2019年10月13日

ホームレスの命は「尊い人命」に数えられていないの?

 全国各地に甚大な被害をもたらした台風第19号。
 東京都内でも各地に避難所や自主避難施設が開設され、多くの人が避難した。
 そんななか、台東区では「ホームレス」と呼ばれる路上で生活する人びとが、避難所での受け入れを拒否される事例があった。

 10月12日午後、強まる雨を受けて、路上生活者支援などを行う団体「あじいる」は、上野駅周辺の野宿者らにタオルと非常食、避難所の地図を配った。
 同団体の中村光男さんはこう話す。

「かなり雨も強まってきて、テレビやラジオでは不要不急の外出を控えるよう頻繁に呼び掛けている。路上で過ごしている人の様子が心配でした」

 中村さんらは台東区立忍岡小学校で職員が避難所開設準備を進めていることを確認し、路上生活者のもとを回ったという。
 しかし、非常食や地図を配り終えようかというところで、「住民票がないから避難を断られた」という路上生活者の男性に出会った。

 災害対策本部に問い合わせたところ、
「路上生活者は避難所を利用できないことを対策本部で決定している」
との返答だったという。
 中村さんらは、再度、路上生活者のもとを回って事情を説明し、謝罪した。

「なかには、私たちから地図をもらって避難所へ行ったけれど、断られたという人もいました。ぐしょぬれになりながら避難所へ行って断られ、また戻ってきた人たちもいます。私たちや行政に嫌みを言うこともなく、諦めているような様子でした」

 台東区では12日、自宅での避難が不安な区民のための避難所を4ヶ所、外国人旅行者などを念頭に置いた帰宅困難者向けの緊急滞在施設を2ヶ所に開設した。

 避難所では氏名・住所などの避難者カードへの記入を求め、「住民票がない」と答えた路上生活者の受け入れを拒否したという。

「避難所に詰めている職員から災害対策本部に対応の問い合わせがあり、災害対策本部の事務局として、区民が対象ということでお断りを決めました」
(台東区広報担当)

 台東区は、
「差別ではなく住所不定者という観点が抜けていた。対策の不備」
と強調するが、避難所を訪れた路上生活者の受け入れを拒否する際に、旅行者向けの緊急滞在施設を案内することもなかった。
 さらに、風雨が強まり、警戒レベルが「避難準備・高齢者等避難開始」に引き上げられても区は対応を変えなかった。

 あじいるの中村さんはこう憤る。

「避難所の窓口で慣行として断られたというのならまだわかる。ただ、災害対策本部の事務局として対応を検討し、拒否を決めたとなると行政が命を軽んじているとも言え、あり方としては深刻です」

 災害法制などに詳しい弁護士の津久井進さんによると、人道的な観点から問題があることはもちろん、台東区の対応は法が定めた原則からも大きく逸脱しているという。

「災害救助法では、事務取扱要領で現在地救助の原則を定めています。住民ではなくても、その人がいる現在地の自治体が対応するのが大原則。また、人命最優先を定めた災害対策基本法にも違反する。あり得ない対応です」

 ほかの区はどの様に対応したのだろうか。
 例えば渋谷区は、
「原則として区民の方が避難する場として開設している」
としながらも、
「人命にかかわる事態で、拒否することはない」
という。
 今回の台風でも、避難者名簿へ住所の記入がない人がいたが、区民と同じように受け入れた。

 平成30年1月の調査によると、東京都内の路上生活者は1242人。
 首都直下地震が起きれば、さらに多くの路上生活者が避難所を訪れることも考えられる。

 津久井弁護士はこう懸念する。

「災害対策が進んでいると自負していた東京都でさえ、基本原則が理解されていない現場があることが露呈した。法律の趣旨原則に通じていない自治体が次なる大災害に対処できるのか、極めて強い不安を覚えます。同時に、法律が複雑なうえ、災害救助法は昭和22年に制定された古い法律です。国も、さらなる法整備を進める必要があるでしょう」

※ AERAオンライン限定記事


AERA dot.、2019/10/13 13:40
[台風19号]
「人命」より「住民票」?
ホームレス避難所拒否で見えた自治体の大きな課題

(文/編集部・川口 穣)
https://dot.asahi.com/aera/2019101300012.html

台東区のホームレスの人の避難所受け入れ拒否問題を考える

 台風19号が日本列島を通過しました。
 各地で河川の氾濫をはじめ、甚大な被害をもたらしています。
 被災された方に心からのお見舞いを申し上げるとともに、各地での早期の復興を願うばかりです。

 台風などの接近が予報されると、ホームレスの人への支援や生活困窮者への支援をおこなっている多くの団体や個人は、物資を提供したり、必要な情報を伝えたりなど、なんとか被害を受けずに乗り切れるようにと尽力します。

 実際に、今回の台風19号の接近にあたっても、多くの団体や個人が、支援している人に訪問したり、SNS等で情報をひろめたり、路上や公園、駅や河川敷で寝泊まりしている人に声をかけて、避難や対策を呼びかけていました。

 災害においては、その人がどこに住んでいるか、お金があるのかないのか、などに関わらず、命を守るという観点から支援がなされるべきなのではないかと思います。

 そんななか、台東区などのエリアでホームレスの人を支援している一般社団法人「あじいる」が、「ホームレスの人が台東区の避難所で受け入れを拒否された」とブログやSNSで報告しました。
(東京の台東区は上野や浅草があるエリアでホームレスの人や生活困窮者が比較的多く住む地域です)

一般社団法人 あじいる(フードバンク+隅田川医療相談会)@agile_2019 [拡散希望]
 台東区長が本部長の台東区災害対策本部に問い合わせると、「今後避難準備・避難勧告が出る可能性があるが、ホームレス(住所不定者)については、避難所は利用できないことを対策本部で決定済み」と言われました。
 事実上、台東区の災害対策は、ホームレスを排除しています。#台風19号
17:15 - 2019年10月12日
 現場の区の職員の方々は、住所の無い人は利用させないようにという命令を受けていました。
 そこで、その場で台東区長が本部長となる台東区災害対策本部に問い合わせをしました。
 台東区で野宿をしている人々は避難所を利用できないという規則が本当にあるのか尋ねたところ、「台東区として、ホームレスの避難所利用は断るという決定がなされている」と、明確な返答でした。
(出典:災害時における台東区の野宿者への対応)

 都内でホームレスの支援をしている人などの報告によれば、他の区ではホームレスの人(住所不定の人)でも避難所で受け入れ拒否などにはあわなかったところもあると言います。

 この件について、台東区の対応がどのようなものだったのかを確認するべく、本日(10月13日)、台東区危機災害対策課に連絡し、下記の回答をもらいました(この内容で記事に記載することを台東区危機災害対策課に確認済みです)。

―― 事実関係を教えてください


 今回の台風19号に関しての自主避難所において、来た人には受付で避難者カードを書いてもらっていたが、その避難者カードには住所を記載する欄があった。
 住所が書けない人がいて(住所がない人)、現地の職員が対応がわからず(住所がない人にどう対応するのかのマニュアルなし)、災害本部に確認の連絡があり、災害本部として「住所がない人は受けられない」と回答したところ、現地職員がその回答をその人に伝え、その回答を聞いて、その人は帰ってしまった。


――「住所がない人を受けられない」という回答により避難所に入ることができなかった人は何人いましたか?

