真-3]
「公的医療保険制度は全国民に」と説く米民主党のバーニー・サンダース上院議員

日刊ゲンダイ、2019/05/20 06:00
日本は“束ねられる”ファシズム化が進んでいる
(片山杜秀、聞き手=坂本千晶/日刊ゲンダイ)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/254019

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3.11振り返り

2011.3.19(土)
[大地震発生から1週間が過ぎて]
1.名称。
 地震の名称ですが、メディアは「東北・関東大地震」としたようです。個人的には、「3.11日本大地震」「M9.0日本大地震」のようは名称の方がよいように思います。
2.原子炉の事故。
 福島原子力発電所が地震によってどういう被害を受けたのか、きちんとまとめた報道はなされていないように思います。
・ その場所の震度はいくつだったのか? その震度の揺れによって、原子力発電所の施設は、どういう被害を受け、どういう対応ができたのか?
・ 地震直後の津波は、原子力発電所のどこまで侵入したのか? またその侵入によって原子力発電所の施設・設備がどういう被害を受けたのか?
・ まとめて、地震と津波によって、原子力発電所の1号機、2号機、3号機、4号機、5号機、6号機その他の施設・設備はどういう状況に置かれたのか? そして全体としての被害の評価は?
 以上がきちんと報道されていないように思います。
3.現状
 現状を把握するためのデータにはどういうものがあるのか? モニタリング機能は、電源がないなかで、どこまで生きているのか?
4.終息
 どういう出口戦略をもっていま行動しているのか?
 たとえば、東北電力からの電力線の引き込みがうまくいったとして、その後は、どういう対応になるのか? 期間はどのくらい?
 最悪の事態があった場合、どういう処置が行われるのか? 住民のEvacuation はどの範囲になるのか、どのくらいの期間になるのか?
 以上、最善と最悪のふたつの場合だけあげましたが、その中間に多くの段階があるでしょう。あまり複雑にする必要はないでしょうが、3,4,5通りに分けて、きちんとした出口戦略の見通しが説明されるべきでしょう。

2011.3.25(金)
[こういうときには雑誌メディアを]
 被害の実態も事故の実態も簡単にはつかめない。報道が局所的になるのは仕方がないとはいえ、全体として物事を捉える視点が背後になければなりません。
 その全体に迫るためには、活字メディアの方がふさわしい。家事のあいまに、2冊の週刊誌を買ってきて読みました。『週刊東洋経済』(2011年3月26日号)と『週刊文春』(2011年3月31日号)です。
『週刊文春』は、特集が「御用メディアが絶対に報じない東京電力の「大罪」」。
 東電の基本的な問題点は、多くの人に見えていると思います。原子力は、巨大利権です。電力会社、原子炉製造会社、政府と関係官庁(とくに経済産業省)、御用学者にマスメデア。利権を分けあっているところは、仲良くします(癒着)。
 福島の原子力発電所が、今回の地震・津波以前にも、トラブル続きだったことが明らかにされています。140頁。
 1998年12月、第1原発高温焼却炉の建家にある低レベル放射性廃棄物ドラム缶炎上。 
 1999年1月、第2原発の廃棄物処理建家から出火。
 2002年8月以降、原子炉に関するデータの改竄。
 2010年6月17日、第1原発の2号機、電源喪失、水位低下発生。(15分間停電)。(24頁)

 24頁では、共産党議員(京都大学原子工学科出身の吉井英勝代議士)の質問が紹介されています。
 非常用ディーゼル発電器が3系統準備されているから安全だという政府・東電に対して、4系列の非常用ディーゼル発電機が備えられていたスウェーデンの原発が事故で2系統が止まるとその影響で残りの2系統も止まった事例をあげ、そうした場合どうするのか?質問したそうです。 
 個人的には、今回の事故で非常用ディーゼル発電機が3系列失われ、非常用電源が失われたということにびっくりしました。何と言っても原子力です。人間が手をつけるべきだったかどうかが問題になるぐらいやっかいなものです。3重、4重に対策がとられているものだとばかり思っていました。想定していなかった津波でディーゼル発電機3系列が同時に失われて、それで終わり、という事態はほんとうにびっくりです。すくなくともディーゼル発電機3系列が動かなくなったときに備えて、別種の非常用電源があるのだとばかり思っていました。