 現在、把握できているのはお二人。二人でご一緒に避難所にいらっしゃいました。

―― 災害などにおいては、その区の住人のみならず他区に住んでいる「帰宅困難者」などの人も避難所に避難してくる可能性があると思うが、台東区の住民以外は受け入れられないのか

「帰宅困難者」には、専用の場所を用意していてそちらにご案内するという対応をとっていたが、住所がない方、ホームレスの人については想定がなかった。

―― 台東区はホームレスの人やネットカフェなどで生活する人など、住まいを持たない人が多く住む地域だと思うが、そういう状況の人が避難してくることを想定していなかったのか

 さまざまなご批判やご指摘をすでにたくさんいただいているが、住所不定の人の避難所への避難という視点がなかった。

―― 今後は台東区としてどのような対応をしていくのか

 今後は他自治体の事例を参考に、住所不定の人が適切に避難所を利用できるように検討していきたい。

****

 台東区からは以上のような回答をもらいました。
 今後は対応を改善するとのことではありますが、「想定していなかった」という理由で結果的に「排除」していた、というのは衝撃的でもあります。

 上記の台東区からの回答を受け、上述した「あじいる」の今川篤子代表にも話を聴きました。
 今川さんは医師でもあり、台東区や山谷地域周辺でホームレスの人や生活困窮者への医療支援などの活動をしている人です。

 実際に昨日(12日)に、台東区の避難所におもむき避難所でホームレスの人への受け入れ拒否について職員とやりとりをした一人であり、今朝(13日)も上野近辺などのホームレスの人たちに話を聞きに行っていました。

―― 今朝(13日)も上野近辺を回ってホームレスの人たちに様子を聞いていたとききました。


 今朝、お話しした人のなかで、ある人(ホームレスの人)は、台東区が用意した観光客(日本人含む)の人が避難できる避難所に行ったところ「ここは観光客用だからダメだ」と断られた、と話していました。
 私が実際に行った避難所だけでなく、区内の同様な場所で同じようなことが起こっていたのかも知れません。


―― 台東区は僕には「住所不定の人の避難を想定していなかった」と話していました。

 実際に避難所で現地の職員だけではなく、災害対策本部(本部長は区長)にも確認してもらって話をしましたが、そこでは、「ホームレスの人は受け入れられない、ということを台東区として決定している」と言っていました。
「想定していない」ではなく、台東区としてホームレスの方を受け入れないことを「台東区として決定している」でした。
 なので、大きく食い違います。
「ホームレスの方を受け入れない」は明確な差別なのではないでしょうか。
 それに、「命を守る行動を」と言っている時に、ホームレスの人はダメ、というのはおかしいのではないでしょうか。


―― 高齢の方や病気や障がいを持つ人など、災害の際には、被害を受けやすい、もしくは避難しにくいなど、配慮が必要だ、とも言われます。住まいがない、お金がない、少ない、などもむしろ最も避難や支援を必要とする状況だと思うのですが

 その通りです。
 住まいがない、所持金が少ないなどもそうですし、そうした人のなかには高齢の人や病気や障がいをもつ人もいます。
 ふだんは元気でも体調を崩す人もいますし、不安を感じる人もいます。
 そういう状況の人が困って避難をしてきたのに、結果的に追い返してしまったというのは、行政としてあるまじきことだと思います。

―― 台東区の対応の背景にはどのようなものがあると思いますか

 台東区はホームレスの人や生活困窮者などが都内の他の地域に比べたら多い地域だと思います。
 そして、行政が見る「ホームレスの人」への目は冷たい。
「ホームレスの方は受け入れない」というのは差別だと思います。
「差別」して「排除」しています。
 この姿勢が変わらないといけないと思います。


****

 SNS上では、「ホームレスの人を受け入れないのはひどい」「人権侵害だ」という意見だけでなく、悲しいことに、「ホームレスの人を避難所に入れたくない」などの意見も見られます。
 後者の意見がマジョリティだとは思いませんが、こういった意見がでること自体が、社会のなかにある「差別」を如実にあらわしていると言えます。

 日本は自然災害が多い地域だと言われます。
 住まいがない、お金がない、少ないなどの状況で被害にあうと、甚大なダメージを受けてしまう可能性があります。
 被害を受けないように、ダメージを少なくするために避難や支援をおこなうことは一人ひとりのいのちを支えるという観点からとても重要なことです。

 台東区は今後について「住所不定の人が適切に避難所を利用できるように検討していきたい」としていますが、今回のような「受け入れ拒否」のようなことが起こる前に、どうして何も対応できなかったのか、しなかったのか、その責任は重いでしょう。

 そして、今回は、実際に避難所におもむいた野宿の方がいて、その人たちを日常的に支援したり関わっていたりする人がいたので、明らかになりました。

 明らかになっていないだけで、こういった災害からの避難という文脈で、ほかの自治体で同様のことが起こっていない、とは言えません。

「住民じゃないと利用できない」などは言語道断ですし、どんな状況でも「いのち」に優劣はつけられません。
 避難にきた人を追い返して、その人が避難できずに被害をうけたらどうするのでしょうか。
 困難な状況にある人を支援しない公的機関などあっていいものなのでしょうか。

 各自治体での取り組みもそうですが、ホームレスの人への差別や排除の問題について、多くの人に関心をもってもらいたいと切に思います。


Yahoo!Japan News、2019/10/13(日) 15:30
台東区のホームレスの人の避難所受け入れ拒否問題を考える
大西連(認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長)
https://news.yahoo.co.jp/byline/ohnishiren/20191013-00146689/

災害時における台東区の野宿者への対応
台風19号対策において、台東区がホームレスの人々の自主避難所への受け入れを断ると決定した件について


 私たち一般社団法人「あじいる」は、本日にも東京上空を通過し甚大な被害が懸念されている台風19号に際し、野宿の仲間たちの身の安全確保を呼びかけるため、上野駅周辺に出かけました。
 
 不要不急の外出は控えるようにとテレビやラジオが連呼する、都市を襲う未曽有の台風を迎え、外で過ごさなければならない仲間のことを、私たちはみな心配していました。

 台東区のホームページを見てみますと、台東区の災害対策本部のサイトには、
−−−−−–
自主避難所の開設について:
 雨風が強まってからの外出は大変危険です。不要な外出は避け、原則として自宅で避難し、窓から離れた場所で過ごすなど、身を守る行動をとってください。
 自宅での避難が不安な方のために、以下のとおり自主避難所を開設します。
 自主避難所へ避難する方は、食料などの身の回りの物を持参してください。
 なお、水と毛布は区で準備します。

自主避難場所
(1) 台東一丁目区民館 台東1丁目25番5号
(2) 馬道区民館 浅草4丁目48番1号
(3) 谷中小学校 谷中2丁目9番16号
(4) 忍岡小学校 池之端2丁目1番22号

避難を希望される方は、風雨が強くなる前に避難してください。
−−−−−–
とあります。

 仲間たちを回る前に、忍岡小学校に様子を見に行きました。
 台東区の職員の方が4人、待機されていました。
 上野駅から一番近い避難所であることを確認し、上野駅周辺と文化会館周辺に向かいました。

 乾パンやタオルと一緒に、忍岡小学校の場所を示す地図のチラシを配り、避難を呼びかけました。

 みなさんのところを回り、あと数人というときに、一人の男性が「その小学校に、行ったけど、自分は●●に住民票があるから断られた」と消沈して教えてくださいました。

 告知には、住民票についての情報など書かれていませんでした。
「身の安全の確保を求めて避難所に行ったのに断られるとは!」…信じられない思いでしたが、その方は仕方なさそうに「ダメだって…」とあきらめたような微笑を浮かべていらっしゃいました

 私たちは、確かめるために、もう一度、忍岡小学校に戻りました。
 現場の区の職員の方々は、住所の無い人は利用させないようにという命令を受けていました。
 そこで、その場で台東区長が本部長となる台東区災害対策本部に問い合わせをしました。
 台東区で野宿をしている人びとは避難所を利用できないという規則が本当にあるのか尋ねたところ、「台東区として、ホームレスの避難所利用は断るという決定がなされている」と、明確な返答でした。

 すぐに、チラシを配ったエリアに戻り、事情を説明して皆さんに謝りました。
 中には、「あのあと、すぐに小学校に行ってみたけど、断られた」とおっしゃった方もいました。
 ずぶぬれに濡れて、私たちの謝罪に「いいよ。ありがとう」と片手をあげて答えていたその姿が脳裏に焼き付いています。

 その後、再度台東区災害対策本部に問い合わせたところ、今後避難準備・避難勧告が出る可能性があるが、ホームレス(住所不定者)については、避難所は利用できないことを対策本部で決定していると言われました。
 事実上、台東区の災害対策は、ホームレスを排除していることになります。

 これだけ危険だ、人命を第一に、と叫ばれている大災害を前にして、ホームレスのみんなの命は「尊い人命」に数えられていないのですか?

 ホームレスで、住民票はないけれど、私たちと同じ場所に住む、上野の住人なのではないでしょうか?

 私たちは、台東区の信じられない決定に怒りを抑えかねていたけれど、片道30分以上も歩いて自主避難所の小学校に行って、断られてまた駅に帰ってこられた仲間は、私たちや行政に非難や嫌味をいうことはありませんでした。
 こんなひどいお天気、ぐしょぬれになって気持ち悪く、今夜どんな危険に合うかも分からない不安の中で、住民の安全を守るという避難所で受け入れてもらえなかった、その思いを、胸の内にぐっと仕舞いこんで、またいつものように静かに座っています。

 災害の時にこそ助け合い、ひとりの命も失われないようにしなければならず、しかも、生命はみな平等なはずです。
 台東区のこの対応は、命を差別しようとするものと思われてもしかたありません。

 私たちが体験した、この出来事を、多くの人と共有したいと思い、ご報告いたしました。

 今晩、仲間の命が無事であることを祈りつつ…

一般社団法人あじいる代表
今川篤子

https://sumidairyo.wordpress.com/2019/10/12/災害時における台東区の野宿者への対応/

 台東区は「住所不定」を理由に受け入れを断ったというが、災害救助法の原則は被災者の現在地での自治体が救助を行うというもの。
 台東区の行為は法の原則に反する。
 人権侵害。

1:37 - 2019年10月13日

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プッシュ型支援 and/or プル型支援

 千葉市は2019年9月13日、台風15号に関する災害対策本部の5回目の会議を開き、被災地からの要請を待たずに必要な物資などを輸送する「プッシュ型支援」の実施や、県内の被災自治体への市職員派遣を検討することなどを確認した。
 熊谷俊人市長は、
「停電発生から5日目となり、被災地では想像を絶するような疲弊の状態になっている。通信の途絶も続いており、住民のSOSを待たずに現地で支援していくしかない」
と強調した。

 千葉市内では13日も若葉区や緑区を中心に1万7100軒(午後3時時点)で停電が解消せず、市民生活への影響が続いた。
 市は移動販売車による食料品の提供など被災地域への支援活動を継続している。
 14日以降も、国や県と連携しながら、被災地域の復旧・復興を全面支援する方針だ。

 13日の会議では、
「停電が解消した後も、住宅の復興に向けて支援する必要がある」(熊谷市長)
として、被災地でボランティア活動を希望する人にがれき撤去などの仕事を紹介する「マッチング」を円滑に進めることなども確認した。
 罹災(りさい)証明書の発行や一般家庭で発生した災害ゴミの回収などについても、被災住民への周知徹底を図る。

 市内の災害対策と平行し、県内の千葉市以外の自治体への支援活動についても検討に入る。
 熊谷市長は、
「県内では依然としてかなり厳しい自治体が多数ある。千葉市も被災地に近い政令市として、苦しい中でも人員を捻出し被災自治体を支援する必要がある」
と指示。
 すでにブルーシートの提供などを要請されているといい、各被災自治体からの具体的な要請を踏まえて物資提供や市職員の派遣などを検討する。


日本経済新聞、2019/9/13 19:54
千葉市、プッシュ型支援を強化
市外被災地の支援も急ぐ

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49803660T10C19A9L71000/

 西日本豪雨の被災地に向けた、政府の支援物資の輸送が本格化している。
 力を入れるのが、「プッシュ型支援」の手法だ。
 被災自治体からは素早い対応に歓迎の声が上がる一方、政府から送られた物資が使われない「ミスマッチ」も。
 2年前の熊本地震の教訓を踏まえ、支援のあり方が問われている。

 安倍晋三首相は2018年7月11日、岡山県の被災現場を視察。
 避難所となっている倉敷市立第二福田小の体育館では12台のクーラーが動いていた。
 自治体の要請を待たず国が送り先や物資を決めて送るプッシュ型支援で、前夜に設置された。
 首相は視察後、
「一丸となってプッシュ型で生活に必要な物資の確保、生活再建に取り組んでいく」
と話した。
 また政府は非常勤隊員の「即応予備自衛官」約300人の招集を決めた。
 被災者の生活支援にあたる。

 政府がプッシュ型を採り入れるきっかけとなったのが、2011年の東日本大震災だ。
 当時、自治体の庁舎や職員の多くが被災。
 避難所で必要な物資や数量が把握できなかったり、被災者に物資が十分行き渡らなかったりした。
 こうした教訓から熊本地震で初めてプッシュ型を実施した。

 今回、農林水産省は8日以降、倉敷市真備(まび)町にパン6千食、岡山県矢掛町に水や乾パン、ビスケットなど2千食、広島県にパン4万8千食、愛媛県にパックご飯などを送っている。
 経済産業省は、岡山、広島、愛媛の各県の避難所などにクーラー約280台を送った。

 総務省は、災害対応の経験がある自治体の管理職を「災害マネジメント総括支援員」として登録する制度を今年度から始めており、今回初めて倉敷市など7市町に派遣した。
 簡易無線機なども計114台、6市町に貸し出した。

 ただ、プッシュ型は被災直後の混乱期を乗り切るための措置。
 過剰に届いたりミスマッチが生じたりし、早い段階で被災地の求めに応じて物資を届ける「プル型支援」に切り替える必要がある。
 各省庁はすでに自治体のニーズの把握を始めており、プッシュ型は1週間程度で終える見込みだ。

大量の物資で保管スペースが埋まるケースも

 11日昼、広島県呉市の海上自衛隊呉教育隊のグラウンドに、ヘリコプターが降り立った。
 自衛隊員が20台のスポットクーラーを降ろしてトラックに積み込み、市内の6ヶ所の避難所に向け出発した。
 呉市によると、10日に経済産業省から県を通じて「クーラーは必要ないか」と提案を受けたという。

 呉市は連日、真夏日が続く。
 10人が避難する市立吉浦小学校の避難所には2台が到着。
 扇風機しかなかった避難者からは喜びの声が上がった。
 自宅1階に流木が刺さった坪根剛介さん(80)は、
「暑苦しくて寝苦しいけぇ、昨日から楽しみにしとった」
と語った。