→ 2011.3.26
 ウェブで検索をかけていて、ウォールストリートジャーナルに「過去にもトラブル続きだった福島第1原発」(2011年3月22日)があることを見出しました。
 原子力の専門家による記事ではなく、ジャーナリストによるものですが、ソースの明示と分析があります。ソースは、「原子力安全基盤機構に提出された事故報告書」です。分析結果は、「データが入手可能な2005年〜2009年の5年間」で福島第一原発の事故率が大規模原発のなかでは一番高かったとしています。
「福島の3号機はプルサーマル」(2011/3/22)には、プルサーマルが日本語(和製英語)であること、3号機ではそのプルサーマル燃料すなわちMOXが使われていること(全体の548個のうち32個)も記されています。
 この記事を読んではじめて、テレビで見る福島原発の模型や模式図で不思議に感じていた点が解明されました。
 燃料プールの様子が腑に落ちませんでした。実は妻にもこの点を質問され、水の中から水のなかへ空気中に出すことなく移せるからいいんじゃないと答えましたが、自分自身で納得はできていませんでした。ウォールストリートジャーナルの記者に敬意を表してそのまま引用します。

「4号機で起きたことは、定期検査時の停止中に原子炉内のすべての燃料をプールに移送する「全炉心取り出し」という、日本で広く行われている慣行の危険性を露呈した。」

[災害緊急事態]
 福島の原発に関しては、緊急事態が宣言されています。しかし、今回の地震・津波に関しては、「災害緊急事態」宣言(布告)がなされていません。「計画停電」という名の「無計画停電」が終了するまで、東電は国の直接の支配下に置くのがよいと思いますが、そうした措置はなされていません。今回の震災で「災害緊急事態」を宣言しないで、いつするのでしょうか?
 22日午前の参議院予算委員会で、このことを質問した議員がいますが、「内閣府の小滝晃参事官はこうした措置の実施要件を同法が「国会閉会中」と定めていると指摘し」たとあります。
 災害対策基本法105条は次のようにあります。
「第105条 非常災害が発生し、かつ、当該災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合において、当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、閣議にかけて、関係地域の全部又は一部について災害緊急事態の布告を発することができる」

 そして、第106条に次のようにあります。
 「(国会の承認及び布告の廃止)
第106条 内閣総理大臣は、前条の規定により災害緊急事態の布告を発したときは、これを発した日から20日以内に国会に付議して、その布告を発したことについて承認を求めなければならない。ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合は、その後最初に召集される国会において、すみやかに、その承認を求めなければならない」
 閣議で決し、国会の承認を求めなければならない、とありますが、「国会閉会中」なんてことは定めていません。とても不思議です。
 このあたりのことがわかる方がいらしたら是非お教えください。

2011.3.28(月)
 日本の原子力政策史の第1人者は、九大の吉岡斉氏だと思われます。今回の事故に関する吉岡氏の見解を知ろうと思い、ネットで検索をかけてみました。地元(福岡)のテレビでは話をされているようです(直接関係はしませんが、副学長となられているようです)。しかし、放送媒体でも活字媒体でも直接的なものを見つけることはできませんでした。
 MLでヘルプを求めると、田中氏が、東京新聞2011年3月18日夕刊の記事「「福島原発震災」をどう見るか」を送ってくれました。
「東京電力や経済産業省原子力安全・保安院でさえ、真相を把握していないだろう。原発事故の真相をつかむには、わずかのモニター装置からの情報では不十分なのである。」とあります。そうだと思われます。データの隠蔽と言うよりも、彼ら自身把握できていないと見るべきでしょう(隠蔽体質がないとも、今回隠蔽がないというわけではありません。下に見るように事故データの改竄さえも行っています)。

→河野氏が朝日新聞3月25日付「オピニオン」を送ってくれました。「原発賠償 国は負担するな」と題します。結論部分だけ引用します。
「原発は、事故や災害が起きれば多数基が一度にダウンし、運転再開までに時間がかかるので、電力供給不安定を招きやすい。その可能性は前々から指摘されてきたのに、原発を作り続けてきた責任は重大だ。・・・天災によるやむをえない面はあるが、本質的にエネルギー政策の誤りであり、電力会社の誤りでもある」
 ウェブの資料としては、「東京電力原子炉損傷隠し事件」2002.9.20 があります。今回の事故の前提条件として意味のある情報を含んでいます。
 ほかにもいくつかあります。

2011.3.31(木)
[計画停電をやめさせよう」
 ウェブではもう有名人だと思われますが、現役の国会議員でただひとり、原子力工学の専門家(京大の工学部原子核工学科出身)がいます。共産党の吉井英勝議員です。「日本共産党 吉井英勝オフィシャルホームページ」というサイトがあるので読んでみました。
 「福島原発事故や「計画停電」、ガソリン・灯油の需給状況などに関して」「基礎的な資料を公表させるべきだ」と求めたとあります。政府はすぐに基礎データを提供する、あるいは提供させるべきです。具体的には、
「1) 原発の破損状況や情報収集衛星の撮像データ、
 2) 原子力安全委員会による放射性物質拡散状況の試算データ、
 3) 東京電力の発電設備出力など計画停電の是非を検証する根拠データ」などです。
 大学が昨日開いた説明会では、夏場には(計画されていない)広域停電がありうるという前提で話を進めていましたが、大きな違和感を感じました。(危機が続く間は)そういうことにならないように、民間の協力を得つつ、政府がきちんと管理すべきだと思います。
 今東電が行っている「計画停電」は、総理の了承があるので、違法行為ではないでしょうが、不法行為に近いと私には感じられます。基礎データを公開して、どういう工夫がありえるかを討議すべきです。そして、仮に、どうしても「計画停電」が必要だとなった場合でも、特定の地域に負担を押しつけるのではなく、(政府機関や医療機関等はずすべきところははずして、あるいは十分なバックアップを準備して)きちんと計画的に遂行すべきです。直前まで実施するのかしないのかわからないというのは最悪の選択です。
 東電の担当者(たぶんチームでしょう)が何を考えているのかまったく不思議です。官邸がこういうでたらめを放置しているのも不思議でなりません。
 ウェブで検索をかけてみると、河野太郎氏の公式サイトに「自民党有志と環境エネルギー政策研究所(ISEP)の勉強会」の結論として、「無計画停電は必要ない」と断言されています。
 非常事態です。党議拘束をはずし、協力すべきだと思います。  
 マスメディアが「環境エネルギー政策研究所」の出したレポートを取り上げないのがほんとうに不思議です。
 河野氏の見解を引用しておきましょう。
「経産省と東京電力は、需給調整契約の内容や発動状況などの情報を意図的に隠蔽しているが、もはや電力需給に関しては、東電に任せておける状況ではなく、政府が対処すべき問題である」
 契約内容が公表されていない以上、推測しかできませんが、契約内容に不都合な点があると考えざるを得ません。
 現役の国会議員がはっきりと指摘しているのに、大手のメディアが取り上げないのは責任問題だとさえ言えるでしょう。

2011.4.5(火)
 昨日届いた『科学史研究』(2011年春号)ですが、タイムリーな記事が載っています。吉岡斉「原子力政策の事例分析」pp.47-49です。 
 シンポジウム「科学技術政策は変わるか―政権交代記の科学技術史―」のひとつとして掲載されているので、短いのですが、日本の原子力政策史の第一人者の手になるまとめです。非常に的確な指摘がなされていると思います。

「今までの日本の原子力政策は「国家安全保障のための原子力」の公理のもとで進められてきた。・・・日本は核武装を控えるが、核武装のための技術的・産業的な潜在力を保持するために、あらゆる種類の機微核技術 SNT (Sensitive Nuclear Technology) ―核兵器開発への転用効果の高い一連の技術、ウラン濃縮、核燃料再処理、高速増殖炉などを代表格とする―を開発・保有し、それを日本の安全保障政策の不可欠の部分とすることである」p.47