 岡山県倉敷市真備町でも、国の支援でエアコンが次々に設置されている。
 11日までに5避難所で完了し、ほか4施設で設置が進む。
 市の防災担当者は、
「すごい勢いで進んだ。市単独では到底できない」。

 一方、「ミスマッチ」も起きている。

 約50人が避難する愛媛県大洲市の平公民館には10日、経産省から仮設トイレ3台とスポットクーラー5台が届けられた。
 公民館の加洲与理雄館長(69)は、クーラーは、
「助かる」と歓迎する一方で、
「トイレは要望していないんだが……」
と首をかしげる。

 断水しているが、水をくんで流せば公民館のトイレは使用できる状態。
 仮設トイレを使えば、屎尿(しにょう)のくみ取りやトイレットペーパーの補充をどうするのか決めなければならない。
 仮設トイレに「使用禁止」の貼り紙をし、使わずに置いたままだ。
 加洲さんは、
「管理方法が決まらないとどうしていいか分からず、困る」
と話す。

 被災地には政府の物資と並行し、企業や個人などの支援物資も届く。
 混乱の中、対応に苦慮するところも出ている。

 倉敷市は10日、そうした物資の受け入れ休止を発表。
 大量の物資で保管スペースが埋まり、仕分けと避難所への配送も滞ってしまったためだ。
 市の担当者は、
「分量も種類も把握し切れていないのが現状」。
 個人からは、
「古着や秋冬物が多かった。仕分けが大変で、かえって混乱する」
と戸惑いを隠さない。

 2年前の熊本地震の時も、全国の企業や個人から大量の物資が送られた。

 熊本市が今年まとめた震災記録誌によると、地震後すぐに「国や全国から送られる支援物資と避難所のニーズとの間に乖離(かいり)が出始め」たという。
 さらにスペース不足や、次々と送られてくる物資を夜通しで荷下ろしする現場職員の疲弊などを理由に数日後、全国からの支援物資の受け入れ中止を決めた。

 この時に届いた毛布約4万枚はいま、市内の体育館のフロアに積み上げて保管されているが、活用される予定はない。

山崎栄一・関西大教授(災害法制)の話

 プッシュ型支援は、被災者がほしいものを把握する前に送るので、被災者のニーズと一致しないミスマッチが起きることもある。
 避難所や自主避難の人に届かないことも考えられる。
 一人ひとりの被災者に届くまで面倒をみないと、中途半端な押しつけになる。
 災害発生当初は食料や水など最低限の物資を届けられるので有効だが、時間がたつと被災者のニーズは変わる。
 どこで何が求められ、物資がどこまで届いているのか、国には常に全体を俯瞰(ふかん)的に把握しておく責任がある。

天野和彦・福島大特任教授(被災者支援)の話

 災害直後は、何が足りていて、何が足りないのか自治体もわからず、自治体からの情報に頼る国もわからない。
 初動が遅れている状況で、まずは物資を送るプッシュ型支援は重要だ。
 一方、東日本大震災で見られたような、被災地のニーズを聞いてから物資を送る「プル型支援」は物資が無駄にならないが、ニーズを把握するまでに時間がかかる。
 被災地の状況がわからない初期はプッシュ型で、実態が明らかになったらプル型に切り替える二段構えの支援が必要だ。


「図表」
国のプッシュ型支援に被災地は

朝日新聞、2018年7月12日05時01分
国のプッシュ型支援
被災直後は歓迎でも ミスマッチも

https://www.asahi.com/articles/photo/AS20180711006169.html

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劣悪な避難所の環境を改善しよう

『災害時の避難所に「TKB」が必要だ』

 専門家で作る学会がまとめた提言です。
 相次ぐ災害関連死を防ぐために考案された、この3文字。
 これまでの避難所の「常識」が変わろうとしています。

TKBとは?

 TKBは、「トイレ・キッチン・ベッド」の略です。

 提言をまとめたのは、避難所・避難生活学会の医師や専門家たち。
 避難所生活が原因の災害関連死が相次いだことを受けて、TKBの必要性を感じたといいます。

 提言では、「快適で十分な数のトイレ」「温かい食事」「簡易ベッド」の提供が必要だとしています。
 裏を返せば、今の避難所では、「不便で不潔なトイレ」「冷たい食事」「床での雑魚寝」が課題だということです。

T=トイレの課題…「汚い」「段差」「和式」

 この写真は、2016(平成28)年の熊本地震で震度7を2回観測した熊本県益城町の避難所です。
 最大で1500人が避難。
 体調を崩す人が相次ぎ、「災害関連死」に認定された人もいました。

 大きな問題が「T=トイレ」でした。
 運営に携わった支援団体の担当者によりますと、国のプッシュ型支援(ヤッホーくん注、次に投稿します!)で、仮設トイレは地震の翌日に届きました。

 しかし、多くの人が使うため、並ぶ上にすぐに汚れます。
 入り口には急な段差があり、しかも和式のトイレでした。

 このため、高齢者や女性を中心に、トイレに行く回数を減らそうと、水や食事を控える人が多かったということです。
 このことが、多くの人の健康状態の悪化につながりました。

K=キッチンの課題…毎日、パンやおにぎり

 次が「K=キッチン」の必要性につながる、食事の問題です。

 西日本豪雨で大きな被害を受けた、岡山県倉敷市真備町の避難所。
 ここで避難生活を送った森脇敏さんは、4ヶ月間ほぼ毎日、同じような食事が続いたといいます。
 朝は昆布とサケ、明太子のおにぎり。
 昼はメロンパンやレーズンパンなど3種類のパン。
 夜は弁当の繰り返しです。

 当初は、電子レンジもなく、冷たいまま食べていました。
 ボランティアなどによる炊き出しは、限られていたといいます。
「4ヶ月間、全くメニューが変わりませんでしたが、出していただくだけでもありがたいということで、文句は言えませんでした」
(森脇敏さん)


B=ベッドの課題…床の雑魚寝が健康を害す

 そして、「B=ベッド」。
 私たちが災害時よく目にする、床の雑魚寝が課題になります。

 先ほど紹介した熊本県益城町の避難所。
 廊下まで人があふれ、スペースは寝返りを打つのも難しいほどです。

 さらに、横になっている人のすぐそばを、別の人が歩いています。
 床から舞うほこりを吸い込みやすくなります。
 動きにくいことが原因で、「エコノミークラス症候群」となって、病院に運ばれた人も相次いだといいます。

 東日本大震災の避難所では、「寒さ」も問題になりました。
 床に直接寝ると、下から冷気が伝わるためで、多くの人が体調を崩しました。

 これまで紹介した例は、多くの人が思い浮かべる避難所生活のイメージと同じかもしれません。
 しかし、その環境で、多くの「災害関連死」が出ていることを、専門家は問題視しているのです。

 避難所・避難生活学会は、「TKB」を導入している海外の事例として、日本と同様、繰り返し大地震に見舞われているイタリアの例を挙げています。

“TKBの国”イタリア

 3年前のイタリア中部の大地震では、避難した被災者のため、発生から48時間以内に、広くて掃除がしやすいコンテナ型のトイレが整備されたほか、家族ごとにテントとベッドが支給されました。

 避難所では、なんと、被災直後から温かいパスタも。
 イタリアならではの食事です。
 調理を担うボランティア団体が、「キッチンカー」と呼ばれる車を各地に準備し、調理師が調理するのです。