 これが日本の原子力政策の根本的前提です。この前提のもと、「利権を有するステークホルダー―所轄省庁、電力業界、政治家、地方自治体有力者の四者を主な構成員とする。これにメーカー、原子力関係研究者を加えた六者としてもよい―の間でのインサイダー利害調整のもとづく合意にしたがって、原子力政策が決定されてきた」p.47

核の四面体構造」と呼ぶそうです。

 ウェブに次の資料があります。
 原子力安全基盤調査研究「日本人の安全観」(2002(平成14)年度〜平成16年度)報告書
 Research Survey Report of Nuclear Energy Safety "Japanese Safety Views" (2001-2003), Funded by the Japan Nuclear Energy Safety Organization,
 東洋大学、2005年3月、第3章が「「原子力の安全観」に関する社会心理学的分析―原子力安全神話の形成と崩壊―」です。科学技術史的には甘いところが散見されますが、それ自体非常に興味深い論点を提示してくれています。執筆者は、関谷直也氏(東京大学情報学環)です。
 個人的には、「日本人の核アレルギー」というのは神話ではないかと思っていましたが、その点がほぼ裏付けられました。

吉本秀之(東京外国語大学教授、科学思想史)
原子力と検閲、2011-2015
http://hyoshimoto.html.xdomain.jp/Nuclear.html

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東電旧経営陣無罪

<原発事故「無罪」>(上)
(この連載は、小野沢健太が担当します)

 未曽有の被害をもたらした原発事故の刑事責任について、司法は「無罪」と判断した。
 東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された勝俣恒久元会長(79)ら東電の旧経営陣三人に対する刑事裁判。
 本当に事故は防げなかったのか。刑事裁判が開かれた意義を考える。 

 「被告人三人は、いずれも無罪」

 2019年9月19日午後1時15分、永渕健一裁判長が読み上げる判決主文が、東京地裁の法廷内に響いた。
 証言台の前に並んだ勝俣元会長、武黒一郎元副社長(73)、武藤栄元副社長(69)の3人は判決が言い渡されると、そろって裁判長に向かって一礼。
 被告人席に戻った武藤元副社長は、着席と同時に軽く二度うなずき、二人は硬い表情を崩さなかった。

 無罪判決の一報を伝えようと、記者たちが一斉に席を立ち上がり慌ただしく出て行く。
 傍聴席からは「うそー」という叫び声が上がり、あちこちからため息が漏れた。

「(旧経営陣に津波対策の方針が了承された、とする元社員の供述調書は)推測で述べている可能性があり、疑義がある」

「(対策を指示しなかった)3人の対応は特異なものとは言えない

 永渕裁判長が、検察官役の指定弁護士側の主張を次々と否定していく。
 争点となっていた「最大15.7メートルの津波が原発を襲う可能性」を示す試算結果についても、その根拠となった国の地震予測「長期評価」について「事故前の時点では、十分な根拠を示していたとは言い難い」と信頼性に疑問を投げかけた。

 これまでの公判で、部下から試算の報告を受けながら対策工事などを指示しなかった武藤元副社長は、検察官役の指定弁護士から「対策の先送りだ」と批判されると「心外だ」と色をなして反論。
 武黒元副社長も試算通りの津波を想定しなかったのかと問われ「仮定の話に意味はない」と不快感を示し、勝俣元会長も「技術的なことは分からない」といら立ちをあらわにする場面があった。

 この日、裁判長が「長期評価の信頼性には限界があった」と読み上げると、それまで眼鏡を外してメモを取っていた武藤元副社長は軽くうなずき、顔を上げて勝俣元会長、武黒元副社長の様子を確認。
 再び眼鏡をかけ、深々といすの背にもたれ掛かった。
 勝俣元会長は、判決を読み上げる裁判長の姿を見つめ、武黒元副社長はうつむいたままだった。

 約2時間40分間続いた判決の読み上げの終盤、永渕裁判長は「事故前は、絶対的な安全確保は求められていなかった」とした上で、「3人の罪は認定できない」と締めくくった。