 なぜ、このようなことができるのか。
 イタリアの避難所の運営を繰り返し視察している、新潟大学特任教授で避難所・避難生活学会の榛沢和彦会長は、
「国の機関が各地に“TKB”を備蓄したうえで、ボランティア団体に指示を出し、費用を負担する仕組みが整えられているためだ」
といいます。

日本でも始まる「TKB」

 日本でも、「TKB」を導入する動きが、被災地の現場で始まっています。

 まず、「T=トイレ」。

T=トイレ.jpg

 これは、去年の北海道で震度7を観測した地震のとき、一部の避難所に導入された「コンテナトイレ」です。
 北海道のコンテナメーカーが開発しました。
 水洗トイレで、入り口は、スロープから上がれます。
 さらに、洋式トイレのため、高齢者もちゅうちょなく行くことができたと言います。

 次に、「K=キッチン」。

 岡山県倉敷市真備町のある避難所では、支援に入った看護師の山中弓子さんが、施設のキッチンを利用して、「温かい食事」の提供を始めました。
 市が用意する弁当のおかずなどのほかに、炊きたてのごはんや野菜の入ったおかずなど温かい食事を毎日提供するようにしました。
 毎日、パンとおにぎりの生活を送ってきた、森脇敏さん。
 地震から4ヶ月後、山中さんのいる避難所に移りました。
「温かい食事だけでも、精神的に楽になった」と振り返っています。
 また、民間の会社で、日本版のキッチンカーを開発しようという動きも進んでいます。

 そして、「B=ベッド」。

B=ベッド.jpg

 今、各地の避難所で導入されているのが、段ボールベッドです。
 去年の北海道の地震では、厚真町の避難所に、地震後3日で設置されました。
 日本赤十字北海道看護大学が備蓄していたため、迅速な導入につながりました。

 段ボールベッドは、床から舞うほこりを吸い込みにくいため衛生的な環境を保てるほか、床から伝わる冷たさを防いだり、いす代わりに腰掛けて使えたりする利点もあります。

 支援者たちの努力で、「TKB」は、一部の現場では導入が進んでいます。
 真備町の避難所の支援を行った看護師の山中さんのことばが、印象的でした。
 避難生活を送る人たちは、どうしても不満を言い出せなくて、我慢してしまう。『避難所だから我慢しなければならない』ではなく『避難所だからこそストレスの低い生活を送る』ために、工夫できることはたくさんあると思います
(看護師の山中弓子さん)

“TKBの導入は現場の努力頼み”

 一方、課題もあります。
 被災した自治体によって、導入に差があることです。

 制度として定着したものではないため、避難所の支援者が導入を提案したときに、自治体の担当者から「前例がない」と断られることも多いということです。

 支援者を中心に、劣悪な避難所の環境を改善しようという取り組みが進んでいますが、裏を返すと、現場の努力頼みになっているという実情があるのです。
 日本で、TKBの導入を進めるにはどうすればいいのか。
 避難所・避難生活学会の榛沢会長は、国と各機関が連携した体制作りの重要性を強調します。
 市町村に避難所の運営を委ねると、担当者にとって初めての経験となることが多い。対応が不十分となることがあり、それでは、同じような避難所がこれからも繰り返される。国が責任を持って、TKBを避難所の標準としていくような仕組みを作ることが必要だ。そのためには、専門性のあるボランティアなどと連携することも欠かせない
(避難所・避難生活学会 榛沢和彦会長)

「今までの当たり前」を変えよう

「もし、自分が避難生活を送ることになったら」という視点で考えてみてください。
 突然家に住めなくなり、数ヶ月にわたって暮らす場所に、命に関わるリスクがある。
 それを改善する方法も見えてきているのに、必ずしも取り入れられていない状況なのです。

 取材を通じて「今までの当たり前」を変えることが大事だと感じています。
 行政に加え、多くの人が、「TKB」の重要性を認識し、よりよい避難所作りにつなげていくことが必要だと思います。

NHK News Web、2019年6月17日 17時22分
命を守る「TKB」
避難所の“常識”が変わる?

(社会部記者 森野周)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190617/k10011955331000.html

 避難所でプライバシーを確保出来るとして評価の高いこちらのテント(ワンタッチ組立間仕切り、210px210p)だけど、サイズにもよるとはいえ値段は1張り2万円前後なんだよね。
 1張り2万円なら8億円もあれば4万張り買える。
 政府は吉本興業に100億円、桜を見る会に5700万円もの税金を使うぐらいならこれを買って災害に備えろよ。

20:33 - 2019年10月14日

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自然災害大国の避難が「体育館生活」であることへの違和感

 2018年7月5日から8日にかけて西日本各地が豪雨に襲われた。
 被害は甚大であり、避難指示と避難勧告は全国で約360万世帯・863万人に発令され、3,779ヵ所の避難所に約28,000人が避難をした(最大時の7月7日時点)。

 救助や避難対応にあたった方々の懸命の努力には頭が下がる。
 その一方で、体育館などへの避難を余儀なくされた人びとの生活環境は劣悪であり、個人の努力では解決が困難である。

 そこには、海外の避難所の実態とは大きなギャップがあることをご存知だろうか。

 災害多発列島・日本において、何が求められているのか、再考が必要である。

エアコン付き6人部屋、個別ベッドの避難所

 自然災害時の避難生活の場所としては、床に毛布を敷いて大勢がひしめきあう体育館が思い浮かぶ。
 エアコンや間仕切りはないことが多い。

 大規模災害のたびに報道される光景であるが、これを当然視してはいけない。
 海外の災害避難所と比べれば、日本の避難所の問題点が浮き彫りになる。

 日本と同じ地震国であるイタリアでは、国の官庁である「市民保護局」が避難所の設営や生活支援を主導する。

 2009年4月のイタリア中部ラクイラ地震では、約63,000人が家を失った。
 これに対し、初動48時間以内に6人用のテント約3000張(18,000人分)が設置され、最終的には同テント約6000張(36,000人分)が行きわたった。

 このテントは約10畳の広さで、電化されてエアコン付きである。
 各地にテント村が形成され、バス・トイレのコンテナも設置される。

 ただし、テントに避難したのは約28,000人であり、それより多い約34,000人がホテルでの避難を指示された。
 もちろん公費による宿泊である。

 さらに、備蓄を活かして次の物品が避難者のために用意された。

(※ 参考文献「防災のあり方についての一考察」中村功 / 松山大学論集第21巻4号)

・ 通常ベッド      44,800台
・ 折り畳みベッド 9,800台
・ シーツ、枕      55,000個
・ 毛布         107,200枚
・ 発電設備、発電機     154基
・ バス・トイレコンテナ   216棟
・ 野外キッチン       107基

 実際には、テントの空調の効き方やプライバシー保護などで不十分な点もあるという。

 しかし、自治体への任せ切りにせず、国家が備蓄をすることにより全国各地への迅速な対応を可能としている点は、大いに見習うべきと思われる。

 2016年にイタリアで起きた地震で設置された避難所の様子は、NHKニュースのサイトに掲載されている(ヤッホーくん注、次に投稿します!)。
 避難所に運び込まれた清潔なトイレ施設などが印象的である。

日本の避難所は「震災関連死」を生み出す

 イタリアの例と比較すると、日本での「体育館での避難生活」には次の問題点がある。

・ そもそも災害避難用や宿泊用の施設ではない
・ 1人あたりの面積が狭い
・ 大人数のため常に騒音や混雑感があり落ち着かない
・ 1人用のベッドや布団がない、または不足している
・ エアコンや入浴施設がない
・ 調理施設がなく、温かい料理が供給されない