 裁判長が閉廷を宣告すると、3人は遺族もいる傍聴席には目を向けず、立ち止まることもなく、無表情のまま法廷を後にした。

「こんなの間違っている」

 傍聴人の悲鳴が、法廷にこだました。
 

[図表]
東電の無責任.jpg

東京新聞・朝刊、2019年9月20日
判決に表情変えず
遺族ら「うそー」悲鳴

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201909/CK2019092002000175.html

<原発事故「無罪」>(中)

 門扉を覆い隠すように雑草が生い茂っていた。
 2011年3月の東京電力福島第一原発事故後、避難が困難を極め多数の死者を出した福島県大熊町の「双葉病院」周辺は、時が止まったようにひっそりとしていた。

 原発から約4.5キロ、町の許可がなければ立ち入れない帰還困難区域を9月上旬に訪れた。
 病院は入り口も中庭も雑草ばかり。
 約300メートル離れた系列の老人介護施設「ドーヴィル双葉」の玄関内には、パンクした自転車や車いすが無造作に放置されているのが見えた。

 道路脇の茂みの放射線量は毎時0.89マイクロシーベルト。
 東京都内の30倍だった。
 入院患者らは当時、今よりはるかに高かった線量から逃れようとして命を落とした。

 事故時、両施設には計436人が入院や入所をしていた。
 医療設備のない観光バスで9時間半の移動を強いられるなどしたお年寄りたち。
 44人を死亡させるなどしたとして業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人は2019年9月19日、東京地裁で無罪判決を受けた。

「あのとき違った行動をしていれば」

 病院の向かいに住んでいた片倉勝子さん(77)=同県いわき市=は今も自責の念にかられる。

 地震の翌朝、避難を呼びかける町の防災無線を聞き表に出た。
 かつて看護師として勤めていた双葉病院の様子が気になり、玄関に向かうと、元同僚が慌てふためいていた。
 人手が足りていないと思い、「じゃあ私、手伝うわ」と声を掛けたが、「構わず避難して」と強く言われ、その場を後にした。

 それから数ヶ月後。
 一時帰宅した片倉さんは、病院前の路上に多くのベッドが置きっ放しになっているのを目にした。

「寝たきりのお年寄りたちが、こんな場所で避難バスを待つしかなかったなんて」

 涙が止まらなかった。

「病院に残って看護に当たっていれば、少しは違う結果になったかもしれない」

 立ち去ってしまったことへの後悔が消えない。

 病院から約2キロ離れた商店街。
 ガラス窓が割れた店舗が並ぶ中、シャッターが閉まったままの「かんの精肉店」があった。

 この店を営んでいた菅野正克さん(75)=水戸市=は、事故時に双葉病院に入院していた父健蔵さん=当時(99)=を長時間の避難の末に失った。

 判決公判を傍聴した菅野さんは、「旧経営陣の三人は『無罪は当然』という表情だった」と振り返る。
 旧経営陣は公判で、「知らない」「覚えていない」と繰り返した。
 菅野さんは「東電の無責任体質がよく分かった。刑事裁判が開かれた意義は大きい」と皮肉る。

私はおやじも古里も失った。それなのに事故を起こした張本人は誰も責任を取らないなんて、おかしいよ


[写真]
雑草が茂った双葉病院の入り口=福島県大熊町で

東京新聞・朝刊、2019年9月22日
後悔と怒り今も
双葉病院「東電 無責任体質分かった」

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201909/CK2019092202000114.html

<原発事故「無罪」>(下)

「やっぱりあるじゃないか」

 東京電力福島第一原発事故の避難者らが東電や国を相手取った損害賠償請求訴訟の代理人、栗山博史弁護士は今春、東電の旧経営陣3人が強制起訴された刑事裁判の記録を仲間の弁護士から見せられ、驚いた。