 2016年の熊本地震では、地震の後で体調を崩すなどして死亡に至った「震災関連死」のうち45%にあたる95人が避難所生活や車中泊を経験していたという(NHK調べ・2018年5月1日現在)。

 劣悪な避難所生活が、避難者の健康状態を削っているのである。

 体育館の床の上だけでなく、学校の廊下で寝起きをした例もある。
 1人あたりの面積が1畳ほどしかない避難所もあり、「難民キャンプより劣悪」という声も出た。

 国際的な基準は、どうなっているだろうか。

 災害や紛争時の避難所について国際赤十字が提唱する最低基準(スフィア基準)は、次のように定めている。
The Sphere Handbook 2018
https://www.spherestandards.org/handbook-2018/

・ 世帯ごとに十分に覆いのある生活空間を確保する
・ 1人あたり3.5平方メートルの広さで、覆いのある空間を確保する
・ 最適な快適温度、換気と保護を提供する
・ トイレは20人に1つ以上。男女別で使えること

 これは貧困地域や紛争地域にも適用される最低基準である。
 経済力の豊かな日本で、この基準を遵守できないとは思われないが、実際には程遠い。

 災害対策予算を確保して、迅速な避難者支援をできるよう資材の備蓄を進めるべきである。

 避難規模が大きい場合には、公費で宿泊施設(ホテル、旅館、青少年の家、ユースホステル等)への避難を指示できる予算措置と制度化を検討するべきである。

災害援助を「権利」として捉え直す

 なぜ日本の避難所は劣悪な環境なのか。
 そこには、災害対策や復興支援についての日本と諸外国との考え方の違いが表れている。

 実は、前述の国際赤十字の基準(スフィア基準)は、単なる避難所施設の建築基準ではない。

 正式な題名は「人道憲章と人道対応に関する最低基準」であり、避難者はどう扱われるべきであるかを個人の尊厳と人権保障の観点から示している。

 日本語版で360ページ超の冊子は、冒頭に「人道憲章」を掲げており、次のように宣言している。

* 災害や紛争の避難者には尊厳ある生活を営む権利があり、援助を受ける権利がある。
* 避難者への支援については、第一にその国の国家に役割と責任がある。
(国際赤十字・スフィア基準「人道憲章」より)

 つまり、避難者は援助の対象者(客体)ではなく、援助を受ける権利者(主体)として扱われるべきであり、その尊厳が保障されなければならない。

 これは避難者支援の根本原則とされており、人道憲章に続く個別の基準にも貫かれている。

 たとえば、避難所の運営や援助の方法については、可能な限り避難者が決定プロセスに参加し、情報を知らされることが重要とされる。
 避難者の自己決定権が尊重され、その意向が反映されてこそ有益な支援が実現できるからである。

 避難者の意向が把握されず、供給する側と受け取る側とにギャップが生じた例は数多い。

 衛生状態の悪い中古の下着が善意で寄付されたり、逆に、生理用品が必要だという声が行政に反映されない事態も過去に起きた。
 こうした事態も、自己決定権の尊重と意向聴取によって解消しやすくなる。

 そしてまた、援助を受けることは避難者の「権利」であると位置付けることによって、それに応じることは国家の「義務」であると捉えることが可能になる。

 避難所を設置して心身の健康を確保することは、国家が履行するべき義務である。
 劣悪な避難所をあてがうことは義務の不履行として批判されなければならない。

 今の政府は、どう考えているだろうか。

 内閣府が2016年4月にまとめた「避難所運営ガイドライン http://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/1605hinanjo_guideline.pdf 」にも、この国際赤十字の基準への言及がみられる。
スフィアプロジェクト(参考)
 被災者にとって「正しい」支援とは被災者が安定した状況で、尊厳をもって生存し、回復するために、あるべき人道対応・実現すべき状況とはどのようなものか。
 この国際的なプロジェクトでは「人道憲章の枠組みに基づき、生命を守るための主要な分野における最低限満たされるべき基準」を「スフィア・ハンドブック」にまとめています。
 今後の我が 国の「避難所の質の向上」を考えるとき、参考にすべき国際基準となります。
http://www.janic.org/activ/earthquake/drr/sphere/

 しかし、「『避難所の質の向上』を考えるとき参考にすべき国際基準」と紹介しているだけであり、援助を求めることの権利性や国家の責任については触れていない。

 災害対策の基本法といえる「災害対策基本法」をみても、住民が「自ら災害に備えるための手段を講ずる」とか「自発的な防災活動に参加する」という自助努力を定める一方で、住民が援助を受ける権利を有するという規定は存在しない

 内閣府が作成した避難所パンフレットをみても、国民が権利を有するという視点はなく、むしろ国民は避難所でルールに従いなさいと言わんばかりの記載に驚く。

 このように、避難者は作業や役割分担には参加せよと指示されるが、権利者として意思決定プロセスへ参加することは書かれていない。

 プライバシーのための間仕切りも、国が責任をもって用意するのではなく、「あると便利です」と案内して自費で用意させようとしている。

 避難生活も生活再建も、あくまで「自己責任」が原則であるという政府の姿勢が見えてくる。

人への支援か、物への支援か

 避難者を含めたすべての個人が豊かな生活を送れるよう保障することこそ、国家の責務であり存在意義である。
 一人ひとりの暮らしを直接に支える分野にこそ、優先的に国家予算を投入するべきである。

 ところが、日本政府が用意する復興支援策は、別の方向を向いている。

 たとえば、東日本大震災の復興予算として2011〜2016年度に支出された31兆円のうち、被災者支援に充てられたのは僅か6.3%(約2兆円)である。

 これは医療・福祉・教育予算を含んでおり、これらを除いて被災者の手に届いた生活支援予算はおよそ3%(約1兆円)程度である。

 そのほかの復興予算は、災害復旧や廃棄物処理、復興公共事業、原子力被害の除染作業、産業振興などに支出された。
 海上自衛隊が弾薬輸送に用いる輸送機(150億円)にまで、「災害対処にも使えるから」と復興予算を流用している。

 このように、政府の復興予算は「人への支援」ではなく「物への支援」ばかりである。
 こうした国費の使い方に、被災者への姿勢がにじみ出る。

 今回の大阪北部地震や西日本豪雨でも、「体育館で身を寄せ合う避難生活」の光景は、当たり前のように、あるいは我慢と忍耐の姿として報じられた。
 しかし、そこには今の政治の問題点が映し出されている。

 この光景は、適切な援助を受ける権利を侵害されて尊厳を奪われた姿と捉えるべきである。
 この国の避難者支援の貧困が表れているのである。

 個人の努力でボランティア活動をすることは素晴らしい。
 それとともに、政府は被災者へ十分な支援をせよと声をあげて求めること、それを通じて政治に変化を及ぼすこともまた、私たちができる被災者支援として大切なことだと思う。

[写真]
東日本、熊本、大阪北部、そして西日本豪雨…多くの人が体育館での避難生活を経験している

現代ビジネス、2018.07.10
自然災害大国の避難が「体育館生活」であることへの大きな違和感
政府の考えは「自己責任」
避難者支援の貧困を考える

(弁護士・大前 治)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56477

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但し書き操作 and/or 緊急放流

 台風19号による大雨の影響で各地のダムでは貯水量が急激に増え、決壊で下流に深刻な被害が及ぶことを防ぐため、放流を検討。
 放流後は下流の水位が急上昇する恐れがあり、警戒を呼びかけた。

 神奈川県は、相模川上流の城山ダム(相模原市緑区)で、2019年10月12日午後9時半から緊急放流を始めた。
 県は「危険な状況になった」と判断した。

 国土交通省関東地方整備局は13日午前1時ごろにかけて、管内5つのダムで緊急放流を実施する可能性があると発表。

・ 荒川の二瀬ダム(埼玉県秩父市)、
・ 渡良瀬川の草木ダム(群馬県みどり市)、
・ いずれも鬼怒川にある川俣ダム(栃木県日光市)や川治ダム(同)、
・ 神流川(かんながわ)の下久保ダム(埼玉県神川町など)
で、緊急放流の約3時間前には放流時間を発表するとした。

 東京都は多摩川の上流にある小河内(おごうち)ダム(奥多摩町)で、放流量を当初の想定よりも増やして対応した。

 ダムの緊急放流をめぐっては、昨年の西日本豪雨の際、愛媛県のダムで緊急放流があった後、下流で河川氾濫(はんらん)が発生。
 浸水が広がり、9人が死亡している。


[写真]
関東の主な河川と緊急放流の可能性があるダム ☟

関東の主なダム.JPG

朝日新聞、2019年10月12日20時45分
各地ダムで放流検討
水位急上昇に要警戒、地図で確認を

https://www.asahi.com/articles/photo/AS20191012002708.html

命を守る行動を」という呼びかけは、東日本大震災後、正常性バイアスに対抗するために考え出されたフレーズの筈なんだけど、自己責任を求めてるように聞こえてしまうようになったというのは、この8年で社会の病み方が相当進んだ、ってことなんだろな。
7:13 - 2019年10月12日

「多摩川の河川水位が上昇する恐れがありますので、多摩川に近づかないようにしてください」と警告している。
 が、今、氾濫が発生している#世田谷区玉川 は緊急放流している #小河内ダム の下流。
 近づくなというよりも、住民に避難を呼びかけたのか?

 小河内ダム。
「当初、毎秒579立方メートル程度と見込んでおりましたが(略)10月12日(土)18時以降、毎秒729立方メートル程度となる見込み(略)発電放流と合わせて毎秒750立方メートル(略)…

7:17 - 2019年10月12日

「命を守る行動」をしたいのは山々だが、原発を止めず、戦争を準備し、福祉を切り捨てる政府が「命を粗末にする行動」をするので困惑している。
7:48 - 2019年10月12日

 ダムヲタクがいろいろ書き散らしているが、「但し書き操作」は、ダム治水の破綻で、下流の皆さん死んでも責任取りませんというもの。
 河川計画の破綻であって、完全に行政災害。
 ダムを造るのは構わないが、ダムに見合った下流の治水事業をしなければ、ダムは容易に殺人ダムに変わる。

10:36 - 2019年10月12日

 ねえ、ねえ、「但し書き操作」って「緊急放流」のことでしょ。
 ダムから放流したら、したら下流は氾濫するのを(もしかしたら下流の地域住民が死んじゃう)分かって行うことでしょ。
 無知蒙昧のヤッホーくん、死ぬまで馬齢を重ねていたいヤッホーくん、どうして上級国民はそうするの?教えてだってぇ。

 昨年2018年7月7日、愛媛県肱川(ひじかわ)水系では、野村ダムより下流約80キロメートル全流域で幹線道路路面から2〜5mの浸水の大洪水となり、数多くの集落が壊滅的打撃を受けました
 年が明けて2019年1月22日には、野村小学校体育館にて“「野村ダム・鹿野川ダムの操作に関わる情報提供等に関する検証等の場」とりまとめ等の説明会“が野村小学校で開催され、激しい市民の怒りの発露の場となり、予定の21時を大きく過ぎて22時台にまで時間が延びましたが、これによって国交省と愛媛県は逃げ切りを図っているようです。

 この連載で指摘しました様に肱川水系は、過去70年の治水事業が徹底したダム偏重であり、野村ダムから下流域80kmでは、無堤地区、暫定堤防、暫暫定堤防といった、事実上の無治水地区が流域の大部分を占めており、治水がなされていたのは、鹿野川ダム湖と大洲市西大洲のごく一部(数キロメートル程度)という一級河川とは考えられない極めて異常な河川事業の集大成であったといえます。

 行政が問題を「ダム操作」に限定して逃げ切りを図っていますが、これは、ダム管理事務所の職員を矢面に立たせて県と国交省は逃げを図る工作に過ぎません。

必要な説明から逃げ、安全性だけ流布した結果の産物

 ダムは、治水、利水などの用途、重力式、アーチ式、アースダムなどの形式を問わず、一部の流水ダム(穴あきダム)や砂防ダムを除き、堤体を越水すればダムは制御機能が失われるだけでなくダム崩壊を極めて高い確率で起こします。
 全面ダム崩壊を起こせばダム津波によって下流域は壊滅しますし、部分崩壊でも鉄砲水で下流域には甚大な打撃をもたらしますので、洪水がダムの限界を超える場合には、ダムは「但し書き操作」(異常洪水時防災操作のこと。特例操作や緊急放流とも呼ばれる)を行ない、そこにダムが存在しないのと等価の洪水を一挙に引き起こします。
 とくに肱川水系のようなタンデム配置のダムの場合、上流側のダムが崩壊すれば下流側のダムも連鎖崩壊してカスケードダム津波を起こしますので、ダム操作者は、有無を言わさず但し書き操作を行わねばなりません。
 下流域の避難を考慮するにしてもその時間調整は、精々十数分程度でしょう。

 これは、玄倉川水難事件や、飛騨川バス転落事故でも見られたことで、限界を超えたダムは、人為的に但し書き操作を遅らせることはほぼ不可能です。
 BWR(沸騰水型原子炉)と全く同じく、ダムにはこの点での受動安全性が欠けており、原子炉は破裂する前にベントによって内圧を下げますし、ダムは限界に達すれば但し書き操作によって一挙に流下流量をダムがない状態と同じにします。

 原子炉では、シビアアクシデントの制圧に失敗した場合、市民が逃げようと逃げざろうと、限界に達すればベントをして、放射能入りの蒸気を外界へ大量に放出せねば原子炉が破裂して破滅的な放射能漏洩を起こします。
 後者が福島第一2号炉で起きたことです。
 不幸中の幸いにも、合衆国の設計が優秀だったためにチェルノブイル核災害ほどには至りませんでしたが、福島核災害を世界最悪級の核災害にしたといえます。

 ダムの場合は、市民が逃げようと逃げざろうと、限界を超える前に「但し書き操作」に入り、調節機能を放棄しますが、それによって生ずる洪水は、ダム崩壊によるダム津波を下回ります。
 肱川水系では、これが生じた訳です。