 民事訴訟の過程で、津波対策関連の報告資料がないか尋ねた際、国には「ない」、東電には「必要ない」と突っぱねられていた

 しかし、刑事裁判の証拠の中には数値や図面も載った詳細な報告資料があった。

「東電や国は都合の悪い資料を隠そうとしてきたが、刑事裁判になったことで検察当局が収集した証拠が公になった。公判が開かれた意義は大きい」と語る。

 複数の避難者訴訟を担当する林浩靖弁護士は、刑事裁判の証拠が訴訟の「武器」になると思い、訴訟の当事者として東京地裁から、東電社員らの証人尋問調書などを取り寄せた。

 刑罰を科すかを審理する刑事裁判は、紛争解決を目的とした民事訴訟よりも厳格な立証が求められるため、証拠も詳細になる。
 林弁護士は「東電の社内では津波対策が議論されていたにもかかわらず、何も対策を取らなかったことが刑事裁判で明らかになった。悪質性は高く、賠償責任が今までよりも重く認定される可能性がある」と期待を寄せる。

 千葉県南房総市の石井優(ゆたか)さん(72)は、仙台地裁で審理されている集団訴訟の原告。
 自身の訴訟で、東電と国の責任を明らかにしたいと強く思っている。

 千葉県で教諭として働いていた石井さんは退職後、自然に囲まれた暮らしを望んで、夫婦で福島県富岡町に移住した。
 近所の人は温かく、用事がなくても遊びに来てくれた。

「庭仕事も楽しく、すっかりなじんじゃってね」

 しかし、新たな古里は原発事故であっけなく失われた。

 事故後は夫婦で各地を転々。
 知人を頼って仙台市に避難していたとき、訴訟に加わった。
 弁護団は、避難生活による損害のほか「ふるさと喪失」に対する慰謝料も求めている。

 今月9月9日未明の台風15号で、自宅は10日間にわたって停電した。
 猛暑の中、エアコンが使えず、エンジンをかけた車の中で過ごす不自由な生活が続いた。
 東電は当初、停電は早期に復旧する見通しを示していたが、何度も延期し、そのたびに被災者を落胆させた。
「当事者意識が低く、見通しが甘い。原発事故から何も学んでいない」と憤る。

 東電の不誠実さは、刑事裁判での上層部の姿にもはっきりと表れていたと感じる。
 それだけに、無罪判決には納得がいかない。

「このまま責任逃れをさせてはいけない。刑事裁判で新たに分かったことを訴訟で突きつけ、私たち避難者や被災者のより一層の救済につなげたい」
 

[写真]
「東電の責任逃れは許さない」と話す石井優さん=千葉県南房総市で

東京新聞・朝刊、2019年9月23日
公判記録 民事の力に 賠償訴訟
避難者・被災者の救済期待

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201909/CK2019092302000117.html

 東京電力福島第一原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電の勝俣恒久元会長(79)ら旧経営陣3人について、検察官役の指定弁護士は2019年9月30日、3人を無罪とした19日の東京地裁判決を不服として、東京高裁に控訴した。
 原発事故の刑事責任が経営トップらにあるのか、あらためて審理される。 

 指定弁護士は「地裁判決は巨大津波襲来を示す具体的な試算結果などを全く無視した。到底納得できない。このまま確定させることは著しく正義に反する」とのコメントを出した。

 ほかに強制起訴されたのは、原発の安全対策の実質的責任者だった武藤栄元副社長(69)と、その上司だった武黒(たけくろ)一郎元副社長(73)。
 指定弁護士は、いずれも禁錮5年を求刑し、3人は無罪を訴えていた。

 一審の争点は、海抜10メートルの原発敷地を超える津波を予見し、事故を防げたか。
 東電は事故前、国の地震予測「長期評価」に基づくと最大15.7メートルの津波が原発を襲うとの試算を得ており、指定弁護士は「3人は大津波を予見できた」と主張した。

 地裁判決は、長期評価の信頼性を否定し、「事故を防ぐには原発の運転を止めるしかなかった。3人には運転停止義務を課すほどの予見可能性はなかった」と判断した。
 3人は、大津波を予見できたのに対策を怠り、原発事故で避難を余儀なくされた双葉病院(福島県大熊町)の入院患者ら44人を死亡させるなどしたとして強制起訴された。


東京新聞・朝刊、2019年10月1日
東電旧経営陣無罪で控訴
指定弁護士「正義に反する」

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201910/CK2019100102000146.html

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