 ダム防災と原子力防災は、その構造が極めて酷似していますので、対比して考えると双方の理解が進みます。

 ダムが限界を超え、ダム崩壊を起こさぬようダムを守ることが下流域の市民の命を守ることであって、それが、「但し書き操作」を行う倫理的基盤となっています。

 これが、ダムを守る=下流域の市民を守る=但し書き操作は市民を守るために行ったという論理です。

 このような説明が事前になされていれば、自治体や市民は長い年数をかけて対応することも出来ましょうが、日常的にダムがあれば安全安心という作為的なPA活動=ヒノマルダムPA(*)が行われた結果、自治体、市民ともにダム安全神話に幻惑され、ダム下流で洪水が起きるなど夢想だにしていなかった事実があります。
(*)PA=Public Acceptance=パブリックアクセプタンス:社会的受容
 原子力発電所、ダム、高速道路や、新ワクチンなどその事業が社会(多くは地域社会)に大きな影響を与える場合、事前に社会的合意を得ること。
 民主社会において重要な手続きである。
 しかし日本においては、PAと称して、詭弁、ごまかし、嘘、便宜供与、恫喝など、「嘘と札束と棍棒」によって市民を分断し、服従させる手法がまかり通っている。
 これは本来のPAを換骨奪胎した日本独自の異常なものである。
 筆者はこれらを(親方)ヒノマルPAとして本来のPAと区別している

 このダム安全神話を流布し、ヒノマルダムPAによって市民、流域自治体を欺してきた責任は100%、河川管理者と治水事業管掌者すなわち愛媛県と国土交通省にあります。
 また、ヒノマルダムPAに長年加担してきた学識者=田舎御用名士にも最大級の重責があります。

「野村ダム・鹿野川ダムの操作に関わる情報提供等に関する検証等の場」においても、”住民が高い自覚(意識?)を持って避難しなければならない”という意味合いの暴言が飛び出し、住民の怒りの火に油を注ぐことになりました。
 検証会では「情報の受け手、住民が、情報を生かせていない」(*)として、被害を住民と流域自治体に責任転嫁するものとなっています。
(*)野村ダム・鹿野川ダムの操作に関わる情報提供等に関する検証等の場(とりまとめ)抜粋(他多数資料に同じ表現がある)

 現場を矢面に立たせて裏で住民に責任転嫁、分断する手法は、福島核災害において大規模に行われている手法であって、ヒノマルPAの濫用とともに常套手段と言って良いでしょう。
。。。


ハーバー・ビジネス・オンライン、2019.04.05
ダム偏重政策が招いた「肱川大水害」
今こそダム建設継続より肱川の河道改修に全力を投じよ

(牧田寛)
https://hbol.jp/189521

 西日本を襲った歴史的な豪雨災害。
 2018年6月28日から7月8日にかけて西日本を中心に北海道や中部地方を含む全国的に広い範囲で記録された台風7号および梅雨前線等の影響による集中豪雨
 今回、被害が大きくなった大きな要因に「代々の自民党政権による人災がある」と一刀両断にするのは、河川政策の専門家で日本初の流域治水条例をつくった嘉田由紀子・前滋賀県知事
 倉敷市真備地区が堤防決壊で水没、死者50人の被害を出した原因についてこう話す。

「水没した真備地区はもともと、ハザードマップ(被害予測地図)で2〜5mの浸水が予想された危険区域でした。『これだけ危ないですよ』という具合に、浸水リスクを住民に十分に知らせ、避難を促すワークショップを開催するなど、避難行動を“自分ごと化”することができていなかったのでは。また、行政として最も防がないといけない堤防決壊への対策、堤防補強も不十分だったのではないでしょうか」

 ハザードマップが物語る浸水リスクを受け止めて対策を打たないといけなかったのだが、それが不十分であったというわけだ。
 諸悪の根源は、
「ダム建設を最優先にして堤防補強を後回しにしてきた、歴代自民党政権の河川政策にある」
と嘉田氏は指摘する。

「滋賀県知事になる頃から『矢板やコンクリートで周りを囲む、アーマーレビー工法で鎧型堤防にして補強すべき』と国に提案してきたのですが、歴代の自民党政権は『鎧型堤防は当てにならない。堤防補強よりもダム建設だ』と言ってきたのです。
 この河川政策が、今回の豪雨災害でも大きな被害をもたらしました。倉敷市真備地区では高梁川の支流の小田川などで堤防が決壊しています。本来は、この地区の堤防補強が最優先課題だったのです」

。。。

――なぜ歴代自民党政権は優先順位逆転の河川政策を止めず、堤防補強を後回しにしてきたのですか。

嘉田氏: ダム建設をめぐる政官業のトライアングル、自民党国会議員と国交官僚とゼネコンの癒着の産物です。
 ダム建設で儲かるゼネコン、献金を受ける自民党、そして巨額の予算を確保できる国交官僚の利害が一致、優先順位が逆転した河川政策が未だに続いているのです。
「ダムさえできれば、住民は枕を高くして寝ていれる」という“ダム安全神話”を国交省はばらまいてきたのです。
 その結果、限られた河川予算が有効に使われず、浸水危険区域の堤防補強が後回しになってしまった。
 今こそ、治水効果が限定的な不要不急のダム建設を凍結、緊急に進めるべき堤防補強予算を増やすべきです」

 ちなみに国交省の緊急点検で強化が必要と判定された約2200kmのうち、現段階で工事が終了したのは半分にも満たない。

 石井国交大臣こそ、堤防決壊で多数の死者を出した倉敷市真備地区の豪雨災害を直視、公明党が連立を組む歴代自民党政権が続けて来た河川政策を反省・謝罪した上で、方針転換をする責務があるはずだ。
 しかし実際には、国民の生命財産が脅かされている現状から目を背け、米国益実現となるカジノ実施法案の審議に6時間も張りついていたのだ。

 3年前にも同じ水害が起きていた。
 2015年9月10日に堤防が決壊、2人が死亡、30人が重軽傷を負った鬼怒川水害のことだ。
「10年に1回程度の大雨に耐えられない」と判断され、堤防強化が予定されていたものの、その工事を終える前に破堤してしまったのだ。

 代替策がなかったわけではない。
 堤防を安価で強化する方法はいくつかあるからだ。
 堤防の真ん中に「ソイルセメント(土とセメントが混じったもの)」を入れる工法や、真ん中に鋼矢板を入れる工法もある。
 そうすると、1m当たり50万〜100万円でできる。

 こうした方法を導入すれば、危ない堤防を安価で早く強化することができた。
 国民の生命財産を守ることからすれば、国交省は安価で迅速な堤防強化策を認めるべきなのに、その姿勢を改めようとしなかったのだ。

『ダムが国を滅ぼす』の著者で河川工学の専門家、今本博健・京都大学名誉教授もこう話す。

「ダム建設よりも堤防強化の方が重要であることを実証したのが鬼怒川の水害でした。早急にやるべき堤防強化の優先順位を低くして、ダムやスーパー堤防を優先したということです。国交省の弛みとしか言いようがない。長期間にわたって国交省の河川官僚が予算獲得できる巨大事業にこだわったためといえます」

 今本氏は、京都大学の土木の後輩である太田昭宏国交大臣(当時)にも助言しようとしたことがあった。

ダム偏重の河川行政に対する問題意識もなかった。太田大臣に『河川行政を改めてほしい』と思い、支持団体幹部を通じて面談を申し込んだが、拒否されました
(今本氏)

 2012年12月に第2次安倍政権が発足して以来、国交大臣は2代連続で公明党が独占している。
 初代が今本氏との面談を拒否した太田大臣(2012年12月〜2015年10月)、2代目がカジノ実施法案も担当する石井大臣(2015年10月〜現在)である。
 歴代自民党政権の河川政策を主に引き継いでいるのが公明党の大臣であり、国民の生命と財産をおろそかにいている現況を作っているといえる。


ハーバー・ビジネス・オンライン、2018.07.17
「西日本の豪雨災害は、代々の自民党政権による人災」
河川政策の専門家、嘉田由紀子・前滋賀県知事が指摘

(横田一)
https://hbol.jp/189521

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